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第10話 エルフのお偉いさん


「並行世界というものがある」


 妖精アグーが浮きながら、白い毛をなびかせてそんなことを言い始めた。

 漫画かなんかで聞いた事があるな。


「なんだっけかそれ?」


「うむ。簡単に言うと、自分の住む世界の隣にある世界。例えばカブラギ殿がラーメン屋で餃子定食とチャーハン定食で迷ったとする」


 俺は深くうなずく。


「難題だな」


「迷った時、世界は分かれる。カブラギ殿は餃子定食を注文するが、チャーハン定食を頼んだカブラギ殿も別に存在するのぢゃ。つまり、選択の数だけ世界は並行して存在するという事ぢゃな」


 迷った数だけ世界が存在するって?


「とんでもねえな」


「まあ多少の違いしかない並行世界は、ほぼ元の世界とダブって存在しておるからドッペルゲンガーなんてものも視えるんぢゃが……。マキマキとカブラギ殿はお互いに、少し遠い地球からこちらの世界に来たみたいぢゃな」


「なんでアグーまでマキマキって呼んでんのっ!?」


 マキマキがアグーに詰め寄る。


「いたた……あだ名が嬉しそうぢゃったから」


 俺が気を取り直して目線を上げると、いつの間にか男が立っていた。

 緑の法衣? を着た耳のとんがった男が。


「面白そうな話をしているね。私も同席して構わないかな?」


 俺は身体を起こし、ベルトのアスガイアーコアに手をかける。

 いつ部屋に入ってきたのか分からなかった。

 アスガイアーセンサーにも全く反応しなかった。

 

 警戒する俺の様子に気が付いたのか、シソーヌ姫が制すように手の平をこちらに向ける。


「ご安心ください。この国の宰相を務めていらっしゃるサイロス・アラ・ショーディル様です。この国を覆う聖結界をお作りになった方でもあります」


 30歳に差し掛かかるくらいであろう、銀色の長髪を後ろに流した目の細い優男だ。

 だが、アスガイアーアイを使わなくてもわかるほどのエネルギーがカラダを包んでいた。

 魔王4将軍のシャマカより強そうに見える。


 警戒を解かない俺に、宰相と呼ばれた男は細い目をさらに細めて笑いかけてきた。


「驚かせてしまったねカブラギくん。君に感謝の言葉を伝えようと思ったんだけど、話の腰を折りたくなくってね。声をかけるのが遅れてしまって申し訳ない」


 どうやって入ってきたのは分かんねえけど、ただもんじゃねえな。

 油断ならねえが、この国の宰相で結界作った味方って言われちゃ警戒し続けんのは良くない。

 シソーヌ姫の顔をつぶしちまう。


 耳が尖ってんのは物語によく出てくるアレか?

 長生きで有名な、エルフってヤツか?


「宰相さまは、長生きで有名なエルフなんですか?」


 質問しながら手をバックルから下し、座りなおした俺を見て宰相は笑みを深くする。


「知っているのかい? もしかして君たちの世界にもいるのかな? 他の人に比べると長生きかもね。私はまだ450歳で若いほうだけど」


 450歳!? 

 すんげえじいさんじゃねえか!


「すんげえじいさんじゃねえか!」


「まあ、人族からしたらそうかもね」


 口に出てた!!

 苦笑いで応じる宰相さま。

 めっちゃ偉い人相手に失言だ。

 怒られるかな?


「カブラギ様、いくら救国の英雄とて無礼ですよ!」


 シソーヌ姫に怒られた。

 俺はしゅんとするが、宰相様は意に介さないようにニコリと笑う。


「いやいや。カブラギくんの世界とは文化が違うだろうし、気取らず話しかけてほしいな。私もそうしてるしね。それよりも……」


 ジロリと目を細めて、シソーヌ姫を見る。


「姫様とアルマさんは何をしてるのかな?」


「やば!!」


 シソーヌ姫が声を上げた。


「パパにカブラギ様たちをお呼びしなさいって言われてたんだ! すっごい忘れてた! アルマもなんでなんも言わないの!?」


 アルマはイスに座ってお茶を飲んでる。


「呼ぶように申し付けられてたのは姫さまですので」


「たしかに!!」


 ……主従を超えて仲がいいんだろうな。

 俺が微笑ましく二人を見ていると、姫様はバツが悪そうに顔を赤くする。

 一つ咳ばらいをすると、俺とマキマキ、アグーを見た。


「カブラギ様、海崎様、アグー様。此度のご助力、この国に住まう者たちを代表して深く感謝の意を示します。ひいては我が国の王で在らせられる、アークガド18世陛下も直接の謝辞しゃじをご希望されております。ぜひ謁見をお願い致します」


 鷹揚にそう言うと、深く綺麗に頭を下げた。


「私からもお願い申し上げます」


 アルマも立ち上がると、姫様に追随するように頭を下げる。

 俺がどう反応していいか迷っていると、マキマキが声をかけてくる。


「アタシはさっきお葬式、こっちじゃ鎮魂の儀っていうそうですけどその時あいさつしましたし、カブラギさんもした方がいいんじゃないですか?」


「そうぢゃな。勝手のわからん世界に来たんぢゃ、カブラギ殿がこれからどう行動するにせよ、国の支援はあるに越したことはあるまい」


 ……たしかに。

 俺はこの異世界のことをロクに知らない。

 元の世界に戻る方法を探してえが、魔王なんてモンと戦争してる世界を無手で旅するなんて現実的じゃねえし。


 なにより……。


「わかりました。伺いますよ」


 俺はそう言って立ち上がった。







カブラギさんはお風呂でもスーツです。

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