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白鳥の微笑み

私は何度も自殺をしようと思ったことがあった。

友達の死、家族とうまくいかなかったこと、、、

他にも理由はあったのに、忘れてしまった。

忘れたかったからだろうか

私はそんなことを思いながら、一年生達の植木鉢を覗き込んだ。


気がつくと保健室で、私は背中に激痛を感じた。

私の寝ているベッドの周りには先生が複数人いた。

あるおばちゃんの先生は泣いていた。

保健室の先生が私の背中の傷を見てくれる。

「大丈夫?」

ただその一言だけ

大丈夫なわけないのだが、その一言がなんだか寂しくて優しいような感じだった。


母親が来た。

「あぁ、、、」

母が泣き崩れた。私は申し訳ない気持ちを母に感じたが、あまり反省の顔を出すことができなかった。

これで何度目だろう。

なぜ死ねないのだろう。

なぜ生きているのだろう。


母が言う。

「やっと普通に戻ったと思ったのに、、うぅ、、」

それは失礼じゃないか?私は普通じゃないと?

うん、考えてみれば普通じゃない。

こんなにも自殺未遂をしてきたのに死にやしない。そろそろ確実に死ぬ方法を考えるか。


私の今までしてきた自殺未遂はすべて飛び降りだった。


なぜか私は飛び降り自殺が好きだった。

悩んで考えるよりも飛び降りることが優先した。


家に帰ると何やら保護団体らしき人たちがいた。

両親が説得をしているようだが、団体のやつらは首を横に振っていた。

私はどこかへ連れ去られてしまうようだ。


大きな黒い車に入るよう言われた。

両親が家の前で泣いていた。

私はすぐに車の中にいた医者らしき人物から質問を受けた。

名前、生年月日、自分の性格、なぜ自殺したのか。

この四つにすべて答えた。

四つ目の質問では私はなぜか泣きながら答えていた。


医者がすべての質問を終えると、後ろにいた黒服の男に

「Bレベル56です」

と言った。

医者はおばさんだったが、何か怖い感じだった。


車が到着したところは何だか気味の悪い真っ白さを誇る建物だった。

下からライトで照らされていて、新品のような印象だった。

中は薄暗く、病院に近いものを感じた。


私はすぐに拘束されてしまった。

中学生を拘束して一体何をしようというのか。私は無駄な抵抗はしないようにした。

きっと良いことであるだろうと、そう願っていた。

手術室のような場所に連れ込まれ、私は無意識に抵抗していた。

恐怖は本能的に私を動かした。

だがあっけなく手術台のようなところへ寝させられ、紐で固く縛られた。


左腕に何か痛みを感じた。

私は無意識に常に声を上げていた。

「ううぅぅ、、、、ううぅぅ、、」

口を覆われて喋れない。

暴れようとするも紐が完全に私を捕まえていた。

やがてだんだん力つきていき、眠くなっていった。

医者らしきものたちが私の顔をジロりと覗き込んでいた。

私は心の中で、死ぬんだ。と感じていた。私にとってこれほどまで楽に死ねることは喜びだったのかもしれない。


だが、それは喜びなどではなかった。

私は意識の中で恐怖を感じていた。寒い、熱い。怖い。

その連続であった。

やがてそれが終わるころには

完全な落下を感じていた。

ただただ重力を感じる恐怖

永遠に落ちる恐怖だった。

私は今まで感じたことのない感情になっていた。

赤ん坊のように泣き、喚き、叫び。

全てが崩壊していた。


やがて私の声が静かになっていき、だんだんと明るい世界が見えてきた。

私のまぶたが開き、手術台の上だということに気づいた。

私は私の一粒の涙を身体全体で実感した。


「あなたは一度死んだのですよ」

そう医者が言った。


まさか、あれが死だというの、、

私は絶望に泣き喚いた。同時にこの世に戻ってこれた希望に感謝を心の中で思っていた。


私が目覚めるまで一か月がたっていた。


家に帰ると両親が私を抱きしめてくれた。私も彼らの中で泣いていた。

医者のおばさんもあのしかめつらは消えていて、にこやかに暖かく見守ってくれていた。


「果歩ちゃん、おやつ食べる?」

お母さんがにこやかに接してくれる。

私はうんと言って、おやつを食べた。


中学卒業式

両親は私が卒業証書を持っているところを見て感動していた。私もうれしかった。

卒業式では私の数少ない友達とも写真を撮ったりした。

「色々心配かけてごめんね」

私はなぜか友達に謝っていた。

友達もいいよと泣きながら答えてくれた。

皆泣いていた。

感動も終わるころ、一人の青年が私に話しかけてきた。

「君、自殺で有名な子だよね。」

見た感じ私と同じ卒業生みたいだった。

何?と聞くと

「君一か月間あの白鳥にいたんでしょ?」

一か月?白鳥?なんとなく理解した。

私が一か月行っていた場所は白鳥というらしい

そう解釈し

「あなたはあの場所が何なのか知ってるの?」

と聞いた。すると

「僕はあそこに約二年間いたんだ」

と話した。

私は驚きを隠せなかったが同時に私の理解者がいたという安心感ができた。

「二年もあそこで何してたの?」

すぐ彼は

「ここじゃ話すのはよそう」

と、近くの公園に移動した。

彼の名は優木といった。彼は話を続けた。

「僕はあそこでJレベル70とKレベル22を体験したんだ」

と言った。

そういえば私も同じようなことを医者に言われてた

「私は確かB、、」

「Bか!楽なやつでよかったね」

「ええ」

まあ確かに楽に死を体験できたが、これでとてつもない死に対するトラウマができたのはいうまでもない。

「私は眠るように死を体験できたわ。まあ楽だったって言えば楽なのかな」

「・・・」

「?」

何か違和感を感じた。

「僕は君がいなくなっているときにあの学校に戻ってきたんだ。白鳥には君と同じ自殺が原因で入って」

自殺を止めるために臨死体験をさせたんじゃ?と思ったが

「あの薬は死ぬための薬じゃなくて、死にトラウマを持たせるための薬で君は一度も死んではいないんだよ」

私は驚いた。だがこれが本当か信じられなかった。

「僕は違う薬で二度あの経験をしてる。だから信じてもらえると思ったんだけど。」

「・・・」

「まさか死んだ人間が一か月も放置されて生きてると思ったのかい?」

「・・でも」

「ハハハ、僕らの望む死があんなふざけたものなわけないじゃないか」

彼はそう笑いながら公園を出て行った。


友達が待っていた。私は手を少し振って待っててと言った。


両親との帰り道、私は高校のことを考えていた。

「果歩ちゃんやっぱり中学と同じバトン部に入るの?」

母が言った。しかし私は中学のバトン部をサボって来ていた。

バトン部は好きだったけど、

「美術部にでも入ろうかな」

そう言って私は未来を考えた。

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