三十四章 旧世の炎聖
私たちは巨大な空間の出入り口に立つ。
巨大な空間にあったのは、祭り会場のような美しく荘厳な場所だった。
「・・・これは・・・」
ヒルデガルトは金色の巨大な女神像を見てそう言った。
「・・・」
アイリアたちは木組みの舞台に座って笛を吹くラーフィアを見て身構える。
「・・・赫日乃炎聖女神像・・・梨々香が言ってた通りだ・・・」
そう発せられたヒルデガルトの声には尊敬と感動と恐怖と絶望が籠っている。
「・・・」
ゆっくりと笛を口から離したラーフィアはアイリアたちを見つめる。
赫灰の少女、ラーフィア。
地より落ちてきた少女型の暗黒神。
前落陽の勇者リヴァを負傷させ、前烏輪の勇者ミューテを葬った最強格の神。
なんて不気味さだ。
今にも背筋が凍りそうだ。
だが、師匠だけはそう思ってないらしい。
師匠だけは、まるで子供のようなキラキラした目で周りを見渡してる。
あたしが師匠のことを気にしていると、アイリアさんが地面を踏み込んで最上大業物日炎を構えた。
「曙陽、ここに顕現す」
いつもならミッケさんの声と共に夜明けのような景色が広がり、あたしたち七陽の勇者の陽力が上がるのだが今回はなぜか上がらない。
何が起きてるんだ?こんなこと初めてだ。
どうすれば良い・・・どうすれば良いんだ。
いや、考えても仕方ない。
傷一つで良い。布石、隙を生むための布石、討伐するための布石を・・・
「金輪・爆!!」
あたしは真っ先にラーフィアに突撃し、力強くラーフィアに最上大業物金輪爆を振った。
凄まじい光・・・攻撃は確実に直撃した。
でも、違和感が・・・途轍もない違和感があたしの心をざわつかせる。
「通じてないッ・・・!」
最上大業物金輪爆を握ったダイナはラーフィアを見て冷や汗を垂らす。
それどころか、脅威だとも思われてない。
攻撃は確かに首に直撃しているのに薄皮一枚すら切れていないなんてありえないだろ。
「私がどうして避けないかわかる?」
向けられる目線・・・邪悪とは程遠い柔らかさと強者らしい芯の強さが感じられる声が全身を震わせ、自然と感覚が研ぎ澄まされる。
言葉、動き、服の些細な動きまで色々な情報が際限なく全身に入り込む。
「こうした方が早く倒せるからだよ」
ふわりと動くラーフィアが見えた瞬間、私は地面に倒れて一切動けなくなってた。
次回三十五章 赫聖神顕現、決死の猛攻撃




