四話
「ココか……」
リオとロンは老人が示した廃れた病院に来ていた。
「署長に連絡しなくてイイんですか?」
「あぁ、だって面倒臭い!!」
「あなたって人は……ι」
「気を引き締めろよ?オレも本気で行く。」
リオは黄色の包み紙を破り、飴を口に咥えた。
「モヒカン狐ヤローはオレが殺る。腹黒メガネは灰色の狐とでも遊んでろ。」
「はいはいι」
『モウ嗅ギツケテ来ヤガッタカ……』
ニールは1匹の狐の合図により、リオとロンが侵入して来たことを知った。
『コレジャ……アノヤロートノ契約モ関係ナイナ……♪』
ニールは涎を拭き、いつ侵入して来てもイイように臨戦態勢に入った。その時、大きな音を立てて扉が蹴破られた。
「ニグレで〜す!排除しに来ました〜♪」
『オ前ガナ!!! 』
扉が砕けた瞬間にニールはリオに飛び掛かった。
「残念……♪」
リオはそれが予測していたように躱した。
『グワッ……!!!?』
ニールは避けられただけと思っていたが、腹に痛烈な痛みが伴った。
「悪いな、あまりにも遅かったから腹に3発入れてやったよ。」
「す、スゴい……」
ロンもまた、目の前で起きた光景が見えなかった。呆然とするロンに灰色の狐が襲いかかった。
「腹黒メガネ!!!」
「分かってますよ!」
ロンは掌で狐の額を目掛けて振り切った。そして、今度はロンが狐の集団に飛び込んだ。
「まぁ、あの戦闘力なら1人で十分だろうな。」
リオはそう言い、倒れているニールを見下ろした。
『チビノクセニ見下ロスナヨ!!!』
「そのチビに倒されたのはドコのどいつだよ?」
リオもまた、ニールに飛び込み、右の膝蹴りを入れた。そしてその勢いのまま、左足で蹴り飛ばした。
『(ナンダ……コノ異様ナ速サト強サ!!!?)』
「もう終わりか?」
『オ前ハ何者ダ……?』
「言ったろ?ニグレだ、って!」
『人間ジャコノ強サハアリエナイ!………同類、カ?』
その言葉に一瞬リオの動きが止まった。ニールはその瞬間を逃さずに、隠れていた狐に指示し、足を噛み付かせた。
「グッ!!!」
リオは噛み付いた狐を振り払い、回し蹴りを入れた。
『ナ〜ンダ……同類ダッタノカ。』
ニールは右手の大砲をリオに向けた。
『喰ラエ……星降ル程ノ血雨《逝きやコンコン、憐れやコンコン》』
大砲から光が放たれ、その光からおびただしい程の灰色の狐がリオに向かって飛び掛かった。
『同類ヲ殺スノモイイナ!』
「リオッ!!!」
ロンは半数以上の狐を煙にしていたが、リオの異常に気が付いた。
「………ぇよ。」
『ア?』
「違ぇって言ってんだよ!!!」
リオは飴を噛み砕いた。するとリオの髪の毛が逆立ち、向かってくる狐を全て躱した。
『エ……!!?』
「遅い。」
そしてそのままニールとの距離を詰め寄り、大砲と靭帯の付け根に拳を入れた。ブチリと鈍い音が響き、ニールは顔を歪めた。
『コノクソガキガッ!!!?』
ニールは左の獣のような手でリオの頭を掴もうとしたが、また避けられてしまった。
「甘ェよ!!!飴玉並にな!」
リオはニールの指を全てへし折り、咥えている飴がなくなった残りの棒を吐き捨てた。そして、赤い包み紙の棒付き飴玉を口に咥えた。
「さぁ……甘い甘い時間《Candy Time》の始まりだッ!!!」
リオの髪の毛は赤みがかり、もう一度ニールの大砲と靭帯の付け根に拳を入れた。
『グギャァッ!!!』
ニールはさっきまでの痛がり方とは違い、一歩退いた。
『ア……熱イ!!!?燃エル!!!』
大きな目を見開き、リオに殴られた部分を見た。
『ヤ、火傷……?』
「正解──“今の”オレは良く燃えるぜ。味わいな──!!!」
拳が届かない距離にいるニールに向かって、リオはタメの姿勢に入った。
『(コノ距離ジャ届カナイ。マタアノスピードデ突ッ込ンデ来ルニ違イナイ。)』
ニールもまた、いつでも反応出来るように臨戦態勢に入った。
「林檎の味《地獄の劫火》!!!」
しかし、ニールは一歩も動くことが出来ずに、リオの拳から噴き出した炎に一瞬にして飲み込まれた。そして徐々に皮膚が焼けていった。
『クソ……ガ……キ……ガッ!!!?』
ニールは最後の声を振り絞り、炎の中で黒焦げになり、そして灰となって消え去った。
「まるで──焼き林檎だな。」
リオは「ペッ」と棒を捨てた。そして「腹黒メガネは──?」と辺りを見渡した。
「こっちも終わってますよ。」
ロンは軽く怪我をしているが、全ての狐を処理しており、余裕な感じで地べたに座っていた。
「ふ〜ん。」
「それよりもあれは何ですか?」
「仕方ないな。お前にも教えてやるよ……。」
「──ッ!!!?」
リオが淡々と話をし、核心になるにつれロンの瞳孔が開いていた。
‡
「ロン君達、遅いな〜。」
エリザは退屈なようで、ベッドから窓を眺め ていた。
「そうね。エリザみたいに怪我でもしなきゃイイけど♪」
署長は皮肉を言いながら溜め息を吐いた。
「………ι」
エリザは苦笑いしか出来なかった。
‡
「そんな……」
「あまり人には言うなよ。」
リオが話し終わると、携帯が振動した。
「もしもし。」
『ワシじゃ。』
先程の老人からだった。
『ニールはいたかの?』
「あぁ。たった今、排除したよ。」
『そうか。』
「で?道化師について何か分かったか?」
『あぁ。しかも急いだ方がイイかもしれん。』
「あ?」
「チッ……!!!」
リオは電話を切り、紫色の飴玉を舐めた。
「どうしたんですか?」
「デカ乳が危ねぇ!!!」
「?」
「道化師の正体は……!!!」
‡
「あららぁ〜♪欲張るからよ……」
「?」
エリザは署長の独り言に困惑していた。
「趣味じゃないけど、私がヤッてあげるわ……♪」
そう言い終わると、急にエリザの喉に手を伸ばした。
「え……!!!?」
‡
「道化師の正体は………署長だ!!!」
「まさか!!!?」
「今日の日付が書かれたボトルの3本が示しているのは、オレと腹黒メガネ、そしてデカ乳の3人だ!」
説明している内にリオの身体が黒くなっていった。
「腹黒メガネ、オレの身体に触れろ。」
「で、でも……」
「恐れるな!デカ乳を救いに行くぞ。」
「……はい!!」
ロンはリオの肩に触れた。
‡
「しょ……署長……!!?」
エリザは喉元にある手の異様さに気が付いた。
「ふふふ ……♪」
署長の手だけいつの間にか黒く、そして鋭い爪が生えていた。
『ゴメンネェ──♪』
そして徐々に身体が変貌していき、顔が白黒の仮面を被ったような姿になっていった。その姿はまるでピエロのように。
「た……助け……」
『キレイナ顔ダケ私ノコレクション二入レテアゲルワ♪』
署長がエリザの喉に鋭く尖った爪を刺そうとした瞬間
「──コレクションもなしだ!!!」
エリザの影からリオとロンが飛び出してきた。リオは署長の手首を掴み、エリザを解放した。
『リオォォオオ♪待ッテタワヨ……!』




