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神田順平、高校二年生。
サッカー部所属で、彼女はいない。
いないと言うより、一歩踏み出せずにいた。
在りし日に、順平がずっと想いを寄せる女子がいた。
競争率が抜群に高い女子で、いわゆる恋敵もたくさんいた。
残念ながらその女子の気は、順平の恋敵たちの一人に向いていた。
それでも順平は悪友にけしかけられ、ある時、二人きり、誰もいない体育館の陰で告白をした。
「お、俺と、付き合ってください……!」
呂律が上手く回らず辿々しくもストレートなセリフだ。
しかし、その五秒後。
「ごめんなさい。順平くんは優しくていい友達だけど、でも恋愛対象には入ってないんだ」
ごめんなさい。
順平はフラれたことを悟った。
それも、順平くんはいい友達、などとベタなセリフで。
ショックで仕方がなかった。
誰よりも優しく接してきたはずなのに、ダメだった。
その女子は順平とは違う高校に進学し、しばらくして新しい彼氏が出来たことを知った。
たがそれは、順平が知る恋敵の誰でもなかった。
順平は女の怖さを知った。
以来、女子と喋る時は妙にぎこちなくなってしまう。