第1話:領地という名の荒野
皆さんどうもこんにちは、私は今、荒野に一人立っています。
そんな挨拶から始めてしまう程に彼女、リリアは荒れ果てた木も草も生えていない荒野に立ち尽くしていた。
昨日五歳になったばかりの彼女は今日、起きるや否や父たる国王の前に連れていかれ、この地を治めるように言われ、少ない荷物を持たされここに飛ばされた訳なのだが五歳の幼女にこんな荒野をどう治めろというのだろうか。
「治めるも何もまず、見渡す限り荒野で何もないけど?」
治めるべき領地はとっくに崩壊していました。
どこの三流小説だよと思いつつリリア自体が小説のような体験をしている最中である。
よくあるブラック企業でよくある過労死の末、きっとこれもよくある異世界転生を果たしたのである。
異世界転生がよくあってたまるかと思わなくはないが、リリアは魔法のある世界ではあるが世界が死にかけている異世界に転生したせいで中々にひどい扱いを受けてきた。
国王である父は魔力量は高くなかったが、水魔法適性があった王族だったため国王の座についた。今の公爵は国王の兄で魔力量が高く他者に魔力を分け与える事が出来る上に地の適正があり、国王の水と公爵の地で大地を一時的に作物が育つ状態にして育て、その作物を国民が分けるという現状だ。
と言ってもどこの国も同じようなもので、地や水の適性のある者が作物を育て、火の適性がある物が調理の手助けをする。それ以外の適性持ち等、貴族や王族と言えどタダ飯喰らいの約立たず扱いだ。
特に王族は数少ない民を守るという意味合いがあるために顕著で、リリアも部屋とも呼べないだろう地下に押し込められ、必要以上に外へ出ない様にされていた。
リリアは現在五歳であるが前世はOLをしていたオタクであり、農業系ゲームやのんびりとした村を作ったり、無人島に引っ越してローンを返しながら島を発展させていく某ゲームなどを好んでいたので、魔法系ファンタジーはライトノベルとかの知識くらいだ。
「まずは、魔法使えるのかな私」
魔法適性不明、魔力は膨大。
魔力があるだけの役立たず、それがリリアである。
「ステータスオープン」
試しに唱えてみるとフォンという軽快な音と一緒に目の前に現れるステータスボード。
本来ならば国にいる神官と呼ばれる人が何やら水晶を使わないと見られないらしいと言うのは知っていたし、傍に自分を監視する人がいたので出したのは初めてだ。
名前 リリア・フォン・セレナーデ(元リリア・フォン・アンスタージュ)
性別 女 年齢 5歳 職業セレナーデ公爵
体力 350/350
魔力 1905963/1905963
スキル
創造魔法Lv1 生産魔法Lv1 水魔法適性Lv1 火魔法Lv1 土魔法Lv1 雷魔法Lv1 地魔法Lv1 木魔法Lv1 風魔法Lv1 空間魔法Lv1 剣術Lv1 体術Lv1 ショップLv1 錬金術Lv1 種子生成Lv1 テイマースキルLv1 回復魔法Lv1
加護
創造神の加護 愛の神の加護 武神の加護 生命の神の加護 魔法と知恵の神の加護 鍛治と酒の神の加護 豊穣の神の加護
称号
異世界からの転生者 神々の愛子
スキルはあまりにも膨大でスクロールするのを辞めて加護や称号を見ると異世界からの転生者と神々の愛子という称号に目がいく。
異世界転生あるあるチートかなと思えば納得出来るのであの水晶に映らなかったのは何かしら理由があるのだろう。
ステータスボードを消し、荒野を見渡し、これが私の領地なのかと黄昏てると頭の中に軽快な音と無機質な声が聞こえる。
【アンスタージュ王国の東、元サスリア公国跡地、セレナーデ領を公爵領にしますか?】
女性の声に聞こえるのにその声が余りにも無機質な為に一瞬調教されたボーカロイドに聞こえなくもないが何だか違うような気もする。
取り敢えずはいと返事を返せばシュンっと目の前にマップが現れ、どうやら領地のマップらしくそこには枯れ果てた大地とかしか書かれておらず青く光る線は領地を囲んでいるので境界線だろう。
現在地を示してるだろう黒の三角印の他には何も無い。
このままマップを眺めていてもどうしようも無いので農業系のゲームならまずは木を植えれたりするのだが、ここは現実なので出来るわけないだろう。
というか、種も苗も持ってないからまず植えるものがない。
「そう言えば、ショップってなんだろ」
スキルにあったショップを思い出し、呟くと目の前に【ショップを開きますか?】の文字。
その文字に従ってはいを押せば前世よく見たANIMALという通販画面が目の前に並ぶ。
前世と違うのは並んでいる中身に見たことの無い商品が多数並んでいて更に支払いが、魔力であることだけだ。
「ここから種とか苗を買えばいけるのかな?」
取り敢えずオススメトップに出ている世界樹の苗木を押すと購入に必要魔力100万の文字。
今の魔力量は190万と少しだったからこれを買ってもまだ買う余力はある。しかし、魔力が回復するのは時間経過な為に出来れば住む場所が欲しい。
むむむむと悩んでいるとセットの文字が見えた。
《世界樹と精霊樹のセットを今ご購入のお客様限定で三種類の中から一軒プレゼント》
世界樹と精霊樹という木の苗木を買えばどうやら一軒家が貰えるらしい。
プレゼントの三種類は全て二階建ての家だが、こじんまりとした可愛らしい雰囲気で一人だけど、家具とか集めれば寂しくないかな。
しかし、セットのお値段が190万。今の魔力のほぼ全部を持っていかれる。食事や水の確保が出来るとは確約出来ないのにいいものかと悩みに悩むが結局の所、何かしら植えたり建てたりしないといけないので、最優先事項の衣食住の住を手に入れ、尚且つ残り五千程の魔力で手に入る食べ物と飲み物を手に入れればいいのだ。
「よし!これに決めた!」
グダグダ悩んでも仕方ない。
好みで決めた家は白い壁に青い屋根に一部がガラスドーム状になっており。4LDKのお家のようで、とても可愛くて気に入ったのだ。
即購入を押してごっそり体から何かが抜ける感覚にこれが魔力だろうと思ったが一気に抜けた魔力に思わず立ちくらみを感じて、ぺたりとへたり込む。脂汗が滲むが気を失えない。
【どこに設置致しますか?】
また無機質な声に、天の声と名付けるとしてどこに設置するか考えていなかったと自分の計画性の無さに溜め息を吐く。
取り敢えず世界樹1本と精霊樹が3本買えたので領地の四隅に配置しておく。何となくだが、前世の部屋の四隅に盛り塩をすると結界になる的な効果を期待してのことだ。
プレゼントの家もどこに置くか悩む。もうあまり動きたくないのだけどと思いつつマップを見て、操作していると間違えて設置した世界樹の苗木に触れると《場所を移動しますか?》の表示が出た。
つまり、ゲームなんかでお馴染みの場所は位置が簡単に移動出来るということである。まあ、魔力は消費するが世界樹と精霊樹を買った量に比べたら微々たるものである。
移動の心配が無くなったのでそのまま家を目の前に配置すると何も無かった荒野にいきなり綺麗な新築の二階建ての一戸建て住宅が現れる。
デザインはこの世界の物ではなく前世のものではあるがそんな事、一人しかいないここでは気にしても無駄だ。
震える足で何とか家の中に入ると綺麗なフローリングが目に入り、もう無理だとばかりにそこに倒れ込む。白にいた頃は石の床の上に寝ていたのでフローリングで寝る事に何の抵抗もない。
「ちょっとねて、おきたらごはんとのみもの、かわなきゃ……」
気力も体力も全部使い切ったとばかりに重くなる瞼に従って、眠りにつく。意識が途絶える少し前に天の声何か言われた気がしたが呂律の回らない声で"ぜんぶすきにして……"と返事して意識を失った。
【世界樹の主がリリア・フォン・セレナーデに設定されました。精霊樹との魔力回路の連結も確認。世界樹の根が大地に張り巡らされます。完了まで残り200年。
リリア・フォン・セレナーデの魔力を使い、完了時間を早めますか?(足りない分は回復分より精算致します)】
【リリア・フォン・セレナーデ、是の返答によりこれより200万の魔力を代価に世界樹の成長を完了。セレナーデ公爵領の大地に魔力が戻りました。足りない魔力、回復予測時間36時間。魔力超回復スキルを手に入れました。魔力回復予測時間変更、再計算、回復予測時間は12時間。これより案内を一時停止、終了致します。お休みなさい、リリア】