のあちゃんの洗礼
意識がまだ薄い、寝起きみたいだけど、すこしづつ頭が冴えていく。
最期の記憶は、深夜のコンビニ帰り。新作のアニメをリアタイするために急いでいた交差点。
信号無視のトラック
そこからの暗転_____
オタクとしては最悪の結末。せめて録画予約だけは完璧にしておけばよかった、なんて非合理的な後悔が脳裏をよぎる。
「あらぁ……ふふ、やっと目が覚めたのかしらぁ? よしよし、いい子ねぇ、リユちゃん」
意識が浮上した瞬間、感じたのは柔らかく、甘い香りだった。 目を開けると、そこには圧倒的な「母性」と、どこか退廃的を放つ美な「色気」女が、私を膝枕で見下ろしていた。
「……えっと、どちら様で?」 「貴女を導くお母さん……じゃなかった、最上位女神のノアジーよぉ。ふふ、貴女、トラックに撥ねられて死んじゃったの。可哀想にねぇ」
ノアジーと名乗った女神は、私の頬を指先で妖艶になぞる。その瞳は紫色の深淵のように美しく、吸い込まれそうな力があった。
「でも安心してぇ、リユちゃん。貴女のその高い知能、私のお仕事に貸してほしいのぉ。……この星、アステリズムを管理してる下位の神様がね、ちょっと悪い子になっちゃってぇ。星の魂を全部収穫して、自分だけ高次元へ逃げようとしてるの。それを、貴女に『解体』してほしいのよぉ♡」
えぇ、いやぁ、急すぎない?
「……引き受ければ、私はどうなります?」 「うふふ、話が早くて助かるわぁ。えっとね、転生…って形になるわね。転生先は、ごめんなさいけどランダムになるわ。魔物とかになるかもだけど、いつかは人形になれるから大丈夫!、ビジュアルもね、私の趣味で最高に美しくしておいたわぁ。……白銀の髪に、紫の瞳。モデルさんみたいな身体。あなたの趣味も反映してるし。楽しみにしててねぇ」
彼女は私の額に、慈しむような、それでいて熱いキスを落とした。
「それじゃあ、いってらっしゃいリユちゃん。……あ、そういえばぁ、転生先の座標をちょっと間違えちゃったかもしれないけどぉ……まあ、貴女なら大丈夫よねぇ? てへ♡」
「……は? ちょっと、待っ――」
女神の抜けた声を最後に、私の視界は白から濁った暗闇へと反転した。




