表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

04、三年ふたり

昼間の厚さも和らいで、時折髪をゆらす風が心地よく感じられるようになった。

人通りの少ない夕方の道を八木とふたり、自転車を押しながら歩く。

蝉の声をBGMに浮かんでくるのはついさっき終わったばかりのパーティーのこと。


ドアを開けたらいきなりクラッカーがなって、お菓子やジュースもいっぱいあって、部室は綺麗に飾られていて。

よく友達に鈍いと言われる私でも、それがどういう意味を持つかなんてすぐに気づいた。


「楽しかったなー・・・。」

「ね。まさかあんなことしてくれるなんて思ってなかった。」

「いっぱい笑ったなー。」

「かおるは結構泣いてたけどね。」

「八木だって最後はちょっと泣いたじゃん!」

「あれはしょうがない。」

「ほら!それに私のは嬉し泣きだからいいの!」

泣きすぎて重い瞼を隠しながら、そんな屁理屈を言う。

まあ、どんなに強がっても八木にはお見通しなんだろうけど。


「終わっちゃうんだね。」

「でもまた遊び行こうぜ。」

「うん・・・。」

「・・・どうした?」

「いや、八木と一緒に帰るのも今日が最後なんだなー、って。」


一年の頃から私たちはずっと一緒に帰っている。

それは、家が近いからじゃなくて、ただ八木が私を家まで送ってくれているからなんだけど。

部活がなくなれば、必然的に家に帰る時間は早くなる。送ってもらう必要はない。

ほんとは八木も、こんなめんどくさいことしなくてよかったのに。

断れなくてずるずる続いていたけれど、それももう終わる。

・・・それはそれで、なんだかさみしい。


「別に今日が最後なんて言ってないけど?」

「え?でももう送ってもらわなくても平気じゃん?」

「俺がしたいからしてるだけだよ。」

「そんな、付き合ってるわけでもないのに。悪いよ。」


そう言ったとたん、八木が固まった。


「え、ちょっと。八木?おーい。」


すぐに意識は戻ってきたみたいだけど、なんか一人でぶつぶつ言ってて・・・怖いぞ。

「八木、ほんと大丈夫?」

「いや・・・、うん。」

なんか、すごいへこんでる。なぜだ。私なにかしたっけ・・・?


ひとりでおろおろしていると、勢いよく顔を上げた八木に見つめられる。

「八木・・・?」

「ね、かおる。俺さ、ただ部活が一緒だったからかおるを送ってたわけじゃないよ。」

「?・・・うん。」

「わかってないよね。俺はそんな理由で今までずっとかおるといたんじゃない。」

「えー・・・?」

「ね、俺は、俺らはいつまでこの距離のままでいればいいの?」

「八木?」

「かおる。」

「ん?」


「俺さ、ずっとかおるのこと好きだったんだけど。」



「・・・・・・・・・はぁ!?」






――――――古今東西娯楽研究同好会。

今日もきっと、みんなで楽しく活動中。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ