3話
WEB小説『異界から来た聖女』は、ある日、豊かなダシャイア国の王城の庭園に、異世界から突然現れた少女、聖女カオリが主人公の物語。
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ダシャイア国の空が光り、異界から召喚されたカオリ。
当初は異世界転移と、自分が聖女と呼ばれることに驚き、怯えた様子で周囲に馴染めずにいたが。次第にみせる彼女の、素朴で屈託のない笑顔や明るい性格に、周りの人々は惹かれていく。
特に第一王子アーイス殿下は、そんなカオリに心を奪われ、彼女への恋心を抑えきれなくなる。
しかし、婚約者がいる身。だが、殿下は学園卒業後に開かれた舞踏会で、幼い頃から過ごしてきた、婚約者に婚約破棄を言い渡した。
勝手なアーイス殿下の行為に国王は激怒し、聖女と称されるが、まだ力が開花していないカオリを認めようとしない。さらに国王は、新たな婚約者候補を集めた舞踏会を開く。
そこで、ミーシャは婚約者に選ばれる。
このミーシャは家族から愛されず、愛に飢えていただけではなく。王都学園の入学式の日に、落としたハンカチをアーイス殿下が拾い、刺繍を褒められて、殿下に恋心を抱いていた。
(もしかしてアーイス様は、あの日のことを覚えていてくれて……婚約者より、聖女より、私のことを選んでくれたの?)
この婚約に、期待に胸を弾ませるミーシャ。しかし、彼女が選ばれた理由は「大人しく従順で、何でも言うことを聞きそうだから」というもの。
自分は、お飾りの婚約者に過ぎない現実を知りつつも、ミーシャは殿下の愛を求め、「自分は殿下の婚約者なのだ」と、その地位に執着する。
次第にその独占欲は歪み、ついには聖女カオリを毒殺しようと画策。しかし、計画が露見し、ミーシャは捕まり処刑されて、第一部は幕を閉じる。
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第二章が、ミーシャの死後から始まる。
二章では、どうして異世界にカオリが召喚された、本当の理由がわかる。それは、ミーシャの死から半年後。王国のあちらこちらに瘴気が溢れ出す。
これは、魔王の復活をあらわした。
いつも泣いてばかりで、アーイス殿下に守られていた第一章とは違い、第二章では、カオリの聖女の力が開花して、怪我を治し、瘴気を浄化した。
カオリの力の開花に合わせて、殿下も勇者としての力が開花し、使命を果たすべく奔走する。
邪魔な勇者と聖女を殺すべく、王都へときた魔王は彼女を一目見て、恋に落ちてしまう。
カオリに恋をした魔王はあらゆる方法で、アプローチを試みるが、最終的に魔王は二人に封印される。
魔王を封印したと、カオリは国王に認められて、アーイス殿下は結婚をして物語は終わる。
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「ミーシャ嬢、どうしました?」
(今は物語の第一章の終盤。この小説とは違い、私はアーイス殿下に何の興味もない。好きでもない人との婚約なんて嫌だけど、王の勅命を断ることはできない。受け入れるしかないか)
私は微笑みを浮かべ、スカートの裾を摘んで
「喜んで、この婚約をお受けいたします」
と深々礼をすると。
周りから、盛大な拍手が湧く。
(はぁ……どうせ転生するなら、イケメンに愛されて、可愛いもふもふ達とスローライフを満喫する、人生がよかったなぁ……)
笑顔の裏でそんな思いを抱きつつ、心の中でごちた。