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第11話 人魔大戦の概要


 エルフで宰相のサイロスさんは、「では待っているね」と言い残して消えちまった。

 離れた位置にサイロスさんの反応を感じる。

 どういうカラクリだろう?

 テレポーテーションみたいな超能力?

 ふと目があったアルマが口を開く。


「不思議に感じていますね。転移魔術です。ショーディル宰相閣下は先の人魔大戦にて手傷を負われ、足を動かす事かなわずにああいった移動手段をとられています」


 そんな事情があったのか。

 警戒して悪かったな。

 しかし、気になる言葉が……。


「人魔大戦?」


「向かいながら話しましょう」


 俺たち5人(獣含む)が扉に向かうと、あちら側から初老の男性使用人さんが開けてくれた。

 シソーヌ姫の先導で王城の廊下を進むと、マキマキがこそっと話しかけてくる。


「あの執事さんも、ただものじゃないですよね」


 そうだな。

 こちらの気配を察してたし、ブレない姿勢にどっしりとした体幹を感じた。


 シソーヌ姫がそんな俺たちを見る。


「彼は執事長のアルセーヌです。体術を得意として、戦闘もこなします。確かに特別強いですが、この国に住まう民はみな戦えますよ。聖王陛下が戦うすべを全国民に教授するよう、十年前から施政しせいしておりますので」


 全国民が?

 騎士や兵士もいるのに、民間人にまで戦闘参加を促すのか。

 この戦争、かなり前から大局的に見て芳しくないんだな。

 ……ん?


「さっきパパって言ってなかったっけ?」


 シソーヌ姫が顔を赤くする。


「そんな事より! ほら! アルマ! 人魔大戦の説明説明!!」


 手をブンブンと振るシソーヌ姫を意に介さず、アルマは歩きつつまた口を開く。


「人魔大戦とは、魔王ゾルーバ・ディ・アブババが魔界から魔族を率いて大陸七国のひとつであるシュウ大帝国を侵攻した際の戦いの事です。大陸の北東に位置するその国は海に面しており、七国最大の武力を有していましたが奇襲をもって機先を制され、わずか十日ばかりで国の三分の一を制圧されてしまいました」


 石造りの廊下にアルマの足甲の音が響く。


「大陸七国は有事の際、協定をもって援助をすることが取り決められています。緊急の援軍要請を他の六国と複数の小国はこれを即刻受諾。精鋭をもって連合軍約100万。シュウ大帝国軍約200万。総数300万で魔王軍と対峙しました」


 300万……。

 途方もない数で言葉もねえ。

 一つの戦線でそんな戦い、世界大戦の規模じゃねえか。


「それでどうなったんだ」


 聞いちゃみたが、分かってる。

 負けてなけりゃ今も戦争なんてしてるわけない。


「兵站の問題も近隣諸国が全力で援助しましたが、戦いは熾烈しれつを極め敗北。シュウ大帝国イェン皇帝は自刃。連合軍も半数以上が戦死し退却。総指揮官を拝命していたショーディル宰相閣下も死罪を希望されていましたが、退却の際に大型転移陣を展開した功績と世界の危機に有能な人材を減らすことを嫌った七国連合に帰国を許されたのです」


 そこまでの説明にシソーヌ姫が重い声をだす。


「それから14年……私が生まれる前……」


「元シュウ大帝国の地に拠点を構えた魔王ゾルーバは、それから大陸全土を制圧すべく再侵攻を開始。精兵を多く失った各国は防戦一方を余儀なくされ、戦線は徐々に苦境に立たされています。大陸中の英雄や冒険者たちが魔王を討伐すべくゲリラ作戦を展開しておりますが、届くのは悲報が多く……。ここアークガド聖王国も勇者として覚醒された王太子、ノマリタ殿下がお仲間と共に旅に出られております」


 勇者ときたか。

 魔王に挑む勇者なんて冗談みたいな話だが、俺がこっちで見た戦いは決して作り物の、都合のいいものじゃない。


「アタシはカブラギさんより早くこっちの世界に来て魔王軍に滅ぼされた村を見たんです。……ひどかった。種族の違い、文化の違いじゃない。人々を、こ、ころす事が目的なんだって、思いました」


 マキマキが俯いて、絞り出すようにしゃべる。

 なるほどな。休戦は無理そうだ。

 俺はシソーヌ姫に(いざ)なわれてこの世界に来たが……。


 運命とでもいうのか。

 救うために、償うために呼ばれた気がしていた。

 俺のこのアスガイアーのチカラ、マキマキのチカラを目にして王様がただお礼を言う為だけに改めて会いたいなんて言うか。

 王太子まで戦うのを良しとする程の為政者が。


 上等だ。


 世界を一つ救ったんだ。

 もう一つくらい救ってやるよ。

 そんで気持ちよく帰ってやる。

 もう後悔すんのはいやだ。


 沈黙の中、廊下の先に目的地が見えた。

 無骨だが、複雑な模様の彫られた大きな両トビラだ。

 開けるのもひと苦労だろうと考えていると、響くような声が廊下に響く。


「アークガド聖王陛下が謁見を許可されました。お入りください」


 サイロスさんの声だ。

 トビラがゴゴゴゴと音を立てて勝手に開いていく。

 これも魔法だろうか? 便利なモンだなと考えてると、ゴゥンという響きでトビラが止まった。


 シソーヌ姫に先導されて、俺含めた5人(うち一人は獣だけど)は謁見の間? 玉座の間? に入っていく。


 シソーヌ姫とアルマが跪き、俺とマキマキが慌てて真似しようとすると王様が止めた。


「そのままで良い。わが国どころか、我らの世界のものではない者に臣下の礼は必要ない。二人もおもてを上げよ」


 そう言われると、シソーヌ姫もアルマも片膝を付いたまま顔を上げる。

 俺たちがいる場所から10段くらい上の玉座には王様が座っていて、左にサイロスさん、右にマルク将軍が立ってる。


 王様が再びしゃべる。


「礼を述べる前に少し、異界人の其方等と話がしたい」


 だよね。





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