04、三年ふたり
昼間の厚さも和らいで、時折髪をゆらす風が心地よく感じられるようになった。
人通りの少ない夕方の道を八木とふたり、自転車を押しながら歩く。
蝉の声をBGMに浮かんでくるのはついさっき終わったばかりのパーティーのこと。
ドアを開けたらいきなりクラッカーがなって、お菓子やジュースもいっぱいあって、部室は綺麗に飾られていて。
よく友達に鈍いと言われる私でも、それがどういう意味を持つかなんてすぐに気づいた。
「楽しかったなー・・・。」
「ね。まさかあんなことしてくれるなんて思ってなかった。」
「いっぱい笑ったなー。」
「かおるは結構泣いてたけどね。」
「八木だって最後はちょっと泣いたじゃん!」
「あれはしょうがない。」
「ほら!それに私のは嬉し泣きだからいいの!」
泣きすぎて重い瞼を隠しながら、そんな屁理屈を言う。
まあ、どんなに強がっても八木にはお見通しなんだろうけど。
「終わっちゃうんだね。」
「でもまた遊び行こうぜ。」
「うん・・・。」
「・・・どうした?」
「いや、八木と一緒に帰るのも今日が最後なんだなー、って。」
一年の頃から私たちはずっと一緒に帰っている。
それは、家が近いからじゃなくて、ただ八木が私を家まで送ってくれているからなんだけど。
部活がなくなれば、必然的に家に帰る時間は早くなる。送ってもらう必要はない。
ほんとは八木も、こんなめんどくさいことしなくてよかったのに。
断れなくてずるずる続いていたけれど、それももう終わる。
・・・それはそれで、なんだかさみしい。
「別に今日が最後なんて言ってないけど?」
「え?でももう送ってもらわなくても平気じゃん?」
「俺がしたいからしてるだけだよ。」
「そんな、付き合ってるわけでもないのに。悪いよ。」
そう言ったとたん、八木が固まった。
「え、ちょっと。八木?おーい。」
すぐに意識は戻ってきたみたいだけど、なんか一人でぶつぶつ言ってて・・・怖いぞ。
「八木、ほんと大丈夫?」
「いや・・・、うん。」
なんか、すごいへこんでる。なぜだ。私なにかしたっけ・・・?
ひとりでおろおろしていると、勢いよく顔を上げた八木に見つめられる。
「八木・・・?」
「ね、かおる。俺さ、ただ部活が一緒だったからかおるを送ってたわけじゃないよ。」
「?・・・うん。」
「わかってないよね。俺はそんな理由で今までずっとかおるといたんじゃない。」
「えー・・・?」
「ね、俺は、俺らはいつまでこの距離のままでいればいいの?」
「八木?」
「かおる。」
「ん?」
「俺さ、ずっとかおるのこと好きだったんだけど。」
「・・・・・・・・・はぁ!?」
――――――古今東西娯楽研究同好会。
今日もきっと、みんなで楽しく活動中。