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第12話 打倒魔王への決意!!


 話をしたい。


 そう言われ、改めて王様を見据える。

 玉座に座るその姿は、戦場で見た銀色の全身鎧に金の王冠。

 赤いマントを着けていた。

 王者の風格とでも言うんだろうか? 

 威圧感を感じた。


「この国の苦難は一旦退かれた、ただこれは一時の事に過ぎぬ。聞いておるだろうが、地上は魔界からの軍勢により崩壊の危機にひんしておる。我が国も勇者である王太子を含めた4名の英傑を送り出しておるが連絡も途絶え、状況は楽観視できるものではない」


 王様が立ち上がり、玉座の後ろにあるバルコニーへ俺たちに背を向けて歩く。

 マルク将軍がそれに続き、サイロスさんが王様の近くに転移する。


「皆さまこちらに」


 サイロスさんが促し、俺たち5人もバルコニーに出て王様たちの後ろに立つと、城下が一様に見渡せた。

 でかい街並みにポツンと見える中央の広場には、まだ多くの人たちが残っている。

 高い城壁の外側は平野が広がり、曇天が見渡す限り続いている。

 王様が街並みを眺めたまま、口を開く。


「この空は魔王が地上に現出してより曇り続けておる。その影響か、魔導具による各国の通信も使えぬ。使者による伝聞でしか情報を取り交わす事ができぬのだ。他の七大国であるシュウ大帝国に隣接する、アッキンド大商国、ザバナン大連邦国からの連絡も途絶えて久しい。我らがアークガド聖王国も其方らがいなければ落ちていたやもしれぬ……」


 王様が俺たちに向き直る。風でマントがバタバタと踊る。

 俺の首で、マフラーも同じくはためく。


「この世界は切迫しておる」


 マキマキのスカーフが風でなびく。

 アグーの体毛がピラピラしている。


「異界人の方々!」


 王様が声を上げる。

 その目は気高く、そして強い。

 俺のグローブがぎゅっと鳴る。


「国王としてではない! この国、この地上に住まう者のひとり! 唯ひとりの者としてお願い申し上げる! どうか! どうか今一度おチカラを!!」


 そこまで言って王様は。


「お貸しくだされ……」


 頭を下げた。


 マキマキが両手で口を覆っている。


「なんと……」


 アグーが驚愕の声を上げる。


「お父様!!」


「陛下!!」


 シソーヌ姫が、アルマが王様に駆け寄る。


「もちろんアナタ方が元の世界へ戻れるよう、全力を尽くします。我々からもどうか……」


 サイロスさんとマルク将軍も、同時に頭を下げた。


 王様が。

 しかも大陸七国なんてたいそうな国の、18世なんて長く続いた由緒正しい国の王様が、決して軽くはないだろう頭を下げた。


 それだけの覚悟をもった交渉なんだろう。

 多分召喚されて即、手助けしてくるようなお人好しな俺たちだ。

 打算よりも情に、心に訴えた方が良いと判断したんだな。



 正解だよ畜生。



 まあ元々そのつもりだったんだ。

 アニキだったら間違いなく受けてたしな。


「俺たちの国に、《立つ鳥跡を濁さず》って言葉があるんです」


 俺がそういって前に出ると、マキマキは笑って、アグーは大きく息を吐いて続く。


「帰る前にもう一仕事しましょうか」


「致し方ないのう……」


 二人も乗り気みたいだけど、大丈夫かな?


「昨日よりあぶねえと思うぞ?」


 優しい笑顔で俺を見てくるマキマキ


「心配してくれるんですねカブラギさん」


「ジュエリールの本領はあんなものではないわい。ジュエルパワーが不足してなければ100倍は戦える。ワシの最高傑作ぢゃぞ」


 ふうん。問題なさそうだ。


「この世界の人たちのために、俺が……救世戦士アスガイアーが」


「魔法少女ジュエリールが」




「「打倒魔王を約束します」」




 声を合わせた俺たちの後にアグーが鼻をならす。


「陛下、ワシらは魔王に匹敵するであろう難敵を打ち倒した経験がありますぢゃ。御心内穏やかに、お任せくだされ」


 王様が顔を上げる。

 その目はさっきまでの強さとは別の、温かさみたいなものがある。


「……感謝する。そなた等の義憤に、心からの感謝を」


 義憤なんて大層なモンじゃねえんだけど、ややこしくなるから言わない。

 でも、こっちの人たちも救ったら、親父たちは褒めてくれるかな?

 よくやったって……自慢の息子だって言ってくれるだろうか?


 バルコニーのへりに立つ。

 王様も、

 マキマキとアグーも、

 シソーヌ姫とアルマも、

 サイロスさんとマルク将軍も、

 そこから遠い彼方を見据える。

 そして、倒すべき魔王を想う。


「待ってろよ。魔王ゾ……ゾル……」


「ゾルーバ・ディ・アブババです」


 俺はフォローしてくれたアルマを、感謝の気持ちを込めて指さす。


「それ」


 そしてまた彼方を見据える。


「待ってろよ……」



 その時。



 彼方から強風が吹いた。

 身体を庇い、ふと空をみると、


 晴れていた。


 雲ひとつなく、空気も澄んで、さっきまでの陰鬱とした世界はもうなかった。


「動く? 足が! 魔王ゾルーバから受けた呪いがかった足が!!」


 サイロスさんが片足を上げて叫んでいる。


「馬鹿な! なにが起こっている!」


 マルク将軍も声を上げる。


「こりゃいったい……」


 俺たちが戸惑っていると、入り口のトビラが大きく音を上げながら開いていく。

 すると、数人の高級そうな服やローブを着た人たちや騎士たちが慌ただしく入ってきた。


「陛下!! 緊急につき失礼いたします!! ザバナン大連邦国より魔導具にて通信がありました!! 驚愕の内容です!!」


 魔導具で通信?

 それが出来ないから困ってるんじゃなかったっけ?

 俺とマキマキが顔を見合わせる。

 王様はゆったりとバルコニーから玉座まで戻り、ドシンと座った。

 その様子を見て、入ってきた重鎮らしき数人は跪く。


「申せ」


「ハ!! 通信によれば勇者であらせられる王太子ノマリタ殿下以下3名! 彼の地にて魔王ゾルーバ・ディ・アブババを打倒せしめたとの事でございます!!」




 平和になった。






ご声援ありがとうございました!

まだ終わりません!

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