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第9話 エピソードトーク


「その時、ダルダム団の誇る三大幹部が一人! ヒキョーン大参謀の卑劣な罠が待ち構えていた!」


 俺が身振りを加えて喋ってると、なぜかシソーヌ姫様と護衛騎士アルマも部屋に入ってきていた。

 アルマは椅子に座って紅茶をすすり、妖精のアグーはテーブルの上でこちらをうかがってる。

 マキマキと姫様は、俺の近くで食い入るように話を聞いている。


「絶体絶命! しかし、正義に目覚めた怪人ハイエナ男が助っ人に現れる! ハイエナ男の背に乗り、敵の包囲網を突破する救世戦士アスガイアー! そこに三大幹部、Ⅾr.ザンコックが作り上げた悪の巨大兵器が大地を割って現れた!」


 お子様二人が喉を鳴らす。

 俺はパンっと膝を打つ。


「さしものアスガイアーもこれにはたまらない! そこで奥の手だ! アスガイアーは呼ぶ! 頼りになる相棒を! その名は!」


「「その名は?」」


 俺は立ち上がり、かしわ手を打つと声を大きくする。


「絶対無敵の巨大ロボ! ダイ! コガ! ネ!!」


 目を輝かせて聞いてくれてるマキマキと姫様から、小さな歓声が上がる。

 そこでアグーが話に割って入った。


「カブラギ殿は講談師か何かやっておったのかの?」


「ちょっとアグー! 今いいとこなんだから……」


「ちがうちがう。俺は屋台の鉄板焼き屋だよ。お話がちょっと得意なのは児童養護施設に顔出しててな、そこのチビ共に今みたいな話を聞かせてたからさ」


「「チビ共……」」


 前で聞いてた二人が顔を伏せる。

 そこで趣旨と違う風になってた事に気が付いた。

 楽しそうに聞いてくれてたから、つい調子に乗っちまった。


「まあ、アスガイアーはなんやかんやで敵の親玉を倒したんだけど、決戦の場所が異空間でさ、もう戻れないって感じだったんだよ。でも気づいたらこっちに来てたってところか」


 簡単にまとめて話を終わらせる。

 マキマキが片手を上げて答える。


「アタシも! アタシも暗黒空間ってところに閉じ込められてたんです!」


「うむ。ワシらもダークマターという星のエネルギーを食らう連中と戦っておっての。最後の決着が付いた際、大ボスの崩壊に巻き込まれてしまったのぢゃ」


 アグーが補足してくれる。

 よく分かった。

 要するに、俺と全く同じ状況だったってことね。


「大変だったなマキマキ。まだ小学生くらいか?」


「15歳ですよ! 来年高校生です!!」


 ぅおぅ……。びっくりしたぁ。

 叫んだ後ブツブツ言いながら無い胸を触ってる。

 15歳か。

 そのくらいの年頃は大人に見られたがるもんだし、悪い事言ったな。


「あー……やっぱりな。だと思った。ところで、ジュエリールなんて聞いたことねえんだけど、二人ってそんな隠れて活動してたのか?」


 我ながら上手くごまかしつつ、考えてた疑問をぶつけてみる。

 俺が戦ってたダルダム団は世界規模で暗躍してたし、末期には結構ハデな破壊活動もやってた。

 俺もなるべく目立たないように戦ってたけど後半はそんな訳にもいかなくなって、国と連携しつつ巨大ロボのダイコガネで暴れまわった。


 でもダークマターなんて連中と出会ったこともないし、聞いた事すらない。


「そんな事はないです。最初は目立たないように戦ってましたけど、最終的にダークマターは世界に宣戦布告しましたし……」


 俺たちが疑問をぶつけ合ってると、シソーヌ姫が手を上げた。

 そもそもこのお姫様に俺らは呼ばれたんだよな。

 なら召喚ってやつがどんな仕組みなのか、聞いたほうが早い。


「おそらく話に食い違いがあるのは時代が違うか、もしくはお二人の世界が同一のものではない、よく似た別の世界という可能性があります」


 時代が違うはまあわかるが、良く似た別の世界?


「どういうことだ?」


 シソーヌ姫はスッと立ち上がり、俺とマキマキとアグーを鷹揚に見回す。


「私が行った召喚とは、場所や個人を指定してこちらに呼べるものではありません。ただこちらに出口を作り、世界と世界の間を流されている者を呼び込むだけの魔術なのです。ただ、どういった仕組みかはわかりませんが、その出口は悪い心をもった者は通れないと言われています」


 補足するようにアルマが口を開く。


「アークガド聖王国に伝わる秘術のひとつです。今まで術を行った記録はあるのですが成功した例はなく、多大な魔素を使用するので長年使い手はいませんでした。しかしシソーヌ様は努力して会得され、毎日秘術を行いました。これは自分にしか出来ない戦いだとおっしゃられて」


 ……そうか、呼び出されたモンかと思ってたが。

 どうやら助けられたのはこっちだったみたいだな。

 シソーヌ姫がいなかったら異空間に一生いたかもしれねえ。


 俺たちが神妙な顔でシソーヌ姫を見ていると、アルマがわずかに目を潤ませたのに気が付いた。


 護衛騎士としてそんな姿をずっと見てきたんだ。

 思うところがあるんだろう。


「魔力が切れてぐったりした姫さまをお運びするのは……本当に楽しかったですね」


「ゆがんでる!!」


 叫びながら、シソーヌ姫がアルマに向き直った。





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