第二十二話
※執筆にAIツールを使用しています。
※カクヨム様にも投稿しました。
『ホホーウ、能力を見せるのじゃ!』
突如として、大樹の寝床へと鋭い叫び声と共に突進してきたのは、白いミミズクの精霊、サラスだ。
その突然の訪問に、ドリュアは深いため息をつき、静かに首を振る。
『サラス、あなたはいつも落ち着きがありませんね。』
ドリュアの小言に、サラスは羽根の肩をがっくりと落とす。
『ケモノは似た能力ばかりなのじゃ、つまらんのじゃ。』
不満げにぼやくサラスに、ユユが自分の成長をアピールするように告げる。
『サラス、ユユむっつだよ!』
『ホー、じゃが、能力は生えておらんのじゃ、がっかりじゃ』
『ユユがっかりちがう!』
そのやり取りを見ていた俺は、焦る気持ちを抑えきれず、割り込むように問いかけた。
「アオン(俺は? 俺の能力は?)」
『ホウ! 生えておるのじゃ!』
「ガオン!(マジ!)」
『ホウホウ、回避が生えておるのじゃ』
『モコオずるい』
俺の喜びをよそに、ユユが悔しそうに口を尖らせた。
俺の歓喜とは対照的に、サラスは怪訝な顔で俺に詰め寄った。
『ホウ、能力が生えてくるのが早いのじゃ。あたしの見立てじゃ、あと半年は掛かると思ってたのじゃ。
何があったのじゃ? 何か切っ掛けがあったはずじゃ! モコオなんじゃ! 隠し立てせず答えるのじゃ!!』
サラスは俺の鼻先まで接近し、その鋭い視線で問い詰める。
その迫力に、俺は思わず身を縮めた。
「ギャンギャン!(俺の努力の結果だろ! 毎日死に物狂いで訓練したんだよ!)」
俺は必死に反論するが、サラスは納得しない。
『ホウ、どんな訓練をしたんじゃ?』
「アウゥン……(ユユの噛みつきから華麗に回避したり、俺の取って置きの干し果物をユユから守るために大胆に回避したり……だよ!!)」
ユユが誇らしげに胸を張る。
『ユユがかつけどな!』
『ホォーウ! 馬鹿者、そんなことで能力がポイポイ生えるわけ無いのじゃ!
何をやったか思い出すのじゃ! 駄目ワンコ』
「ワンワン!(ワンコじゃねーよ! こんなに立派になった狼はなかなか居ないだろ!)」
『ユユもおおきくなる! まけない!』
サラスは、もはや怒りを通り越して苛立ちを隠せない様子だった。
『ホーウ! そんな事どうでもよいのじゃ! 能力が生えた訳を吐くのじゃ!』
「アオーン(いや、マジで訓練したんだよ、ベビーホーンラビット狩ったり……)」
俺が必死に訓練の成果だと訴える中、ドリュアが優雅にカイゼル髭を整えながら、まるで世間話でもするかのように口を開いた。
『ホーンラビットと命がけの戦闘が大きなきっかけに成ったのではないですか?』
その言葉が響いた瞬間、俺の頭の中の霧が晴れるような感覚がした。
「がう!(それか!)」
まさに、それだ!
あの死闘の最中、俺は確かに何度も死を覚悟し、必死に回避しようともがいた。
あの極限状態こそが、能力開花の引き金になったのかもしれない。
『ホーウ、ホーンラビットを倒したのじゃな、仔犬にしては大金星なのじゃ。なるほどのう……』
サラスは、ドリュアの言葉にハッと目を見開くと、やがて何かを納得したように、ゆっくりと考え込み始めた。
彼の瞳が、いつになく真剣な光を宿している。
サラスは、何やらブツブツと不穏な独り言を呟き始めた。
「ホーそれなら……」
「ホホ―これは面白い……」
その言葉の端々から、俺に良くないことが起こる予感がひしひしと伝わってくる。
「アオォン(サラス、何か恐ろしい事考えてない?)」
俺の警戒を察したかのように、サラスは邪悪な笑みを浮かべる。
『ホー、勘のいいガキは嫌いじゃよ……ホホホ……』
その笑い声は、まさに悪だくみを企む者のそれだった。
「ガウガウガウゥ(これ駄目なやつ!ユユ逃げよう、変な実験に使われちまう!!)」
俺は全速力で逃げ出そうとするが、サラスの行動は素早かった。
『ホーウ!黙って言うことを聞くのじゃ!ウォーターボール!』
「キャン(痛い!マジ痛いって!)」
放たれたウォーターボールが、俺の体に容赦なくぶつかる。
痛みに悶えながら、俺はサラスの魔法に追い立てられるように、大樹の外へと飛び出した。
ユユは、俺が逃げ惑う姿を面白がっているのか、きゃっきゃと笑いながら付いてくる。
『モコオひだり!つぎもひだり、つぎは、あっち、スプーンもつほう!』
ユユの声が、まるでゲームマスターのようだ。
俺は言われるがままに回避行動を取るが、疲労は蓄積していく。
「ユユ、サラスを止めて!もう無理!」
俺は最後の望みを託して、ユユに助けを求めた。
しかし、ユユは俺の言葉に応えるのではなく、俺を捕まえる側に回った。
『モコオつかまえた!』
ユユの小さな腕が、俺の体をしっかりと抱き締める。
俺は観念し、その場でへたり込んだ。
サラスは満足げな声を上げると、どこかへと飛び去っていった。
『ホー、ユユよモコオを確保しておくのじゃ』
俺の脳裏には、嫌な予感しか浮かばなかった。
ユユに捕獲された俺は、残雪がまだ残る地面の上で、しばらくユユの遊びに付き合っていた。
そんな束の間の穏やかな時間は、唐突に終わりを告げる。
俺の嗅覚が、けたたましいほど強く危険を感知したのだ。
同時に、サラスからの念話が脳に直接語りかけてきた。
『ホウ!モコオ戦闘じゃ!油断するでないのじゃ!』
「ワンワン!(な!まじか!!)」
俺は驚愕に目を見開いた。
やはり、あのミミズク、碌なことを考えていなかったのだ!
すると、ドリュアの咎めるような声が聞こえた。
『サラス貴女は無茶な事を、ユユが巻き込まれたら危険ではないですか』
しかし、ユユは怯むことなく、小さな拳を握りしめる。
『ユユまけん!』
ドリュアは冷静に、ユユに指示を出した。
『ユユ危ないので下がりましょう。モコオの訓練の邪魔になります。』
俺は、迫りくる危機に、ドリュアへ向けて必死に叫んだ。
「アオン!(ドリュア待って!ヤバいやつ来た!!)」
その言葉が終わるや否や、木々の陰から勢いよく飛び出してきたのは、凶暴なホーンラビットだった。
その目は怯えきっており、サラスの魔法によって無理やりこちらへ誘導されてきたのは明らかだった。
俺の意思とは裏腹に、望まぬ戦闘が幕を開けた。
季節は春とは名ばかりで、北の森の奥深くは相変わらず銀世界だ。
足元に積もった雪は深く、前回の戦訓を活かし足を取られないよう細心の注意を払う。
「ガウガウ!(サラスの馬鹿ミミズク!当然助けてくれるんだろうな!)」
俺は、この事態を引き起こした張本人であるサラスに、半ば怒り半ば期待を込めて訴えかけた。
しかし返ってきたのは、彼の面白がるような声だった。
『ホウホーウ、馬鹿とはなんじゃ、助けてやらんぞ』
俺はすぐにドリュアに視線を向ける。頼れるのは彼だけだ。
「ガァーウ!(ドリュアお願い!信頼できるのはドリュアだけだ!!)」
だがドリュアは、冷静にそして毅然とした態度で告げた。
『私はユユを守ります』
ユユはそんな状況にも臆することなく、元気いっぱいに言い放つ。
『ユユまけん!』
サラスは、そんな俺たちのやり取りを面白がるように、高みの見物を決め込む。
『ホウホウ、安心するのじゃ、危なくなったら助けてやるのじゃ』
「アオン!(ほんとに頼むぞ!ホーンラビットの角が怖いんだよ!)」
俺は半ばヤケクソになりながら叫ぶ。
その切羽詰まった状況の中、ユユからの念話が俺の脳裏に直接響き渡った。
『モコオ、スプーンもつほうににげて!』
その簡潔でありながら、驚くほど的確な指示に俺は驚きつつも、それに従おうと体を動かした。
ユユからの意外な一言が、俺の思考を切り替える。
たった一冬で得た経験と、新たな回避能力、そして何よりもユユとの絆が紡いだ連携が、この望まぬ戦いを、ただの逃走で終わらせはしない。
冬の名残が色濃い北の森で、俺は再びホーンラビットと対峙する。
ユユの声が、俺の背中を押してくれる。
俺とユユ、新たな共闘の始まりとなる予感がした。
馬鹿ミミズクは、あとで絶対に懲らしめると心に強く誓って――戦闘が始まった。
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