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第14話 ネコネコ英雄譚


「敵軍接近! 敵軍接近!」


 拡声用魔導具から通信が飛びました!

 大商国国境に設けられた長城に、大陸中の有志たちが集合します!


「状況の報告をするニャ!」


 勇ましく指示を出すのはそう!

 大商国で最も多くの商会を取り仕切る! 小さな巨人!

 猫妖精ケットシーであるピッピネン・サンリアガ大会頭でした!


 サンリアガ大会頭は後ろ脚で城壁に立ち、猫背をシュッと伸ばして前足を振るう!

 英雄たちを的確に配置し、的確な作戦を的確に伝えていく!

 流石は参政権を持つ商会の! 立案権を持つ代表5商会の首長です!

 ※サンリアガ商会は今! 業務拡大により従業員を募集中です!


「大会頭! 魔王軍の主力は昆虫系と妖魔系の魔物です! 率いる将軍は《戦刃》だと思われます!」


「相手にとって不足はないニャ! 我がヒゲに賭けて誓おう! この国は! 必ず守るニャ!」


 魔王軍の歩速が早まります。

 物見の報告によれば、その数二万。

 対する我らは総数五千。

 土煙を上げて接近するそのさまに、英雄たちに緊張がはしりました。


「狼狽えるニャ! 敵に策を弄する様子は無い! 遠射で先制して出鼻を挫くニャ!」


 流石はサンリアガ大会頭!

 英雄たちの顔に余裕が戻ってきました!

 城壁上の投石器からは、最上級の裂炎魔石が飛びます!

 歴戦の傭兵たち、冒険者たちも矢撃・攻撃魔術を放ちました!

 ※映像は当時の物です。現在はより最先端の設備を導入しています。

  特に裂炎魔石は家庭用・業務用・軍事用まで幅広く取り揃えております。

  ご用命はサンリアガ商会までお問合せ下さい。


 しかし……、

 

「速度弱まりません!」


 爆撃・矢玉を意に介することなく、《戦刃》率いる魔王軍は進軍を続けてきます。

 敵は狂ったように走り、驚くべき速度で城壁に向かってきました。


 後で分かった事ですが、この時《戦刃》は狂化バーサクの法術を使用して兵の恐怖を減退させ、身体能力を上げていたのです。

 とても卑怯ですね。

 ※現在ならば最新鋭の弩弓で対処できます。

  ドワーフ印の最高級品はサンリアガ商会でお買い求め下さい。


「魔防障壁を展開するニャ! 前衛は後退! 魔術師は魔術盾マジックシールドで遠撃に備えるニャ!」


 またも的確な指示が飛びます。

 流石はピッピネン・サンリアガ大会頭!

 乱世においてもアッキンド大商国を牽引してきた商会の首長です!


 魔王軍の進軍は弱まります。

 ですが、後方より現れた鬼人オーガの重装歩兵隊が棍棒を振り回して魔防障壁を砕きました。

 当時、狂化バーサク状態の鬼人オーガは流石に止められませんでした。

 ※現時点ならば、当時以上の魔防障壁用魔導具をご用意しております。

  軍事用のみならず、冒険者さまの野営用・旅商人さまの自衛用など、用途に応じて様々な商品がございます。

  店舗にて試運転も受け付けておりますのでお気軽にお問合せ下さいませ。


(宣伝が多いな……)


 そこからは、一進一退の攻防でございました。

 歴戦の勇士たちといえど敵もさるもの。

 かの人魔大戦を生き延びた精鋭であります。

 味方の多くは倒れ、大商国の国境は危機に瀕しました。


「負けるニャ! 《世界の守護者》の加護は必ずあるニャ!」


 雄々しく鼓舞するピッピネン・サンリアガ大会頭でしたが、損得を考えぬ志高い有志たちにも限界がありました。

 前線は乱れ、悪の軍団が長城に群がります。

 数の暴力、魔の圧力……。


 サンリアガ大会頭は天を仰ぎ、尻尾を立てて祈りを捧げました……。


 その時!!


「サンリアガ大会頭! あれを!」


 味方の声にハッとするサンリアガ大会頭。

 声を上げた者の指さす先に! 見た事もない軍勢が現れたのです!!


「我々は! サンリアガ大会頭の祈りに呼応し参上しました! 共に悪を滅ぼしましょう!」


 神の兵です!

 異界から神が遣わしたのです!


 走行する、長箱型の見た事も無いゴーレムたち!

 龍の如く空を飛ぶ、別種のゴーレムからは裂炎魔石以上の攻撃魔術が放たれる!

 目を見張る身体能力を有する神兵たち!

 携えた魔導筒からは高速の炎撃が連射され、鬼人オーガの重装歩兵をも貫きました!

 次々と倒れ、血反吐を吐き、惨めな姿を晒す悪人共。

 サンリアガ商会の元、みんなが団結したおかげですね。


「ひゃあ! こいつはかなわん!」


 《戦刃》は悲鳴を上げながら、スタコラサッサと逃げ出しました。

 

「勝ちどきを上げるニャア!!」


「「「えいえいおー! えいえいおー!」」」


 アッキンド大商国の国境を守り切った、その喜びに英雄たちが浸る中で神兵の一人が長城に近づきました。

 彼こそが神兵のリーダーである、アーノルド・チュウサです。


 それを迎える為に、城壁からひらりと飛び降りるサンリアガ大会頭。

 素晴らしい身体能力です。


(猫だからだろうなあ)


 互いに歩を進め、向き合うサンリアガ大会頭とアーノルド・チュウサ。

 笑い合うと、熱く、熱く握手を交わします!!

 場は歓声に包まれました! 素晴らしいですね!


 ――中佐もよくやるぜ。


 ――スポンサー様の意向だもの。仕方ないわ。


(……この話しぶりは関係者だな)


 こうしてアッキンド大商国、未曽有の危機は去りました!

 この後、サンリアガ商会が支援している大聖王国の勇者一行が、憎き魔王ゾルーバを討ち果たしたのです!


 ※なお、神兵の皆さまはサンリアガ商会が現在、後援しております。

  ご用命の方はサンリアガ商会をお通し下さいますよう、お願い申し上げます。



 ◇◆◇◆



 俺はガイアイアーに注意を向けたまま、がやがやとした周りに合わせて立ち上がった。

 

「凄かったでしょ! アルセーヌが持ってる映像魔導具よりずっと長い時間記録できるんだよ! 迫力満点だったねぇ!」


 アルマが湿ったハンカチを仕舞いながら、はしゃぐシソーヌ姫をイスから降ろす。

 そうだな。

 音声の入らないのは同じだけど、アルセーヌさんのは10秒くらいしか記録できないのに対して20分以上は上映していた。

 しかも複数の映像を編集して、音声の吹き替えもしていた。

 こりゃあ相当高価な映像魔導具を使っているんだろう。


 吹き替えの雑さと、わざとらしさに目をつぶれば立派な娯楽だ。

 まだ出来立ての文化みたいだし、そのうち演出とか凝りだしてクオリティも上がってくるんだろうな。


「カブラギさん。どうでした?」


「おう。二人いた。ガイアセンサーで追ってる」


 行くか。


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