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第28話 教皇すきすきハーレキン

更新せず申し訳ありません



 建物の影でソレガシの旦那と二人、気配を消してフュラテアたちの背中を眺める。


「どうする? 後をつけるか?」


「んー……ああいう人間がいるとなると急にシソーヌ姫たちの方も心配になるな……二手に分かれようか」


「一人で問題ないか?」


 旦那は心配性だね。

 俺は親指を立てて胸を叩く。


「スーパーヒーロー、だぜ?」


「であったな」


 立派な鎧の肩をすくませて、旦那の気配がゆるんだ。


「某はマキマキ殿とシソーヌ姫らを守る。ビーババダ殿たちは任せたぞ?」


「了解」


 旦那と別れ、物陰に隠れながら亜人たちの列を追う。


 気配を消すって言ったけど、旦那と違って俺はそういうのの専門家じゃねえからさ、アスガイアーのチカラを使って上手いこと工夫してるだけ。

 具体的にはガイアコアのエネルギーを全部自然しぜんエネルギーに変換して、大気中の気配と同一化させるんだ。

 これで気配は誤魔化せたけど、戦闘バトルモードにスッと変身できなくなった。

 しかも姿を消せたわけじゃないからね、目で見られりゃあすぐバレる。


 俺は苦手なりに尾行を続け、亜人の集団が都市の中央から少し外れた壁の向こうへ入っていくのを見届けた。

 あの辺に宿舎があんのかな?

 壁で覆われてる場所……城壁が無いこの都市にしちゃあ珍しい区画だ。

 

 門の前には神官服を着た女性が二人。

 入り口は一つか……壁を跳びこえて忍び込むか?

 いやいや、どんな仕掛けがあるか分かんねえし、聖王国のふんどし履いてお邪魔してんだ。バレたら聖王国のみんなに迷惑がかかる。

 そういうのは最後の手段だな。

 先ずは普通に入れてもらえないか試してみよう。


「すいませーん」


 見張りの二人が近づく俺をにこやかに迎えてくれる。


「はい。どうされましたか?」


「あの、原種主義連盟の人らがここを通って行ったと思うんスけど」


「そうですね」


 笑顔を崩さず、淡々と言葉を返す女性たち。


「ちょっと伝え忘れた事があって、合流したいんスけど俺も通してもらっていいですかね?」


 でまかせを言う俺に女性たちが顔を見合わせると、困ったように微笑んだ。


「申し訳ございません。ここより先は一定の位階の教徒のみが政務を行う場所ですので、関係者以外の立ち入りはご遠慮いただいております。伝言でしたら私どもが請け負いますが?」


 それは困る。

 伝言なんか無ぇもん。


「いいッスいいッス! 大した事じゃないッスから! お邪魔しましたー」


 万策尽きた。

 こうなりゃ最後の手段に出るのみ。


「どうしましたのです?」

 

 俺が諦めて人目のつかない場所へ移ろうときびす・・・を返すと、後ろから聞いた事のある声がした。

 振りむくと、翠髪の短髪をたずさえた健康的な女性がいた。

 つーかハーレキンさんがいた。


「あれぇ! ハーレキンさんじゃないッスか!」


 女性たちの向こう、門の後ろ。

 ハーレキンさんがたまたま通りかかったみたいな顔して立っている。


「あら、アスガイアー様。どうしたのです?」


 思わず近寄る俺を、門の前で女性二人がさえぎってきた。

 片方の人がハーレキンさんを振り返って口を開く。


「うすう――」


 ハーレキンさんが片手を上げてその言葉をさえぎる。


「良いのです。この方は聖天使を守護する役目を負った異界の戦士、救世戦士と呼ばれる尊き方なのです。何人なんぴとも受け入れるという教義の元、お通ししましょう」


 言われて女性二人は、頭を下げつつ道を開けてくれた。

 駆け寄る俺。


「こんなトコで会えるとは思わなかったッスよ」


「ふふ、私もです。神のお導きでしょうか」


「視察は終わったんスか?」


「はい、問題点の多くは把握できたかと思います。これから対策案を練って七国会議への提言書を作成する予定です」


「ええ? 会議って明日ッスよね? 間に合うんスか?」


「また手伝ってくださいますか? ふふ」


 雑談をかましながら門の先へ進む。

 知り合いと会えたのはラッキーだったな。

 ハーレキンさんにオウゴン教徒のひとりが原種主義連盟に殺意を向けた事を言おうか?

 いやいや、あのオウゴン教徒が個人的に恨みがあっただけかもしれない。

 大事おおごとにする方がよくないな。

 穏便にいこう。


「俺に出来る事なら手伝いますよ? ところで原種主義連盟の連中がお邪魔してると思うんスけど」


「ああ、話は聞いております。罪深い所業を行ったと噂が回っておりますので、罪を浄化するための洗礼を受けていただくために奥の院で儀式を行うそうですね」


「悪い噂がもう広まってんスか?」


「許されたとも聞いておりますし、儀式は頭の固い教徒を納得させるための形式的なものですよ。見学していかれます?」


 おお、願ったりだな。


「いいんスか? ぜひぜひ」


 その場に居れさえすれば原種主義連盟に恨みを持つ連中が魔が差しても止められる。

 フュラテアたちになんかあっても気分悪いし、七国会議を成功させて大魔王とやらを迎え討つためにも、内輪で争ってる場合じゃねえからな。


 そのままハーレキンさんに案内されて、いくつか並んだ神殿の一つへお邪魔する。

 

「こちらの、最古の神殿に亜人の方々はいらっしゃいます」


「へぇ。最古って事は相当歴史のある場所なんスね」


「本当に最古かどうか実際のところはわかりませんが、そう呼ばれております。《創世神》と呼ばれる、《世界の救世主》をこの大陸へ導いたという最高神の御力が込められている神殿ですので、あながち間違いではないかと思いますが」


「へぇ~……」


 通された神殿のエントランスはシンプルで、言われて見れば他所で見た神殿とは雰囲気がまるで違う。

 派手さで権威を主張するんで無く、なんか実務的な施設って感じだ。


「静かッスね」


 エントランスを進み、シンと静まり返った周りを見渡す。

 俺のブーツのギュッギュッって音と、ハーレキンさんの靴のコツコツとした音だけが高い天井に吸い込まれていく。

 

「もう洗礼の儀式は始まっているのかもしれませんね」


「えぇ? 入って大丈夫ッスか?」


「問題ありません。さぁ、先へどうぞです」


「そッスか? じゃあ失礼して」


 エントランスを抜け、ロッカールームみたいな場所を通り、扉を開けた。

 開けて見えた景色におどろいた。


「……なんだこれ?」


 軽い気持ちで開けた扉の先は、たくさんの亜人族たちが突っ伏して苦しむ阿鼻叫喚の景色だった。

 俺は振り向いて後ろにいるハーレキンさんを見る。


「洗礼って、結構キツそうな感じなんスね……」


 ハーレキンさんは不敵に笑い、閉まる扉の向こうへ消えた。

 バタンと両扉が閉まる音が響き、大勢の呻き声が部屋に充満する。

 なんだ? 

 どうなってんだ?

 戸惑ってると、身体中からガイアエネルギーが抜けていってるのに気がついた。

 すげえ勢いで。

 今はエネルギー総量が十分だから大した影響はないけど、もしかしてこれが目的だったのか?

 

 ……原種主義連盟への恨みを持つヤツは一人じゃなかったって事か。

 組織だって、この機会に原種主義連盟を始末しようって連中が行動を起こしたってところだな……。

 問題は、はぁ……ハーレキンさんもその連中の一味だったって事か。

 多分俺の仮面の下がハイエナ男だって知って、亜人族か魔物のなんかかって事でついでに始末しようって感じか?

 もぉ、へこむわぁ。


「…………切り替えよ」


 敵なら排除する。

 とりあえず動かなくなってきた亜人族たちに歩み寄ってみた。

 あ、フュラテア見っけ。


「おい、生きてるか?」


「あ、ゲホっ……」


 フュラテアの肩を触ると、虚ろな目でどっか見たまま血を吐いた。

 こりゃダメだ、一刻を争う。


 ガイアセンサーにはマイナスなエネルギーが部屋中に感知されている。

 これで部屋にいる俺たちの生体エネルギーを吸い取ってんだな。

 この部屋に長くいると俺も影響受けて、憤怒フューリアスフォームに成りかねない。


 部屋の壁をぶっこわして負のエネルギーを散らすか。


「アスガイアァ……」


 溜めたガイアエネルギーが弾けた。

 あぁ……魔素妨害ってヤツか。

 じゃあ物理で殴って壁を壊そうかな。

 って考えてると、魔素に乗せた声が部屋中に響いた。

 

『右枢機卿! なぜアスガイアーがこの場におるのでする!?』


 おや? この声は……。


『卑民共の魔素では足りないでしょう? 単独のアスガイアーと居合わせたのはまさに、神のお導きです』


『不確定要素は可能な限り排除する! 当然でする! アナタの主である《伯爵》は何をアナタへ伝えておるのか!!』


『契約は教皇猊下の魂の回帰、その最短への道を追求するのみです』


『ええい! 融通の利かん狂信者めが!』


 テイアンペイだよな?

 テイアンペイとハーレキンが口論してる。

 なんだコレ?


「おぉい、喧嘩してんのかぁ?」


『何を恐れているのです? 私は先の接触にてアスガイアーのチカラを把握しました。絶大なる魔素を持とうとも所詮は魔術師、この最古の神殿が有する《魔素吸引》の御力ならば無力化は可能でしょう』


『アスガイアーのチカラは未知数であると共有したであろうがぁ!! 目で見たモノだけで判断するでないわぁ!!』


 オイオイ、無視すんなよな。


『原種至上主義連盟の代表は私です。アナタはあくまで顧問という相談役でしかない事をお忘れですか?』


『右枢機卿という立場で身動きできない身を補佐し続けたのはワタクシでするぞ!』


『身動きは可能な限りしてきましたが? 補佐の目をごまかしつつ、最低限はこなしたてきたと自負しますけども』

 

 ははぁん、流石に理解したぜ。

 

 ハーレキンはオウゴン教の右枢機卿で、原種主義連盟のボスも兼任してた。

 そんでハクシャクとかいうヤツの指揮下にあったはずなのに、暴走気味に動いてるって事か。

 それがテイアンペイにとって気に入らない。


 ハーレキンは何かをカイキ? させる為に、原種主義の連中と同じように俺の魔素を奪おうって魂胆なのね。


 ハイハイ……、

 要するに、通常フォームしか見せてない俺の事を舐めてる・・・・ってことか。


「おいフュラテア」


 俺はヒザをついてフュラテアに再び呼びかける。


「……あ、あ……」


「言え。『助けて』って言え」


「あ……あ」


「言えよ。『助けてくれって』」

 

「た、た……」


「ほら」


「た、た、すけ……て」


「よし」


 腰のガイアコアが光った。


「変身」





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― 新着の感想 ―
[一言] 意外な人物が敵方でしたね。 それと変身シーンはやっぱり良いですね。 次回が早くも楽しみです。
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