第一章
空は満天の星。
吹く風は爽やか。
「…っと……」
見渡す限り、砂漠。
長い黒髪の少女。
その瞳もまた、漆黒。
「えー…っと…」
人種は日本人。
歳、十五。
名前、クロウ・ライファ・フロウ。
「あれ…?私なんでこんなとこに居るんだっけ…」
重たい腰を上げる。
現状を把握したい。
――その時――
「姫様っ!!」
「は…?」
まずは、驚く。
馬に跨がった少年。
黒い装束に長い青銀髪がよく映える。
少年の名は、フロー。
ライナ・フロー・サイル。
「あ…っと…姫様て、私のこと…?」
ライファは自分を指差して言った。
すると、少年は急いで馬から下りて来た。
「ライファ様、いかがなさいまし…た…」
彼はライファの瞳を覗き込み、僅かに目を見開いた。
「どうか…したの?」
ライファは、そっと彼の頬に触れた。
「あ…いや…すみません…」
フローは急にはっとしたようにライファから離れた。
「あの…あなたの名前は?」
「姫様。いつもの姫様じゃないね…」
彼は鋭い目で見た。
「ねぇ、ここはどこなの!?私はここでどういう存在なの!?教えて!!」
ライファはしがみつくようにしてうなだれた。
突然の事で、頭が混乱している。
このままでは、自分の名前さえ忘れてしまいそうだ。
「お願い…教えて……」
「クロウ・ライファ・フロウ」
「え…?」
ライファは顔を上げる。
少年は低い言葉で呟いた。
「あなたの名前です。俺はライナ・フロー・サイル。フローです、姫様」
「姫…様…?」
「ここはあなたの国です。ライファ様」
「私の…?」
すると、フローは軽々とライファを抱き上げた。
「んな…っ…」
「城に帰りましょう。それと…」
フローは声を一段と低くした。
「俺以外の前では、王女・ライファ様でいてくださいね」
「……っ」
ライファは言われるままに従った。
「おぉ、ライファ。ずいぶんと帰りが遅かったのう」
城に入った途端、男がライファに抱き着いて来た。
「な……」
悲鳴をあげそうになったが、何とか堪えた。
「も…申し訳ありません…」
震える声で言ったはいいものの、声が上ずる。
「ふん…いつもと違うな、ライファ。どうした?」
「…っ!?」
何と返答してよいのか迷っていると、フローが助け船を出した。
「王様。姫君はお疲れのようなので、休まれるのが一番かと」
頭を深々と下げた。
「それもそうだな」
ライファは失礼しますと言って、広間を出た。
「こちらでございます、姫様」
桃色のドレスを纏った、侍女らしき女性が案内した。
しかし、部屋の変わり目でフローは止められた。
「どうしてフローは…」
ライファは思わず声をあげたが、侍女は不思議そうに首を傾げた。
「男性が後宮に入れないのはいつものことではありませんか」
「あ…っ…そうだったわね…」
慌てて取り繕うが他人の目にはどれほど不審に見えたか。
だが、ライファの不安はさらに膨れるだけだ。
しかし、フローは大丈夫と頷いた。
仕方なく侍女に導かれるまま、奥へと進んだ。
案内された部屋は、限りなく王室と言う言葉が似合った。
「それでは、ごゆっくりおやすみください」
侍女はそう言って下がった。
「…………」
いきなりこんな所に連れて来られて、どうしたらいいのか。
大きな硝子張りのドアを開けると、月はもう高くまで上がっていた。
ライファはそのままバルコニーに出た。
その時
「な…っ!!」
ブログ作りました。
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です。
日々つらづらとしています。
よかったらどうぞ。