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そして、話は順平が一年生の時のバレンタインデーに遡る。
ここ一週間、順平は明らかに意識して赤いマフラーを着けて登校している。
似合っているとは言い難いが、何もしないよりはいいだろうと思い、今日という日に備えていた。
まずゆっくり下駄箱を開ける。
ふん、期待なんてしてない。
大体、下駄箱にチョコレートなんて古いだろ。
そうだ、古すぎる。
慰めるように言い聞かせて靴を履き替えた。
その日はとにかく男子が騒々しい。
そして、騒いでる途中に女子をちらりと見る。
自分のアピールが伝わっているかどうかの確認だ。
順平も便乗し、とりあえずはしゃいでみる。
しかし、いくら待ってもチョコは来ない。
そのまま一日が流れ去り、部室では順平の友人たちがチョコを自慢気に見せびらかしている。
決してナイーブな性格ではないものの心が痛む。
ひょっとして、俺はモテないのか……?
この頃から順平はそう思い始める。