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第23話 陸上自衛隊特務連隊、第3急襲小隊


 さあダンジョン日和!

 潜るよ!


 入り口の係員さんとのやり取りを終え、オッケーサインを見せながら戻ってくる桜井さん。

 みんなで頷き合うと、まだ登りきっていない太陽に背を向けながら管理用砦内の転移門をくぐった。

 

 必要そうな道具は買い揃えて用意はオッケー準備も万端。

 本来《狂獣のダンジョン》の転移装置は使用料とか細かい手続きがいるそうだけど、サンリアガ商会の口利きでほぼフリーパス。

 大商会様様。

 

 門をくぐった先は大理石みたいな壁と天井の大広間。

 ここは30階層の最終部屋だって聞いている。

 転移門を設置できるギリギリの場所だ。

 すぐ近くに下り階段が伸びていて、二人組の騎士さんが控える。


「話は伺っております。シソー商会の方々ですね」


 立派な全身鎧だ。

 ガイアセンサーで分析すると、アルマが着ている鎧と同じ材質で出来ている。


「そうです」


「これより下の階層は特に危険が伴います。救援要請用の魔導具はお持ちでしょうか? ただ、使用されても救援がすぐに到着できるかは約束しかねますが」


「あ! 大丈夫です! 持ってます!」


 リュアザさんが肩掛け鞄から手の平サイズのなんか四角いヤツを出して見せた。


「では名簿にお名前をご記入下さい」


 手帳を差し出され、それぞれに回して記入していく。


 俺たち聖王国の異界人組4人(毛も含む)。

 ユウゲンさん。

 桜井さんたち自衛官5人。

 リュアザさんたち冒険者3人。

 計13人が名前を書いた。

 アグーの名前はマキマキが代筆した。


 最終の手続きが終わらせて、満を持して階段へ向かう。

 思いのほか短い階段を降りた先は、めちゃくちゃデカい洞穴の通路だった。


「おお……小人になったみてえ」


 壁がうっすら光っていて、流石に奥までは見通せないけど転ぶ事はなさそうだ。


「洞穴が光るとはな。風情があるではないか」


「すごいでしょう? そこら中に光の魔石が埋まっているの。それだけ持って帰っても一財産よ」


 エルンさんが説明してくれた。

 ふうん。

 ライトとかいらないって聞いてたけど、そういう理由ね。

 無属性の魔石に光魔術を込めた物より天然の物の方が光りがキレイだから高級だって聞いたな。

 一財産か……。


「カブラギさーん。早く行きますよー」


 マキマキに呼びかけられて我に返った。

 物思いに耽っていた俺をほったらかして進むみんなに慌てて追いつく。

 せっかちだなもう。

 

 リュアザさん達が先頭で、桜井さんを中心にした自衛官の人達が銃を抱えて横並びで進み、その後ろを俺たちが続く。

 最後尾はソレガシの旦那だ。丈夫だからなんかあっても平気だろ。

 ガイアセンサーと、ガイアイアーも一応起動させとくか。

 ガイアイアーはガイアセンサーの範囲500メートルより遠い音を拾えるからな。

 

「道案内は頼むぜリュアザさん。周囲の警戒は任せてくれ」


「そうかい! シュクの索敵魔術を使ってもいいけど! 魔素は温存しておくに越したことはないね!」


 腰の鞘を叩いてニッコリ笑うリュアザさん。

 確か剣の鞘を叩くのは《感謝》を意味してるんだよな。

 よし、期待に応えようかね。


 ガイアセンサーをピピっと起動。

 した途端、うぞうぞと無数の反応が……急速で接近してくる!


「反応複数! 数十センチが100以上だ! 向かってくるぞ!」


「戦闘準備!! おうぎの隊列!!」


 俺の号令に桜井さんがいち早く反応。

 先頭に出て指示を出すと、菊月さんと梅原さんが両脇に銃を構えて並んだ。

 その後ろではリュアザさんが剣を抜き、胸に掲げる。

 エルンさんは両手を躍らせて手の平を黄色に光らせ、シュクさんは衣からげきを取り出す。

 マキマキもブルーボウを構え、ソレガシの旦那とユウゲンさんは後方を警戒した。


 ドドドと大群が走り寄る音。

 やがて数十メートル先の暗闇から現れたのは、ビーバーみたいなケダモノの群れだ。

 四足でキイキイ鳴きながら、血走った目でよだれを吐き出しながら殺意をもって向かってくる。

 歯がギザギザ過ぎて動物的な可愛らしさは皆無だな。


 アスガイアー・ビーム……は洞穴じゃ不味いか。

 じゃあストーム系で弾きとばしてやろうとガイアコアから右のグローブへエネルギーを流すと――


「射撃!!」


 ダダダダダダダ!!


 自衛官の三人から放たれる弾幕にビーバーもどき共はもんどりうって伏していく。

 しかしそんな同族を踏み台にして跳び上がり、ビーバーもどきの群れは雨あられと牙を剥きだして襲い掛かってきた。


 撃ちはらおうと俺とマキマキが構えるが、後列の自衛隊員、松田さんと竹内さんが魔法カバンから取り出した物を見て手が止まった。

 竹内さんが口の端を吊り上げる。


「護衛としての戦力をお見せしてませんでしたね? 耳を塞いでください」


 構えるのは六本の銃身を突き出した、人ひとりが抱えているのが信じられないような重量感の鉄塊。

 映画とかでよく見る……


「ガトリングガンってヤツか!」


「正確には対コモネミ用最新ミニガン、K92……です!!」


 轟音!!!!

 

 地面を蹴り、一瞬で後方へ下がる自衛官三人。

 そんで退避を済ませた桜井さん達のいた場所に積み上げられていく、細切れの肉片。

 ほんのり明るかった周辺がより明るくなって、ガラガラと薬莢の落ちる音が響き続ける。

 ガイアイアーを切って気分的に耳を両手で塞いでいると、マキマキも同じように耳を塞いでしゃがみ込んだまま片目で状況を見ていた。


「ポータブルクラスター用意!」


「ポータブルクラスター撃ちます!」


 梅原さんが銃を下ろして丸い筒上の物を構えると、ボンと玉が発射されて魔獣の群れの上空へ到達。

 炸裂音と共に小範囲へ豪雨のような爆撃が降り注いだ。


 やがて内臓を連打するような音が止んで火花が消える。

 すかさず銃を構えた菊月さんが前に出ると、腰から何かを取り出して上へほおり投げた。

 ほおり投げられた物は天井に張り付くと、赤外線を辺りに照射させる。


「生命反応なし!」


「ふう……みんなごくろうさま。エコーにも魔獣の反応は無いね」


 立ち込める硝煙の匂いの中、桜井さんがヘルメットのバイザーを上げた。


「正に雷響の如き轟音! 腹に響いたわ!」

 

「これが噂の神兵かい! 凄いねカブラギくん!」


 テンション高いなこの二人。


「いや、俺もここまで凄いとは思わなかった。あ、マキマキあんまり見ない方がいいぞ」


 肉片の山なんて女の子が見るモンじゃねえやな。


「だ、大丈夫ですよ。アタシだってこう見えてあやっぱり無理」


 嘔吐くマキマキの背中をアグーが翼でさすってやる。


「ああ、こりゃ失礼。配慮が足りませんでしたね」


 慌てたように桜井さんが魔法カバンから円柱型の機械を取り出して銃の下部に取り付けると、消火器みたいにシュバッと白い粉末が飛び出した。

 粉末がかかった肉片がサラサラと溶けて大地に染み込んでいく。

 後にはくすんだ小石大の魔石がコロコロと転がるだけだ。


「これで良し」


 そう言って桜井さんは死骸があった場所へ向けて手を合わせ、他の四人もそれにならった。

 えっと、

 自衛官の人たちが凄い反応速度を出したのはあの戦闘服の性能か。

 重たそうな、なんちゃらっていうガトリングガンを抱えられたのもそのおかげだろう。

 エコーで索敵したり魔獣の死骸を溶かしたりなんだり、俺の時代じゃ考えられないような兵器の数々。


「あの、桜井さん」


 俺も自衛官の人たちと同じく手を合わて、桜井さんにお伺いをたてる。


「なんでしょう?」


「百年後も日常生活はそう変わらないって言ってませんでしたっけ?」


 微笑む桜井さん。


「ああ、軍事的技術はまだ民間まで浸透してないんですよ」


「へー……」


 

ミニガンK92


2092年開発の連装機関銃。

従来のミニガンと仕様はさほど変わらないが、ウィルニッケン製の銃弾を使用できるよう新規にアメリカ合衆国で開発された物。

ただ、コモンエネミーに対応する為に銃身をベルキルト合金に変更する事で連射性を毎秒7000発まで高めている。

なので、正確にはミニガンK92改が正式名称。



ポータブルクラスター


ドイツが開発した、しなやか且つ柔らかい合金ミルアニウムにより爆弾の最小化に成功。

ミルアニウムを外壁に使用する事で不発弾を極限まで減らすことが可能になった為に、対コモンエネミーに限って使用を許された持ち運び用《収束爆弾》。

これはオーストラリア大陸の放棄を国連が事実上認めたと見なされている。

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