三十二章 決戦の地へ
宿幼決戦から五年経った六月二十日。
指定された座標に到着した僕たち七陽の勇者は大穴を覗き込む。
「ここか・・・」
携帯端末を持ったアイリアは、大穴を見てそう言うと螺旋階段を見た。
「こ、この下に行くんですか!?」
レパルドは螺旋階段を見て驚きながらそう言った。
「行く。ここにラーフィアが居るんだ・・・」
カスミはそう言うと、螺旋階段を降り始めた。
他の七陽の勇者はカスミに続いて螺旋階段を下りる。
地下から流れ出てる神気の種類が違う。
この俗世にあってはならないものだ。
僕たちは無限に続くと錯覚するほど長い階段を慎重に下りていく。
階段を下り始めて五分ほどだった頃、湿度が高まるのを感じた。
「この不快感がない湿度は・・・」
アイリアがなにか思い出すようにそう言ったその時、辺り一帯が微かに揺れた。
揺れは脈動のように一定間隔で発生し始めた。
立ち止まったアイリアたちは揺れに耐えられずついにしゃがみ込んだ。
「この地下に居るのは心炎龍なの!?」
「ラーフィアじゃないんですか!?」
ミッケとダイナが僕に次々と問う。
「ラーフィアだ・・・間違いなくラーフィアだよ・・・」
僕は地下を見ながらそう答えた。
「どういうこと?何が起きてるの?」
冷や汗をかいたアイリアは地下を見てそう言った。
その時、凄まじい神気が伝わってきた。
「衝撃に備えろ!!」
僕が大声でそう言ったその時、地下から凄まじい熱と冷気が籠った神気風が吹き荒れて螺旋階段が崩れ始めた。
僕たちは何とか地上に上がろうとするも崩壊に巻き込まれた。
「クソ!」
カスミは壁の隙間に黒鞘に納まった刀を突きさして止まった。
僕は天星の力を使って地下に神気弾を放ち、爆風でアイリアたちの落下速度を遅くする。
僕は翼を羽ばたかせながらゆっくりと着地する。
霧化して衝撃を逃がしたグリードリヒ以外は落下の衝撃で気を失ったようだ。
「火を起こします」
グリードリヒはそう言うと、ポーチから木の棒と着火道具を取り出した。
「あぁ」
ヒルデガルトはそう言って座った。
昔、旅をしていた時に梨々香が初代天理照赫について話してくれた。
初代天理照赫は聖龍眼と呼ばれる赫色の瞳だったこと、六つの属性を操れたということを話してくれた。
脈動のような衝撃と共に放たれる炎は心炎、流星のように降り注ぐ氷は銀星、冥府のような景色を作り出す雨は冥転、全てを破壊する雷は雷壊、大地を崩す岩は岩崩、天を包む嵐は天嵐と呼ばれたという。
ラーフィアは初代天理照赫と同じような力を持っている。
初代天理照赫のことを知る梨々香は、そんなラーフィアのことをただの劣化コピーに過ぎないと本当に思っているのだろうか。
次回三十三章 壁画の間




