第十三話
※執筆にAIツールを使用しています。
※カクヨム様にも投稿しました。
反省したかのようにシュンとした俺を抱きかかえ、ヨシヨシと毛触りを確かめるかのように撫でまわしながらユユから注意をするような念話が届く。
『はしゃぎすぎちゃ、ダメだからね!』
「ガウゥ(いや、ユユも一緒にテンション爆上がりだったでしょ!?)」
そんないつもの穏やかな俺たちとは別に、ドリュアの「マレビトかもしれない」という言葉に、サラスはしばらく沈黙していた。
白いミミズクの頭をわずかに傾け、羽角をぴくりと動かす。その瞳は、何かを見透かすかのように、じっと俺に注がれていた。
『ホー、マレビトか……』
サラスの言葉に、ドリュアのモノクルの奥の瞳が、僅かに光を帯びたように見えた。
『モコオはまだ此方の知識にも乏しいため、せめて自分の能力だけはきちんと把握しておきたいのです。』
『ホー、それであたしを呼んだんだね。』
『本来であれば貴女のような変わり者とは関わりたくありませんが、やむを得ず……』
『ホーホー、何を言うのじゃ!突然亜人のハーフを拾ってきて5年も育てた酔狂なつむじ曲がりに言われたくないのじゃ。』
『へへー、ユユみりょくてきだからな!』
「わふわふ(ユユたくましい子!)」
『モコオのモフモフもみりょくてきだよ!』
『ホホ、まぁよいじゃろう、能力に関してはドリュアに言われんでも興味があるんじゃ、それに、さっきあらかた見た感じじゃと、ひときわ異質な能力は「嗅覚無双」じゃ。』
「がう!(それ!どんな能力なんだ?)」
『ホー……、残念じゃが分からんのじゃ、見たことも聞いたこともない能力じゃ。むしろ、モコオは嗅覚に異常を感じないかの?』
「ワフ……(異常を感じる……うん、異常だと思う。臭いで魔物の場所が分かったり、地形どころか風景を想像出来たり、それに、ユユの……いや、他人の感情もなんとなく嗅ぎ取ることができるような気がする……)」
『ホホーウ、それ以外の能力は後天的な能力じゃ、“身体能力強化”は、筋肉の出力を上げ、運動時の効率を高める能力じゃ。つまり、力が強くなり、攻撃の威力が増し、さらに疲れにくくなるのじゃ。戦闘向けの基本性能じゃ、“寒冷耐久強化”はその名の通り寒さに強くなるのじゃ、“炎熱耐久弱体”は暑さに弱いというわけじゃ、「嗅覚無双」だけは特殊で他に類を見ない能力じゃ。』
サラスは、俺の能力を淀みなく説明した。
ミミズクの羽角が誇らしげに揺れ、彼女の瞳は俺の鼻先へと向けられている。
どうやら“嗅覚無双”が、よほど彼女の興味を引いているらしい。
俺は、自分の体が持つ能力がここまで細かく分析されたことに驚きつつも、どこか納得していた。
確かに、コブウサギとの戦闘でも、体が勝手に動いて力が湧き上がった感覚があった。
寒さに強いのも、この雪山で生き抜けている理由だろう。
そして暑さに弱いのは、このモフモフの毛皮を見れば一目瞭然だ。
サラスの説明が終わると、ドリュアは静かに佇んでいた。
彼のモノクルの奥の瞳は、どこか遠くを見つめているようだった。
表情はいつもと変わらない冷静さを保っていたが、その周囲の空気が、わずかに重くなったように感じられる。
『やはり、マレビト……』
『ホホー、そうかもしれぬし、そうじゃないかもしれぬのじゃ、ただ、あたしもただのほら話として信じていなかったマレビトの伝説を思い出したのじゃ。』
「アウアウアオン(どんな伝説!)」
『あるマレビトは空中浮遊の能力で空を自由に歩きまわり、あるマレビトは死者蘇生の能力を使い、愛するものを生き返らせ、またあるマレビトは天下無敵の能力で、あらゆる悪を切り伏せ続け生涯敗北を知らなかったとかじゃ。』
サラスは、白い羽角を揺らしながら、まるで目の前で見てきたかのように語る。
その声はどこか楽しげで、彼女の好奇心が物語に宿っているようだった。
俺は、サラスの語る“マレビト”の能力に、ただただ圧倒されていた。
空を自由に歩く。
死んだ人間を蘇らせる力。
決して敗北しない無敵の戦士。
それは、この世界の常識を遥かに超える、神話じみた話のような気がする。
ドリュアはしばし目を見開き、信じがたいというように口を開けたままだった。
だが、瞬間的に眉を吊り上げ、激しく首を振った。
『ばかな!そんな能力、神の奇跡に匹敵する――強力すぎる!!』
ドリュアの声は、普段の落ち着きを欠き、感情が露わになっていた。
その言葉には、驚きと、信じられないという強い否定が込められている。
『ホホッホ、そうじゃ、だからあたしゃ信じちゃいなかったのじゃ。』
サラスはそう言うと、白い羽角を満足げに揺らした。
まるで宝探しの地図を見つけた子どものように目を輝かせ、未知の謎を解き明かすことに喜びを感じるかのようにキラキラと輝き、 その口元には、楽しげな笑みが浮かんでいるように見えた。
精霊族特有の好奇心が全身から溢れ出し、彼女にとって、モコオの存在はまさにその好奇心を最高潮に満たすおもちゃを見つけたかのようだった。
『ホウ!しかし、ここに「嗅覚無双」などという唯一無二の能力を持つ、ニホンなる国の記憶をもつワンコが存在したのじゃ!ホウホウ!これは面白いのじゃ、とても知的好奇心をくすぐるのじゃ!あたしゃこうしちゃ居られないのじゃ、すぐにでもマレビトの情報を探して新たな能力の発見と未知の可能性の探求に出かけるのじゃ!!知識の大海原があたしを呼んでいるのじゃ!!』
サラスは、興奮で白い羽角をぶんぶんと揺らし、まるで嵐を巻き起こすかのように洞の中を飛び回った。
その瞳は、新たな研究テーマを見つけた科学者のように爛々と輝き、彼女の全身からは、抑えきれない知識への渇望が噴き出しているかのようだった。
「ワフフッ!?(え、待てって!)」
俺が困惑の念話を飛ばすよりも早く、サラスは地面を蹴った。
ドリュアと俺の間をすり抜けるように、彼女の白い姿が彗星のように駆け抜けていく。
その速さは、まるで一瞬にして洞の出口にワープしたかのようだった。
その場に残されたのは、舞い上がる落ち葉と、呆然とする三人組。
俺は鼻先に落ちてきた葉っぱをぼうっと見つめ、ユユはぽかーんと口を開けたまま、ドリュアは片手を宙に伸ばした状態で固まっていた。
まさに嵐が去った後、洞には深い静寂と、残された俺たちの途方もない困惑だけが広がっていた。
やがて、その張り詰めた静寂を破ったのは、ドリュアだった。
彼はゆっくりと、まるで巻き戻しのように宙に伸ばしていた腕を下ろすと、モノクルの位置をわずかに直した。
そして、何事もなかったかのように、しかしその声には微かな疲労の色を滲ませながら、口髭を整えつつ淡々と言葉を紡いだ。
『では、改めて――モコオの能力鑑定の結果について、まとめと講評に入るとしましょう。』
その言葉に、俺は思わず「ワフッ!?」と叫びそうになった。
いやいや、今、目の前で精霊が爆速で飛び出していったんだぞ!?ユユも、パチクリと目を瞬かせ、ドリュアの顔と、サラスが消えた洞の入り口を交互に見つめていた。
まるで、今見たものが幻だったかのように、ドリュアは完璧に日常へと場を引き戻そうとしていた。
その落ち着き払った態度に、俺はむしろ深い戦慄を覚えるのだった。
『良いですかモコオ。自分の能力をきちんと把握し、出来ることと、出来ないことを理解し生きる為の知恵にするのです。』
「ワン!」
そうだ俺は自分の能力を知ることができたんだ。
身体能力強化―力が強くなり、攻撃の威力が増し、持久力までも伸びる。単純だが極めて実用的な力だ。
寒冷耐久強化と炎熱耐久弱体―要は寒さに強く、暑さに弱い。
そして……嗅覚無双――唯一無二な特別な選ばれたものだけに授けられし力。
だけど、俺は思う……死者蘇生とか、天下無敵に比べると、ちょっと、なんか、しょぼく無いか?嗅覚無双……
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