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黒薔薇の毒婦と言われた悪女イブリンの復讐  作者: 星野 満


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2/9

02. 長女イブリンVS次女ケイティ

※ 2025/6/30 修正済み

◇ ◇ ◇ ◇



「ああ、ケイティお姉さま、もう少し落ち着いてくださいな」

 これまで黙って聞いていた3女のアリッサが口を開いた。


「イブリンお姉様もさすがに言葉が過ぎますわ!」


 アリッサはなんとかして2人の姉の諍いを止めたかった。


 ふと見ると、ケイティはイブリンの態度にそうとう頭に来たのか、隙あらば飲みかけの紅茶を姉にぶっかけそうな勢いだった。


 アリッサはすぐに気がつき姉のケイティの手を強く握った。

「ケイティお姉さま、それだけはいけませんわ」と小声で言いながら。


 

 長女のイブリンは漆黒の黒髪、次女のケイティは金褐色と、姉妹は外見も顔立ちも似ていなかった。

 

 そしてライトブラウンの髪がつややかな3女のアリッサは冷静だった。


 2人の姉よりも頭一つ分、背が高いせいか大人びて見える。

 だがアリッサはまだ学生でこの秋中等部を卒業予定だ。

 

 彼女は物静かな文学少女であった。

 なるべく揉め事をおこすのが嫌いなタイプである。

 

 身長の高さだとアリッサ、ケイティ、イブリンと面白い事に姉妹の年齢とは逆になる。

 

 背丈同様に、精神年齢はこの末娘のアリッサが一番だろうと、侍女たちは陰で噂していた。

 

 末の妹とは真逆で、長女のイブリンと次女のケイティは気性が激しい。

 

 昔からこの2人は些細なことで、すぐに辛辣な舌合戦を始める。

 お互い絶対譲らない性格なので、2人が顔を合わせばすぐケンカになる。


 

「アリッサ止めないでちょうだい!今日という今日はイブリンお姉様に私のロイド様を誘惑した事を謝って欲しいのよ!」


「あらケイティ、何度も言うけどあたしは何もしてませんよ」


 イブリンは言いがかりも甚だしいと冷静に諭す。


「誤解してるのはケイティ、あなたの方だわ。そもそも先週の慈善パーティーであたしは初めてロイドと会ったばかりよ。あなたがロイドをあたしに紹介して、その後であたしが化粧室へ行く為に席を外したら、途端にロイドが私を追いかけてきて、少しだけ会話をした──それだけよ」


「う、嘘おっしゃい、それにさっきからお姉さまは“ロイド”ってロイド様を気安く呼び捨てしてる。それが何より証拠だわ」


「あら、ロイドって『様』つけるほどの殿方ではないでしょう」


「ま、なんて失礼な……なら聞くけど何故、ロイド様が急に私と婚約解消したいというのよ!お姉さまが、ロイド様にお得意の色仕掛けをしたに決まってるわ、」


 ケイティは姉の言う事などハナから信用していなかった。


「それに以前だって、お姉さまはルンド家のマリア様の婚約者に色目使って骨抜きにしたって噂を聞いたわ!そのせいでマリア様は婚約解消されてすっかりやつれてしまったとか──きっとロイド様はイブリンお姉さまの、その……なんていうのか⋯⋯男を誘惑する妖しげな流し目を使ったんでしょう!」


「は? まったく記憶にないわ。そもそもマリア様の婚約者って誰かしら?」


 イブリンは大きな黒い瞳を縁どる長い睫毛を、パチパチと上下にはためかせた。


 この“睫毛パチパチ”はイブリンの癖だ。

 

 つけ睫毛かと見紛うくらい、イブリンは長い睫毛を持っている。

 

 ご自慢の睫毛をパチパチさせると、なぜか殿方にはとてもチャーミングに映るらしい。

 

 イブリンはそれを知ってから、意味もなくパチパチするようになって、今では癖になってしまった。



「お姉様、すっとぼけないで、殿方はアルバート卿よ。マリア様は3日3晩泣いたって言ってたわ!」



「ああ、あの男!──思い出した、うふふ……あのキザな髭面ね……でも彼はプレイボーイよ。あたし以外にも同じように、夫人にちょっかいだしてるわ」


イブリンは今更何をいってるの、と呆れんばかりに言った。


「アルバート卿は遊ぶには良いけど、夫にはとかくふさわしくないタイプね。潔癖症で品行方正なマリア嬢には婚約者に相応しくないと、分かって良かったんじゃないの?」


「んまあ、良くもぬけぬけと!マリア様の身になりなさいよ!」


「だから、マリア様にとってはロクな男じゃないと分かって良かったのよ」


「偉そうに……」


 ケイティは怒り心頭だ。


 イブリンはそんな癇癪おこしてる妹の気持ちなど意に介さないでズケズケと言った。



「ケイティ、マリア様の心配してるよりも自分の心配をしなさい。一応、姉として忠告しておくわ。ロイドはあなたにふさわしくないわよ──何せ初対面から、ぶしつけに私の胸元をじろじろ見る男なんだから。それも今にも()()()()()()()な厭らしい目付きでね」


「イブリン・ハートランド! あなたは淑女の風上にも置けない。さっきからはしたない言葉ばかり、まるで娼婦みたいだわ!」

 

 ケイティは思わず長女を『イブリン』と名指しで怒鳴った!


 姉のゆさゆさと豊満な胸元を見つめながら、ケイティは自分の平たい胸のコンプレックスもあったのか、額に青筋をピキッピキッとふた筋立てた。





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