第二十一話
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ドリュアが言うには、どうやら冬は終わりを告げ、季節は春を迎えたらしい。
しかし、俺の目に見える景色は未だ変わることなく白銀の世界だった。
北に位置するこの森は、春の訪れなど歯牙にもかけず、冷たい空気が支配し、雪は深々と積もったままだ。
日差しはいくぶん柔らかになったとはいえ、その温もりは雪を溶かすにはあまりにも頼りなく、相変わらず身を切るような寒さが続く。
そんな、春という言葉が虚しく響くような、肌寒い朝が訪れていた。
森は、相も変わらず真っ白な雪景色に覆われている。
しかし、この冷たい景色の中で、俺の体は着実に変化を遂げていた。
初めてユユと出会った頃の俺は、彼女の小さな腕の中にすっぽり収まるほどの大きさだったが、今やその面影はない。
俺の体が目覚ましい成長を遂げた結果、今ではユユが両腕を使って、やっと抱えられるくらいになっている。
この勢いなら、春の季節が終わりを告げる頃には、俺の方がユユよりも体格で上回っている可能性も十分にある。
そんな俺の成長を、ユユはどこか羨ましげな瞳でじっと見つめていた。
まるで、自分も早く大きくなりたい、そう願っているかのように。
体の成長は順調そのもの。
だが、能力の進化は、その勢いに追いつけていない現状があった。
俺が頼りとする嗅覚無双も、魔獣の気配や、単体か群れかといった情報までは判別できるようになった。
しかし、肝心の群れの正確な構成までは読み取れない。
ある冬の日には、三匹の群れだと判断し、いざ蓋を開けてみれば四匹いて、危うく窮地に陥りかけたこともあった。
感情の嗅ぎ取りも、表層的な強い感情しか掴めず、その奥にある繊細な感情までは読み解けない。
そして、俺にとって最大の弱点である強烈な刺激臭。
イタチの最後っ屁で意識を失ったあの不名誉な思い出は、常に俺の脳裏に焼き付いている。
俺の身体強化能力について言えば、生後四、五ヶ月程度のこいぬ、いや、子狼としては、十分な筋力と体力を有しているとは思う。だが、比較対象がいないため、客観的な評価は難しい。
寒さ耐性に関しては、この北の森で生き抜く上で、まさしく命綱となっている。
しかし、その一方で、暑さ弱体という特性がどれほどのものなのかは、まだ実感がない。
いつか、暖かい場所へ行くことになった場合、この能力がどれほどの足枷となるのか、今は想像するしかないが、警戒は怠るべきではないだろう。
この春の到来によって、ユユは六歳になった。
彼女の正確な生まれは、誰にも分からない。
だが、ドリュアの話では、六年前の春に、この森でユユを見つけ出し、それ以来、ずっと彼の元で育ってきたのだという。
ユユにとって、この春という季節は、新しい命が始まり、成長を祝う大切な時期なのかもしれない。
俺は誕生日を迎えたユユのために、強敵ホーンラビットを命懸けで倒して手に入れた、
見事な白い毛皮をプレゼントとして用意した。
きっと彼女も気に入ってくれるだろうと、胸を躍らせていたのだが。
『まるにくさまとちがう!』
ユユのその一言は、俺の期待を粉々に砕いた。
俺が用意した毛皮は、雑にただの毛布代わりにされてる。
納得いかんガウガウ。
ユユのまるにくへの執着には呆れるばかりだが、それ以上に驚くべきは、サラスから聞いた彼女の能力だ。
ユユは生まれつき、感情共有・感覚共有・能力共有という、三つの規格外の力を持っているらしい。
まず、感情共有。
これは、自分の喜怒哀楽を相手に伝え、逆に相手の単純な感情を読み取ることができる能力だ。
俺の感情を嗅ぎ取る嗅覚とは相性が抜群で、だからこそ、初めて出会ったあの時、ユユは無理なく俺と心を通わせることができたのではないか、とサラスは推測している。
次に、感覚共有。
これは、嗅覚や視覚といった五感を共有できる能力だ。
ユユが俺の鋭い嗅覚を借りて獲物を探したり、俺がユユの優れた聴覚を共有して遠くの音を探ったりと、その応用範囲は広い。
そして、最も驚くべきは能力共有。
これは、相手の能力そのものを共有できるという、まさにチートじみた力だ。
ドリュアの念話を共有し、俺と意思疎通ができるようになったのも、この能力のおかげだという。
しかし、良いことばかりではない。俺の身体強化を共有して、ユユが無理して遊びすぎた日は、意識を失ってぶっ倒れ、ドリュアにこっぴどく叱られた。
無理な共有は、互いの体に多大な負担をかける。
特に幼い頃は、最悪の場合、命を落とす危険性すらあるそうだ。
さらに、信頼関係がなければ、共有者同士に不快感や嫌悪感を抱かせてしまうという側面もある。
サラスの話では、赤子だったユユが、この制御しきれない能力を無闇に使い、周囲に嫌悪感を与え、ばら撒き、それがユユが捨てられる原因になったのではないか、という。
ユユの共有能力は、確かに強力だが、決して万能なチート能力ではないのだ。
それと、ユユは能力を後発的に取得しやすい主人公体質らしく、すでに噛みつきや、念話といった新たな能力まで生え出してきている。
羨ましすぎる、ガウガウ!
ドリュアからは精霊族についての詳しい話も聞くことができた。
彼ら精霊族は、広大な自然界のあらゆる場所に存在しているらしい。
日本の神話で言うところの八百万の神のように、大樹の精霊がいたり、もしかしたら、本当にトイレにまでいるのかもしれない。
ただ、彼らは基本的に興味の対象が非常に限定的で、人間や亜人に自ら関わる精霊は、極めて稀なのだという。
俺も、この冬ずっと大樹の洞の寝床を借りていたが、大樹に宿る精霊を見たことは一度もなかった。
そんな精霊族の中でも、ひときわ異彩を放つ存在がドリュアだ。
彼は、なんとユユという赤子に興味を抱き、人間を育てるという行為にまで関心を持つようになった異例の精霊らしい。
今では、ユユの育ての親であり、教育係であり、完璧な執事となっている。
その容姿は、少年めいたショタが、片眼鏡のモノクルをかけ、立派な燕尾服を身につけている。
特に特徴的なのが、童顔の顔に似合わない、堂々たるカイゼル髭だ。
初めてその姿を見た時は、本人を前にして、思わず爆笑してしまったものだ。
そして、ドリュア以外に俺が接点を持った精霊族は、もう一人、サラスという精霊がいる。
こいつは、能力そのものの存在に異常なまでの執着を見せ、それを探求して世界を渡り歩くという、根っからの変わり者だ。
最近は、野生の動物や魔獣の能力研究に心血を注いでいるという。
容姿は白いミミズクだが、フクロウと間違えれば、烈火のごとく怒り出すので、その呼称には細心の注意が必要だ。
ちなみに、俺はまだ、ユユ以外の人間や亜人には一度も遭遇したことがない。
ユユはコウモリの亜人とのハーフだそうで、頭には可愛らしいコウモリのケモミミが生え、背中には空を飛ぶことはできないが、小さなコウモリの羽がちょこんと付いている。
尻尾はない。
普段は服の中に羽を隠しているため、フードを被り、ケモミミさえ見えなければ、見た目は普通の八重歯の可愛い子供と変わらない。
この世界で、亜人、ましてや亜人のハーフという存在が、一体どのように扱われているのか。
その実情は、まだ俺には全く分からない。
俺がこの世界で目を覚ましてから、まだたった一冬しか経験していない。
ドリュアに色々と教わってはいるものの、俺の知識は、まだまだ圧倒的に不足しているのだろう。
この春、俺はどんな経験を積み、何を学び、そしてどんな新しい縁に巡り会うことになるのだろう。
そんな胸いっぱいの期待が、まだ冬の息吹を残す北の森の、ひんやりとした空気の中に、確かな熱を帯びていく。
春という言葉が、ただの季節を指すだけでなく、可能性に満ちた未来を暗示しているかのような、始まりの一日だった。
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