四十一章 赫日の短剣、発動
「・・・」
顔に入ったいくつかのひびから噴き出す墨のような黒い神気が枯れるとラーフィアは力なく体を反らせ、上を向いたまま動かなくなった。
「・・・」
七陽の勇者はラーフィアから飛び出した金色の光を見て冷や汗を垂らしながら次々と体が動かなくなっていく。
金色の光は赫日の短剣となってラーフィアに突き刺さった。
すると、赫日の短剣が金色の炎に変わってラーフィアに吸収された。
その瞬間、見る見るうちにひび割れが直ってラーフィアの神気が全回復する。
「・・・」
ラーフィアは七陽の勇者を見ながら赫色の稲妻を放ち始めた。
降り注ぐ赫色の雷が白砂を焦がし、舞台を破壊していく。
これが死星ラーフィアの真の姿なのか?
(どうにかして動けないだろうか・・・)
ヒルデガルトはラーフィアを見つめる。
(このままじゃみんな雷に打たれる・・・感覚的に、剣技を放てるのはこれで最後だ)
カスミは最上大業物落陽淵崩を握り込んだ。
落陽の勇者カスミが行う最大の抵抗。
師匠リヴァをも超えるその力を死星にぶつけようとしている。
「落陽・・・降れ!!」
最上大業物落陽淵崩を握り込んだカスミが大声でそう言うと、ラーフィアに一筋の光が降った。
その瞬間、上空の空間を突き破って巨大な金色の火球が隕石のように落ちてきた。
「お前は現人神でもなければ四華に許された器を有する者でもない」
ラーフィアは重い神気風を放ちながらそう言った。
「ただ借りた力で強化された人間でしかない!!」
ラーフィアはそう言うと、神気を手に集める。
「邪悪・・・成敗!!」
カスミは大声でそう言った。
まるで祈るように、頼み込むように。
しかし、全てを嘲笑うようにラーフィアは僕たちに力を見せつけた。
重低音と甲高い音が入り混じった強烈な異音が鳴り響く。
透明になった火の粉が舞う中、右手が白く輝くラーフィアは右手を一振りした。
ラーフィアがやっと見せた一つの術。
ラーフィアが見せた術は梨々香が使う照赫化という技だった。
もう立ち上がれない。こいつには・・・敵わない。
「こんな実力の勇者を見て良く失望しないね」
手を振って手の照赫化を解いたラーフィアがそう言うと、界から梨々香が出てきた。
「陛下・・・」
カスミは梨々香を見てそう言った。
「ご苦労様でした。よく頑張りました」
梨々香はカスミを見て笑みながらそう言った。
「陛下・・・私たち・・・これで良いんでしょうか・・・」
カスミは梨々香を見て悔しそうに言った。
「反省なら後で。今は自分を褒めましょう。あなたたちは本当によく頑張った」
優しく笑む梨々香はカスミを撫でながらそう言った。
「・・・」
カスミは梨々香を見て泣きながら安堵すると気を失った。
「やっと出てきた・・・待ってたよ」
私がカスミを界の中に入れる中、ラーフィアの嬉しそうな声が響く。
「私は随分と過分な評価を受けているようですね。奴も変わったようで」
梨々香はいくつか界を地面に生み出してアイリアたちを回収していく。
「転生者アティアはお前と戦ってから過小評価という行為を嫌うようになった」
大戦斧グレイラを握ったラーフィアは笑みながらそう言った。
「なるほど。私が変えてしまったんですね」
梨々香はそう言うと、神刀華炎を生成して握った。
私とラーフィアは見つめ合ったまま反時計回りに円を描くように歩く。
次回四十二章 日対陽




