第二章
「なななな………」
ライファは声にならなかった。
ここは三階か四階だろう。
しかし、バルコニーの手摺りにはフローがぶら下がっていた。
「何で!?」
「静かにして、姫様。侍女が来るよ?」
「あ…っ…」
慌てて口を紡ぐ。
「俺さ、運動神経抜群なんだ。だから、いつも来てた」
「と…とにかく中に入って。話しを聞かせてよ」
ライファはフローの腕を掴むと、バルコニーに引き込んだ。
「姫様ってやっぱりおてんばだね」
フローはバルコニーに座って、からからと笑った。
「中に入って」
ライファが促すと、フローは今までとは違う、ずっと冷たい笑みを浮かべた。
「それって命令?」
「…え?」
予想外の言葉に、ライファは目を丸くした。
「それは、姫様という立場からの命令?」
すると、ライファはフローの頬をつねった。
「ひへっ!?」
「冗談じゃないわ!!何が姫様の立場よ!!私は私よ!嫌なら嫌と言いなさい!!」
フローは呆然とした。
だが、フローは可笑しそうに。
「何よ」
「姫様だなと思ってさ」
「は?」
ライファは目を丸くした。
「んー…魂は同じだな」
「訳のわからない事を言ってないで、早く入って」
きぃ…と、きしんだ音を立てて扉が開かれた。
中に侍女はなく、静まり返っていた。
「とにかく座って。話しを聞きたいの」
ソファーに腰を下ろしたフローを一別してから、自分も座った。
「ここは、フロウ国。姫の国です。あなたは第一王女。下に妹君が一人居ます。
名前はアル様。今この宮殿にはいないですけど」
「そこまでは分かったわ。でも、私が聞きたいのはここがどこか、ということよ」
「だから、フロウ国」
「違うわ」
「ほんとだよ」
「そうじゃなくて…」