第二話
至らない点も多いかと思いますが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
どうぞ、温かい目で見守っていただけると幸いです。
よろしくお願いいたします。
※執筆にAIツールを使用しています。
※カクヨム様にも投稿しました。
……うん、やっぱ俺、狼。うん、狼だ。
ふわふわもこもこで毛並みが良すぎるとか、そういうのは一度置いておこう。
手足短いし、しっぽもピコピコしてるけど、けど、狼だ。
たぶん狼。
狼に違いない!俺は気高き一匹狼!
「ワフワフワフン!キャオォーン!!!(狼王に!おれはなる!!!)」
エゾオオカミのレ〇ラパイセンを目指し、大きく成長できるはず!カモン!アシ〇パさん!!
今はまだ子犬、いや、子狼でもこもこで、どう見てもモフい、けど!まだ自分の顔を鏡で確認してないけど、きっと、キリリとした鋭い瞳、ピンと立ってる耳があり、鋭い牙が生えているはず、かっこいい狼、野生の王者!
……
………
「ワフッウゥ……(いや俺、日本人だろ……)」
……野生って……目覚めちゃダメだろ……一匹狼って……そりゃ、ぼっちだけどさ……人としての矜持を忘れちゃ何かが終わっちゃうよ、大事な何かが……
自分ツッコミが止まらない。
冷静になると、あまりにも現実味がない。
ひんやりとした雪に鼻先を埋めながら、ようやくその事実がじわじわと染みてくる。
記憶がない。
体はもふもふ。
でも、常識はある。
自分は“人間だった”という確信だけが変に強くある。
……俺、どうすんのこれ……
ふと立ち止まり、雪の上に座り込む。
人間の自分としては焦りと不安しかない。
言葉が話せない。
手は肉球がぷにぷに。
服もない。
文明ゼロ。
「ガウ……」
ぶるぶるっと頭を振って、鼻先にのっている雪を払う。
……いやいや、落ち込むのは後回しだ。
考えすぎると、どうにもダメだ。
不安が胸に広がって、息が詰まりそうになる。
でも、体は元気そのもの。
モフモフの毛に守られて寒くないし、足も力強くて、雪の上でも問題なく動ける。
この体、慣れたくないけど……生き延びるためには、慣れていくしかない。
「……ワフ。」
分かってる、分かってるんだ。
今ここで立ち止まって、この理不尽な状況を、記憶の欠落を、このモフい体を真剣に考察すべきだ。
それが人間としての俺の責務だ。
でも、この白い大地が、やけに魅力的に微笑んでいる。
足が、勝手に前へ向かおうとむず痒い。
抗えない。
……まずは生きる。
考えるのはそれからだな。
真っ白な雪の大地を一歩一歩ふみふみ歩いているだけで楽しい。
心躍るほど楽しい。
体が勝手にピョンピョン跳ねてしまう。
雪の上を走り回るのが楽しすぎる。
「ワッフゥゥゥ!!!」
……って、俺、何やってんだよ!
子犬的テンションと人間的羞恥心がせめぎ合う。
でも、ちょっと楽しい自分がいるのが悔しい。
無意識のうちにこの体が、好奇心の赴くままに動き出すのを止められない時がある。
人……どうやら、俺の中の“理性さん”は、“本能くん”との戦争に完敗したらしい。
せっかく冷静になって“人としての矜持が〜”とか考えてたのに、気づけばピョンピョン跳ねてる。
勝てる気がしない。
てかもう、完全に主導権握られてない?俺。
……あーもう、いっそ考えるのやめたら楽なんじゃ……いや、ダメだ、それは負けだ……けど、今は少しだけ、子狼のふりをしてやり過ごすのも……アリかも……いや、違う!……けど、楽しい……ッ!
子犬的衝動と日本人的危機回避意識が一致した瞬間、俺の前足は、自然と森の中へと向かっていた。
まずは生き残るための情報収集だ。
ということで、森の中を歩いてみる。
森の中は、静かだった。
けれど、決して“無音”じゃない。
風が葉を揺らす音。
雪が枝から落ちる音。
遠くで鳴く、鳥の声。
そして――何よりも、匂い。
「……スゥゥ……クンクン……」
鼻先をくいっと持ち上げ、深く息を吸い込む。
途端に、脳内が情報で満たされる。
……あっちのほう、腐った木の匂い。何かの巣?……こっちは水の匂い。
川があるかも。
……むむっ、あの石の影、獣のにおい。小動物?あれ、足跡もある。
「ワフ……」
すごい。
嗅覚すげぇ。
視界よりも、ずっと広くて、鮮明だ。
思考が自然と整理されていく。
この嗅覚は動物的な野生の本能ではなく、きっと……特別な力な気がする。
この嗅覚を頼りながらしばらく歩くと、ねずみっぽい動物が周囲を警戒するように走る姿を視界にとらえた。
しっぽがやたら長いのと、目が金色な以外はねずみ。
……たぶん魔力を持たない“動物”だろう。
普通の生き物ってやつ。
次に出くわしたのは、灰色の短い毛を纏ったウサギみたいなやつらが群れている。
目つきが悪くて、額にこぶのような突起物があり、なんかピリピリしてる空気をまとってる。
……うわ、なんだこいつら……え、魔物?これがモンスター的なやつか?
においを嗅いでみる。
ビリビリする匂い。
明らかに危険。
生き物のにおいじゃない。もっとこう……激辛カレーに腐った卵をトッピングしたような刺激臭。
……これは、駄目だ、一匹ならまだしも群れている、マジ駄目なやつだ。
さすがに好奇心を超えた危機本能が発動して、そっと引き返す。
よし、魔物のにおいは覚えた。
今後の参考になる。
そのあとも歩きながら情報収集。
気候:やっぱり寒い。でも俺の毛皮は無敵。むしろ快適。
方角:太陽の位置でたぶんあっちが南。
水源:雪を舐めれば水分補給は可能。味は……ちょっと獣臭いし生の草っぽいが舐めれないことはない。川などの水源を見つけておきたい。
食料:草食動物はいるが、狩りスキルゼロ。死体や骨も落ちてない。けど、人として落ちてる動物の死骸を食べるの、ちょっと、抵抗が……
森の危険度:魔物のにおいはある。奥に行くほど強くなる。東に向かえば少しマシ。
とりあえず、この森の北西側は危険が多い匂いが漂っている。
東か南が安全そうだ。
よし、方向は決まった。
東か南を目指すとして……まずは寝床と、なんか食えるもの探さなきゃな。
「……ワァフゥゥ。(……はらへった)」
森の中で、ひとりぼっちのモフモフが小さく吠える。
その声が、森の奥で誰かの気配を揺らしたような、そんな気がした。
――そして、静寂が破られた。
……ん?
耳がピクリと反応する。
風が止み、空気が変わる。
ただの動物とは違う、何かの“存在感”。
ゆっくりと体を低くして、茂みの奥を警戒する――
「……スゥゥ……クンクン……」
鼻先をくいっと持ち上げ、深く息を吸い込む。
……この刺激臭――
……さっきの、コブウサギ……!
そう思った瞬間、右斜め前方の茂みが揺れた。
灰色の毛並み、鋭い眼光、額に盛り上がったようなコブ突起。
あきらかに、さっき群れの中にいた一匹と同種。
しかも――こっちを、はっきりと“狙っている”。
――縄張りか?それとも別の理由?
考えている暇もなく、コブウサギは低く構え、地面を蹴った。
「ワフゥッ!?」
速い!まるでスタートダッシュを決めたレーサーバイクのような速さ!
ギリギリで横へ飛び退く。
雪が舞い、着地。
ウサギは空振りに終わったが、すぐに体勢を立て直す。
もう逃げられない。
これは完全に“戦闘”だ!
「ガウッ!(やるしかねぇ!!)」
体を沈め、真正面から突っ込む。
咄嗟に子犬的体当たり!
ドガッ!
お互いに激突。
衝撃で吹き飛ばされ、雪の上を転がる。
「ワッフゥゥ……(いてて……)」
肩がズキンと痛むが雪の冷たさで少しだけ痛みが和らぐ。
けど、これは確実に打撲だ……
ウサギも、足を引きずりながら立ち上がる。
目が据わっている。まだやる気だ。
……根性あるな、こいつ……でも、やられっぱなしじゃいらんねぇ!
再び突っ込んできた敵に、横っ飛びしつつカウンター気味にひっかいた!
ガリッ!
短い前足の爪が、ウサギの顔――額の横を裂いた!血がにじむ。明らかに“痛み”が走ったような動き。
だが、こっちもバランスを崩して転倒。
追撃できない。
ウサギは、顔の傷など受けていないかの如く、再び猛烈な速さで体当たりをするかのように突っ込んできた!
とっさに横へ跳びのく。
犬的反射が体を動かしてくれた。
突進し後へすっ飛んでいったウサギに視線を向けると――
ウサギは突っ込んできた勢いを生かし、そのまま森の奥へと消えていった――
「……ワフ、ハァ、ハァ……(助かった……)」
勝てなかった。
でも、逃げさせた。
それに――あいつの顔、左の額にくっきりとした傷を残した。
じんわりと痛む肩を庇いながら、雪の上に立ち上がる。
――そうだ、まずは生きる。
それが全部の始まりだ。
「……ワフゥゥ。(今度は、もう少し冷静に対応しよう……)」
雪が舞う森の中、少しだけ傷ついたモフモフが、立ち上がる。
闘いの余韻と、これからの不安と、少しの高揚感を抱えて。
――気高き一匹狼(予定)は、静かに森を歩き出した。
読んでいただきありがとうございました。
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