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当然、3月14日に向けて順平が備えるべきものは何も無い。
しかし順平は、先月チョコを貰った友人の一人、慎一に付き合わされ、デパートの中を巡っていた。
「なあ順平、食い物よりストラップとかの方がいいのかな?」
「知らんわ。勝手にしてくれ」
「食い物ならクッキーとかビスケットだよな。ストラップだと……」
とか何とか独り言を唱えながら慎一は歩く。
「俺、ここに用無いんだけど」
「いいじゃん、彼女がいるわけでもないんだし。部活の無い日は暇だからオナってばっかだろ?」
「声がでかいんだよ、馬鹿」順平は慎一の背中を叩いた。
しかし、暇を見つけては自慰に耽っている現状は否めない。
ちなみに、常に冗談ばかり言う慎一の話だから信憑性に乏しいが、慎一はもう童貞を卒業したらしい。
相手が、そのチョコを渡した女子だ。
「セックス、めちゃくちゃ気持ちよかったぜ」
「だから何なんだよ」
順平は溜め息を漏らした。