二話
「そして更に4日後、男性が同じように心臓を貫かれ、右腕、左足を切断されていました。その日は別の場所で、今度は女性が獣のような牙で死んでいるのを発見されました。この事件について大きな特徴は、女性は噛まれて殺されているのに対し、男性はできるだけ傷付けないように殺されている点です。さらに男性は死後、目的は分かりませんが、その肉体の一部を切断し、現場には残っていない……という点がこの事件のグレゴリを排除するヒントだと思われます。」
「なるほど。で、陰気メガネ、お前の推測は?」
ロンは「グッ」と言いながら
「ボクの見解では、リオの言った通り、2体以上のグレゴリが関与していると思います。そして昨夜、こちらにいるデカち……い、いや、エリザが複数いた狐のグレゴリに襲われています。そのことから女性を噛み殺しているのはその狐のグレゴリ、そして複数いることから集団のボスがいることも推測されます。そのボスがライフルなような物を所持し、男性を殺していると思われます。そして男性の遺体を切断し、現場に残されていないことから人体収集家の可能性もあります。」
「うむ。まぁ、合格点だ」
リオは飴を食べ終え、新たにもう1本出した。
「今回の事件については、こんなもんだな。で、大体の目星はついているのか?」
「はい。」
エリザが新たに写真を取り出し、リオに見せた。
「ほぅ。」
リオはエリザの谷間を見ながらうなずいた。
「きゃっ///ったくこのエロガキ……ι」
エリザは胸を腕で隠しながら
「恐らく何らかの形でこの写真の男が関与していると思われます。名前はニール・ロック、酒屋の店員です。昨日単独で尾行していると急に姿を消し、狐のグレゴリに囲まれたので間違いありません。」
「なるほどね。それで、か。それじゃ、行こうか。」
リオは「よっ!」と立ち上がった。
「署長、コイツ等連れて行くけど?」
「どうぞどうぞ♪むしろ私を連れてって〜///」
リオはそれを無視し、「ところで陰気メガネとデカ乳は戦闘は出来んのか?」と飴でそれぞれを指した。
「もちろん!」
「これでもニグレよ!」
と強気で返事した。
「でもエリザちゃん、昨日殺られそうじゃなかった?ι」
「うるさいわね!あの時は武器がなかったからよ!」
ロンは「はいはい」と言いながらエリザ が蹴ろうとするのを両手を挙げてなだめた。
「んじゃ、乗り込むか。」
リオは八重歯を見せながら笑い、飴を噛み砕いた。
‡
「イイか?グレゴリは普段は人間に化けながら生活している。そして今回は複数犯だ、気を抜くなよ。」
「ところで、こんな小さな身体のリオも戦闘は出来るんですか?」
店の前でロンは再びリオを挑発し出した。
「お前は陰気メガネから腹黒メガネに変更な。まぁ、冷静に考えて出来なかったらお前達の上司にはなれんだろ?」
リオは嫌味ったらしくロンに反撃した。
「バカばっかりねι」
「うるさい、デカ乳!取り敢えず入るぞ。」
リオは店の扉を勢いよく蹴り飛ばした。
「あの男か。」
リオはエリザに確認しながらモヒカンの男性を睨み付けた。
「えぇ。」
「まだ開店前ですよ!!?」
店のオーナーは慌てながらリオ達を止めた。
「ニグレだ。あのモヒカン男に用がある。邪魔するなら殺すぞ?」
「どちらが悪者か分かりませんよι」
ロンは呆れながらニールに近付いた。
「来るな!」
ニールは眉間にシワを寄せ、大きく口を開けた。そして次第に鋭い牙が生え出した。
「へぇ〜やっぱりグレゴリだったか。」
リオは腰から緑色の袋に包まれた棒付きの飴玉を舐め、「あ、言っとくけど、よっぽどじゃない限り手は出さんぞ?」
「そのつもりよ!!昨日の借り、返させてもらうわよ!!!」
エリザは太ももからナイフを取り出し、ニールに向かって一直線に投げた。
『アノ女カ!!!』
ニールはみるみる内に人間より一回り大きな狐に変貌していった。その姿は2足歩行で、両手の自由が利き、右手には大きな大砲のような形をしていた。そして向かってくるナイフを払い除けた。
「うわぁ!!!化け物!!?」
店のオーナーは腰を抜かして倒れた。
『邪魔スル奴ハ殺ス!!!』
ニールはそう吠えると後ろから10体の灰色の狐が現われた。
『マズハ女カラ!!!』
ニールが指揮を取り、3体の狐がエリザに向かって飛び付いた。
「昨日とは違うって言ったでしょ?」
エリザはしゃがみ込み、飛び込んできた3体の狐の腹に冷静に、かつ適格にナイフを飛ばした。そして刺さったナイフの柄に向かって蹴りを繰り出し、狐の腹を貫通させた。
『グギャ!!!?』
悲鳴にも似た声を挙げ、3体の狐は煙のように消えた。
『グッ!!!』
ニ ールは今度は一気に5体の狐に指示し、もう一度エリザに飛び掛からせた。
「ボクの相手もしてくれないか?」
ロンは眼鏡を外し、先頭で飛び掛かってきた狐の顎に右の掌で思いっ切り突いた。次に飛び込んできた狐を左膝で、その反動を使って、3体目の狐に回し蹴りを、4体目には裏拳で、最後の狐には再び掌で狐の顎を振り抜き、一瞬で煙のように消えていった。その華麗な動きによってロンの三つ編みはしなやかに揺れていた。
「ふ〜……!!!」
一息つき、ロンは眼鏡をかけた。
「人間、ナメるなよ?」
『畜生ッ!!!ナラアノガキダケデモ!!!』
ニールは残り2体の狐と共に突っ込んだ。
「何だ?………オレに来るのかよ。」
リオは掌を向かってくるニール達にかざした。
「まぁ、それぞれの実力も分かったし、イイか。」
『甘イナ!!!』
ニールは何かあると察知し、先に2体の狐を突っ込ませた。
『(攻撃シタ瞬間ニ殺シテヤル!!!)』
「あぁ、悪い……そのまま飛べよ。」
その声と同時にリオの掌から突風が吹き荒れた。
『何ィ!!!?』
2体の狐は煙と消えたが、ニールは大砲のような手で全体を隠し、耐え抜いた。
「へぇ。」
リオは素早く移動し、ニールの頭上へと飛んだ。
『空中ジャァ避ケキレネェヨナ?』
ニールは頭上にいるリオに大砲を向けた。
『喰ライヤガレ!!!』
大砲は光を帯び、上空に向けて放たれた。その威力は凄まじく、天井に大きな穴が開いていた。
「「リオ!!!?」」
「発射までのタメが長いな。」
リオはニールの懐に潜り込んでいた。
『クソ〜!!!?』
リ オは思いっ切り拳を握り締め、脇腹に放り込んだ。その威力でニールは入り口の方まで飛んでいった。
「しまった!」
エリザは店のオーナーが危ないと走り出した。
「止まれ!!!デカ乳!!!」
リオは大きな声を挙げた。
「──え?」
エリザが止まろうとした瞬間、店のオーナーはニヤリと笑い、エリザの太ももに噛み付いた。
「アッ!!!?」
エリザは痛みに耐えながら、ナイフを目に差した。
『グギャ〜!!!?』
既にオーナーも狐へと変貌しており、目を押さえていた。
「エリザちゃん!」
ロンはまだ煙になっていない狐に蹴りを入れ、とどめを刺した。
「チッ……肝心のモヒカン狐には逃げられたか。」
リオも入り口から外へ出て、辺りを伺うももうそこには既に誰もいなかった。
「大丈夫?エリザちゃん」
ロンはエリザに肩を貸し、支えになっていた。
「ありがとう。またミスしちゃった」
苦笑いしながら、顔をしかめていた。
「処置が必要だ。取り敢えず戻るぞ。」
「「はい。」」
‡
『クソ……クソクソクソクソクソ!!!!!!』
ニールはリオに殴られた脇腹を押さえながら、裏路地で喚いていた。
『クソガキメ……何テ威力ナンダ。』
‡
署長も連絡を聞き、医療室へ駆け込んだ。
「エリザは!!?」
「骨は大丈夫ですが、ヒドい怪我です。」
ロンはエリザの怪我の具合を説明した。
「すいません。オレの監督責任です。」
珍しく、リオは謙虚な姿勢だった。
「大丈夫よ。私なら平気!」
エリザは上半身を起こし、笑顔を見せた。
「あぁ。悪いな。」
リオは腑抜けた返事で、その部屋から出ていった。
「何よ!デカ乳くらい言いなさいよ……。」
「そうだね……。」
ロンも言葉が見つからず部屋を出ていった。
「みんな、アンタが心配なのよ。この罪な女ね。食べちゃうわよ?」
「いや、止めてくださいι」
エリザは苦笑いするしかなかった。
「リオ!」
ロンは後ろ姿のリオに声を掛けた。
「どうした〜、腹黒メガネ。」
「捜査、するんでしょ?」
「何だ、人の心まで読む趣味あんのか?」
「ありませんよ。ボクも油断してました。自分が情けない!もう誰も目の前で傷付かせないと誓った筈なのに!!」
「……なら、行くぞ、腹黒メガネ!」
「はい。」




