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第25話 大皇の誤認識 護衛騎士アルマの悩み

投稿が遅れて申し訳ありません



「見えてきた! 見えてきたよカブラギ! マキマキ! ほら! ほらってば!」


 ユウゲンさんのトランプ手品に集中してる俺たちに、窓際のシソーヌ姫が呼びかけてくる。


「んん? なに? 着いたのか?」


 マフラーをグイグイしてくるシソーヌ姫にうながされ、荷車の窓へ顔をよせる。

  

「おお!」


 地平線から生えてくるように、立ち並ぶ高層建築が伸び上がってきた。

 眺めてるうちに目的地の全貌が明らかになる。

 キラキラの都市には俺たちが進んでいる街道が蛇行してのびるだけで、周辺に道は無い。

 城壁は無く、街の外は刈り取られた芝生が広がっている。

 荘厳な都市と相反して、周囲の景色は至ってシンプルだ。


 そんで、それが逆に街の存在感を増していた。

 

 近づくにつれ、都市の大きさが実感できてくる。

 横幅広く、果てまで続くような似たようなデザインの建物。

 都市と芝生の境目に、等間隔で並ぶ監視塔。

 五階建てくらいの建物が多く見え、街の中心に向かうほど見上げるような建物が集中している。

 まさに神聖都市の名に恥じない、金色と銀色と緑色が多めの大都市だった。


 俺とマキマキ、シソーヌ姫が窓から顔を出して眺めてると、都市のど真ん中にでっかい金色の石柱が伸び上がってるのが気になった。


「あのでっかい金色の柱はなんだ?」


 カタチは聖王国の大聖堂にあった石柱に似てるけど、アレは金色じゃなかったよな?


「聖王国の大聖堂にも似たようなのがありましたよね?」


 マキマキも俺と同じ感想を抱いたらしい。


「あの見えてるのが最初の《聖柱》らしいよ。他のは全部複製なんだってさ」


「へえ、アレがオリジナルってか」


「複製っていってもね、ずっと昔にホワイトドワーフの名工が作ったそうだから、ウチにあるヤツも凄いんだよ?」


 シソーヌ姫の説明にアグーが口を挟む。


「千年ほど前の、名も伝えられておらん名工らしいの。確か西部・東部の大転移陣が移設された神殿、当時それの製作を主導したのもそのホワイトドワーフだとか」


「そうそう。アグーは教えがいが無いねぇ」


 わしゃわしゃ撫でられるアグー。

 俺は見上げる金色の石柱に、言い難い感覚を感じていた。







 馬車を降りて、都市の車両担当者へ管理を任せる。

 ずっと馬の手綱を握っていたアルマが大きく伸びをして、ソウリマンさんがアルマの背中に回復魔法? 法術か、法術を唱えた。


「ぁあ、楽になりました。感謝いたしますソウリマン殿」


「いえいえ、オリアノ殿もお疲れ様でありました」


 アルマとソウリマンさんはここんところ、シソーヌ姫の補佐仲間って感じだったからな。

 だいぶ気安いみたいだ。

 って思ってると、ソウリマンさんの服からリンリンちゃんがピョンと飛び出す。


「わ! ミュルマーナに着いたね! アレだね! お胸の中がふぅうん……ってなるね! なんだっけコレ!?」


「《懐かしさ》だ。起きた途端に騒がしい……」


「ひっさしぶりだよぉ! あのボロい石屋のジジイ元気かなぁ!?」


「もう天に還っておりますわい、ヒェッヒェッ」


 あ、ムル婆さんだ。

 こっちに歩いてくる。


「え!? ジジイ死んだの!?」


「最後に会ったのが213年前ですぞ?」


「そっかー、じゃあ司祭長やってたあのババアは?」


「ステインホルム殿も、184年前に天寿を全うされておりましたな」


「なーんだ、つまんね」


 溜息を吐くリンリンちゃん。


「やぁや、ムルのお婆ちゃん」


 肩を落とすリンリンちゃんの頭を撫でて、ムル婆さんにご挨拶。


「アスガイアー様、リンリン大司教がご面倒をおかけしておりますの」


「水臭せぇよ。カブラギでいいってお婆ちゃん」


「ヒェッヒェッ、そうかい? 飴ちゃんいるかえ?」


 飴あんの!?


「いるいる! マキマキも貰っとけ貰っとけ!」


「あ、えと、じゃあ、アタシも」


「ヒェッヒェッ……天使などと呼ばれて、窮屈でしょうなカイザキ様」


「え? あ、そうですね、はい」


「間もなくですからの……ヒェッヒェッ」


「? あ、はい」


 マキマキにだけ飴を剝き出しで手渡して、そんまま去っていくムル婆さん。

 リンリンちゃんの迎えにきたんじゃねえのかな?


「あれ? お婆ちゃん、もういいのかぁ?」


 俺が呼びかけると、後ろ手に手を振って行っちゃうムル婆さん。

 マキマキの手の平から飴を一つ貰い、仮面の口から放り込む俺。


「行っちゃったな、マキマキ」


「はい。間もなくって言ってましたけど、どういう意味ですかね?」


「さぁ? でもご年配の言動にゃ繊細な対応をした方がいいからな。気にしない方がいいかも」


「センシティブな問題ぢゃからな」


 センシティブってなんだ?


「そうだな、その通りだ」

 

 俺がキリッと答えると、マキマキが肩をすくめて言う。


「カブラギさん、センシティブの意味分かってないでしょ?」


「そうだな、その通りだ」


「もぉ、適当に返事するの良くないですよ?」


「それは激反省」


 俺たちが会話に華を咲かせてると、大皇国の大皇ちゃんが手下を引きつれて近寄ってくる。


「あ、ども」


 俺がペコリといち早く頭を下げると、マキマキとユウゲンさんが続いて頭を下げて、アグーを抱えたシソーヌ姫が前に出た。

 姫の両脇にアルマとソウリマンさんも並ぶ。

 大皇ちゃん陣営は立ち止まると、大皇ちゃん本人は胸を張って言った。

 

「大聖王国が姫よ、予定をそれほど違えず到着したのは其方の功績が大きい。その仔細は其方の父君へ余からも伝えようぞ」

 

「それは大変光栄に存じます」


 シソーヌ姫が胸に拳をあてる。


「七大国でも対等に言葉を交わせるのは大聖王殿くらいであるからな、其方の父君と相まみえる事、心待ちにしておるぞ」


「父王にもその玉言、伝えおきます」


「うむ……ああ、その方ら」


 大皇ちゃんが俺とマキマキの方を見る。


「うっす」


「あ、ど、どうも」


「天使とやらよ、なんじの働きは多くの影響を場に与えた。余もその功績を無視するほど愚かではない。そして、アスガイアーとやらよ」


 呼ばれた。


「ども、アスガイアーです」


「貴様もろくな攻撃手段を持たぬ身ながらも、よく天使の功績を支えた。精査の困難な業績であったが、余は見逃さぬぞ? 流石は師父が余の為に届けた身よ。貴様の働きもしかりと大聖王殿にも伝えおくゆえ、心中穏やかでおるがいい」


 あ、はぁ……。

 そっか、大皇ちゃんの前で攻撃系の技出してねえからガードだけマンだと思われてんのか。

 別にいいけど。


「光栄ッス」


 空気読めるマンの俺、有難いお言葉に頭下げるの巻。

 そういやぁ俺、最近マキマキにおんぶに抱っこだしな。


「うむ! 精進せよ!」


 ぅわ! 可愛い!!

 お子ちゃまが満面に笑って、手下を引きつれながら満足そうに去っていった。

 あ~癒された~。


「可愛いねあのコ」


 俺がコソっと言うと、アルマが反応する。


「ええ。なんとか泣きわめく様を見れないものでしょうか」


「アルマ?」


「『ごめんなさいお姉ちゃん!』と、あの声で聞けないものでしょうか」


「アルマ?」


「では宿舎の手配をしてまいります。ユウゲンさま、補佐をお願い致します」


「あ、はい」


「アルマさーん?」


 無視された。

 去っていくアルマとユウゲンさんを見送って、残されたシソーヌ姫とソウリマンさん、マキマキにアグーと、リンリンちゃんへ向き直る。


「アルマって護衛なのに、姫と離れちゃっていいのか?」


 俺が聞くと、シソーヌ姫が頭を掻いて言う。


「最近自信無くしちゃってるみたいでさ。ほら、こないだアルマが近くにいるのに、私の腕が飛ばされちゃった事あったじゃない?」


 あったあった。

 アッキンド大商国で敵のゴブリンが襲ってきた時な。

 ちょービビった。


「あの時だけじゃなくってさ、他の時も、私が危ない時はカブラギとかマキマキとか、ソレガシがなんとかしちゃうからね。他のところで役に立とうとしてるみたいなの」


「そんな事思ってんのか? 揉め事の時、アルマいるとすっげぇ助かってんだけどな」


 アルマだって十分強いし、アルマがいるから姫から離れて行動できるんだけどな。


「今度それ言ってあげて? カブラギから言われたら嬉しいと思うから」


 んふーっと鼻から息を吐いて、シソーヌ姫が俺を見上げた。


「こっちは大丈夫だからさ、カブラギはソレガシの方に行ってお仕事手伝ってあげてよ。早くこっちと合流させてあげよう?」


 ああ、旦那は過激派たちの監視に駆り出されてんのよね。

 オウゴン教の人たちに引継ぎすませないと合流できないか。


「いいけど、神霊薬は大丈夫なのか? 間に合う?」


 早く聖王様に使ってあげないと七国会談が始まっちまう。

 まだカツゲンさんから貰ってないっしょ?


「うん。出来てるのは出来てるだろうから。でも大皇陛下の目の前で貰うわけにいかないもんね。お気に入りの配下が他国の要人に贈り物もらうのってあんまりいい気がしないだろうし、見返りの話を国同士でされても困るから。とはいっても折を見て渡すって言われてるから大丈夫だよ」


 そっかそっか。


「じゃあ顔出してくる。アグー、ソウリマンさん。チビッ子たちの事たのんだぜ」


「承知いたしました」


「任せておけ」


「チビッ子ってアタシも入ってます?」


「入ってるー」って答えながら、ソレガシの旦那が乗ってるはずの大皇国製の魔導車へ走った。


 

話しが込み入ってややこしくなってしまったので、少しでも分かりやすくなるよう再構成して書き直してます。結構な文字数です。

告知なくお休みして申し訳ありません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アルマは自由でいいなぁと思っていましたが、アルマはアルマで悩んでることはあるんですね。 まぁ、周りにいるのが各物語の主役の方々ですもんね。 致し方なし。 [一言] 更新ありがとうございます…
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