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第2話 謝れる男


「カブラギさん。詳細を」


 マキマキの疑問に答えるためにガイアセンサーで周囲を探る。

 

 犬みたいな獣が23。

 4メートルくらいある二足歩行のヤツが8。

 空中に浮いているのが38。


 それをみんなに伝える。


「なるほどのう。大雪山の危険地域と聞いておったが、ここへ来るまで特に襲われなかった事を鑑みるに統率の取れた魔物たちのようぢゃな」


「うむ。我らの気が緩むのを待っておったか……。もしくは見定めておったか? だとするならば、寒花の採取が不興を買ったやもしれぬな」


 年寄り二人が難しい言葉でなんか納得する。

 

「エネルギー的にそこまで強くなさそうだ」


「具体的にどれくらいでしょうか?」


 そうだな……。


「冒険者ギルドで聞いてた危険度で考えると……。スケルトンメイジとかゴブリンリーダーあたりくらいかな。中級と、いいとこ上級ってトコか」


 まあ、この吹雪の中で戦うとなるとフツーは危険度以上に手こずるだろうけど。

 ん?


「ちょっと待って。センサーぎりぎりに強い奴がいる。んー……。超級に届くかどうかくらいのヤツだ」


 魔物のレベルは、

 下級、中級、上級、特級、超級、伝説級、神話級まである。

 神話級は《暴虐龍》ってヤツが規格外だから急遽つけられただけで、基本は伝説級まで。知恵の無い龍や、魔王軍の将軍だって超級の上という括りだった。


 そう考えると、かなり強い基準のヤツが率いてるみたいだ。

 他の奴らからすると、だけどな。


「某がささっと捕獲してくるか? 雑魚はマキマキ殿で十分であろう?」


「いや、素早いタイプのヤツかもしんねえ。旦那は鎧が雪山に向いてねえから俺が行くよ。一応逃がしそうになったらあの技で牽制してくれ。あの……なんだっけ?」


「超絶・真空斬撃拳か?」


「そうそう。それ」


 《絶・真空手刀飛ばし》って言ってた気がするけど、まあいいや。


「カブラギ。敵で間違いないんぢゃな?」


 アグーが念を押してくる。


「うん。敵意は間違いないし、攻撃する気満々で今まさにエネルギーを飛ばそうとしてる」


「ふむ。とは言えなるべく殺さんようにしたいところぢゃな。別種族が協力しておるからには仲間意識が強いのかもしれん。山の中の魔物全てに敵対されると面倒ぢゃ」


 そうね。

 別に討伐してこいって言われてるわけでもねえし。


「オッケー。みんなそんな感じで、じゃあいくぞー……いち、にの、さん!」


 かまくらから飛び出す俺たち。

 ご丁寧にかまくらを壊さなかったのはマキマキが頑張って作ったモンだからな。

 女の子の手作りを崩すなんて、そんな非道な真似は出来ねえ。


「ブルーボウ!」


 マキマキが蒼い弓を出してピュンピュンと矢を飛ばす。

 氷みたいな毛のオオカミたちがキャンキャン言いながら痺れていく。

 

「ソレガシ・一足大跳び!」


 ソレガシの旦那が大ジャンプして白い毛に覆われたイエティみたいな奴らの近くに着地。

 猿みたいに叫んで攻撃するイエティたちが旦那を殴る。

 でもあの鎧はメチャクチャ硬てぇんだ。攻撃した方が「オホッオホッ」言いながら拳を庇ってる。

 そんなスキだらけのイエティたちの腹を殴って沈めていく旦那。

 

「そりゃあ!」


 アグーが羽毛の翼をバサッと出して、ビュン! と氷で出来たような飛ぶ鳥の魔獣へピンボールみたいに体当たりしていく。

 威力的にあんなんで退治できるとは思えねえけど、鳥もどき達はギャアギャア鳴きながらアグーに気を取られてるみたいだ。


 そのうちに俺は猛ダッシュ。

 ガイアエネルギーを放出しながら雪を溶かし、離れた場所にいる高みの見物野郎へ向かう。

 吹雪の中、高い岩の上で腕を組んだヤツを肉眼で確認。


「なんと!」


 驚く全身青色の、顔色悪い悪魔がいた。

 歯がギザギザの虫歯菌みたいな見た目で絵本なんかでよく見る悪魔みたいなヤツだ。

 そいつは慌てた様子で両手を突き出し、魔法陣を出した。


氷結槍アイスランス! 氷結槍アイスランス!」


 両手で一発ずつデカめな氷の槍を飛ばしてくる。

 俺は身体を捻りながら跳んで避け、空中でバックルを擦って右手にガイアエネルギーを集中させた。

 

「アスガイアー・ビィィイムゥ!!」


 悪魔ヤロウの前方にビームを放射。

 ドバッと雪が蒸発して辺りは霧に包まれた。


「小癪な!」


 悪魔が両腕をクロスさせて新しい魔法陣を出す。

 でもね?


「遅いぜ」


 後ろに回り込んだ俺は悪魔の背中に右手を突いてエネルギーを集中させる。


「これ程の……貴様ら並みの冒険者ではないな? S級か?」


「冒険者じゃねえけどS級だ。スーパーヒーローのSな」


 元居た場所の方から魔獣たちの悲鳴が聞こえる。


「あいつらの飼い主はアンタだろ? 降参してくんねえかな」


 悪魔って亜人なのかな?

 なるべく人死には避けてえんだけど。


「迷い込んだだけならば……見ぬふりをしたところだがな」


 青い悪魔の身体にエネルギーが凝縮されていく。

 何する気だ?


「コソドロ風情が!」


 ズバッと氷のトゲトゲが目の前に突き出された。

 とっさにアスガイアー・ガードを出すけど、衝撃に弾かれて悪魔と距離ができる。

 悪魔の背中がウニみたいになっていた。

 

「今のを防ぐか……」


 とか言いながら、悪魔が俺に向き直って両手を広げた。

 青い魔法陣が4つ浮き上がる。


「ちょっと待ってくれ。コソドロってどういう事?」


「問答無用よ! 氷結槍アイスランス!」

 

 魔法陣が光り、4つ全てから丸太みたいなつらら・・・が不規則に飛んできた。


「問答無用じゃねえよ。聞けよ」


 俺はそのつららをワンツー・ワンツーと殴り割る。


「暴力反対。先ずは話し合いだろうが」


 雪をカラダの熱で溶かしながら再び悪魔に近づく。

 飛んでくるつららを割りながら。


「くっ! 先に手を出しながら! 何が話し合いだ!」


 はあ? 何言ってんだ。


「何言ってんだ。先に手ぇ出したのは……」


 先に手ぇ出したのは……あれ?


「……俺らだっけ?」


 いや、でも待って?

 敵意まんまんで俺らを取り囲んだのはコイツ等じゃん。

 エネルギーで攻撃しようと……してただけか。

 ん? そんで先に攻撃したのは俺らで。

 攻撃しようって言ったのは俺で。

 え? 俺が悪いの?


「ふざけるな!」


 俺が立ち止まって考え事してるあいだに、悪魔の出した魔法陣が4つ一列に重なった。


四重氷結槍フォースアイスランス!!」


 ヌオっとドデカい氷柱が現れる。

 

「えっと、ごめんなさい」


「黙れ!」


 あやまったのに!

 まあ、ごめんで済んだら警察はいらねえかな。

 なんて思う間に氷の柱が迫ってきた。

 

「デラスト・ナックルぅ!」


 そんでソレを砕く。

 粉々に割れた氷が風に舞った。キレイ。


「な……」


 弱まった吹雪の中、アイシールドの奥から悪魔を見据える。

 

「もう止めよう。……それとも、最後までやるかよ?」


 身体からガイアエネルギーを溢れさせる。

 バッと放出させると雪崩が起こるかもしんないから、ゆらゆら湯気みたいな程度に抑えた。

 これが結構むずかしいんだ。


「ぐぅ……偉大なる方に仕える身として……無様な真似ができるかぁ!」


 なお向かって来ようとする悪魔。

 やるせない気分で迎え討とうと俺が構える、と。


「いいよ! 心がけはリッパ!」


「《痩せガエルにも跳ぶ気力》ってね!」


 白い龍が二頭、粉雪を散らせながら空から現れた。



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