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第十三章
にこりと笑って。
「鵺は関係ない。私は私。私にも、心があるわ」
ゆっくりフローの元に歩み寄った。
今度はライファが彼の手を握る。
「苦しい事も悲しい事も、恐れる事じゃない。少なくとも私は平気」
「強いな」
「フローが居るからよ」
ライファはそっとフローを抱きしめる。
小さな子供をあやすように。
「鵺は…性格が分かれてしまったの。一人は殺人衝動を起こす、殺人鬼になってしまったわ」
「そこが……」
「ええ。そこから私が生まれた。鵺と月、二人はお互いに気付かなかった。だから思いが歪んでしまったのよ」
一人の人間が気付かない二人の人格を持ってしまった。
だから、壊れてしまったのだ。
その崩壊を止めるため、ライファが生み出された。
「みんなが全てそうだとは思わない。でも、生きる事は逃げていい事じゃない」
鵺も月も。
互いに及ぼし合って、生きていた。
辛かったはずだ。
鵺も、月も。
知らない自分が居る。
分からない自分が居る。
自分が理解できない程の恐怖はない。
「恐怖の対象がないものに怯えている自分が怖い。ずっとそうだった」
フローはライファを真っ直ぐ見る。
青い瞳が、黒い瞳を射抜く。