三章 死と転生の暗示
刃渡り約六十六センチ、重量、一・一キロ。
刀身は赤色で光沢は少ない。鎺は鉄と金の二層構造、千の華が刻まれた白木に赤い糸が巻かれた柄を外すと姿を現す茎に赤閃と刻まれた刀は、祖母華千﨑 蘭甜が私に残した刀である。
この赤閃は私が成人する時に先生から渡された。
「先祖代々の家宝になってくれれば良いな・・・と語っていた」と先生は言っていた。
「・・・」
梨々香は界の中に広がる祭り会場のような美しく荘厳な場所を見た。
これは天理照赫に残された記憶である。
私は心の平穏を保つために時々故郷を見る。
しかし、今はもう白梅も白翔もいる。
そろそろここを去らなければならない頃だろう。
「・・・」
梨々香は景色がガラスのように割れる界から出る。
界から出て自室に戻った私は赤閃の手入れを始めた。
赤閃の手入れをしていたその時、部屋のドアがノックされた。
「どうぞ」
私がそう言うと、ドアを開けてビーが部屋に入った。
この子は鎮魂を司る俗世の大権、クオンゼアムを持つ魔神だ。
本名はベネローブ・ローレン・タンコックという。
普段は占いばかりしているが本業は不動産業。
神護国にある民間が保有可能な土地の七割近くを保有している不動産王である。
土地を売らずに貸し出して持続的に利益を得ているから、他の不動産商人たちから妬まれ嫌われている。
「陛下、頼まれていたものです」
桜眼、桜色髪ロングヘア。銀色の輪がいくつもついた三角帽子を浅くかぶって深い青色が基調のミニドレスで身を包んだ女性、ビー・アスト・モアは梨々香を見てそう言うと、濁った水晶板を差し出した。
「いつも仕事が早いですね」
梨々香は笑みながらそう言うと、濁った水晶板を受け取った。
「ありがとう」
梨々香はビーを見て笑みながらそう言った。
「いえいえ」
ビーは梨々香を見てそう言った。
「でも、そんなもの何に使うんですか?聖火も魔氷もないですよね?」
ビーは小切手を用意する梨々香を見てそう言った。
「神気を制御する訓練に使うんですよ」
梨々香は笑みながらそう言うと、ビーに小切手とペンを差し出した。
「あの子、ラーフィア戦に出すんですか?」
小切手とペンを受け取ったビーはそう言いながら小切手に数字を書いていく。
「もちろん」
梨々香はビーを見て笑みながらそう言った。
「随分と期待しているんですね」
ビーはそう言うと、小切手とペンを返した。
「そりゃ期待もしますよ。六合権能下の眷属とは全く違う白式権能下の眷属ですからね」
梨々香は小切手にハンコを押して切り取り線に沿って小切手を切った。
「嫌だと言ったらやめてあげてくださいね」
ビーは小切手を差し出す梨々香を見てそう言うと、小切手を受け取った。
「それはもちろん」
梨々香はビーを見て笑みながらそう言った。
「最近、死と転生の暗示が出ています。最大限気を付けるようにしてください」
ビーは梨々香を見てそう言った。
「わかりました」
梨々香がそう言うと、ビーは部屋から出た。
死と転生・・・ビーはこれを白翔が死ぬことを表していると考えているようだ。
もちろんその可能性もある。だが、その可能性は限りなく低い。
ビーが見た暗示はきっと・・・いや、今は考えるべきではないな。
おやつ時にみんなで居間に集まっておやつを食べていると、御所財政管理所という御所の蔵を利用した公共施設に住むグラディスが来た。
どうやら、深刻な話らしい。
「神護国東部の国外にて旭日の勇者らしき七陽の勇者とラーフィアが交戦していると報告を受けました」
赤眼、金色のインナーカラーが入った黒髪ツインテール。黒色の丈がかなり短い服を着て黒色のショートパンツを穿いた少女のような女性、グラディス・オブ・イェーツは梨々香たちを見てそう言った。
「いつの間に神護国の近くまで・・・まさか界術でも使っているのか?」
白翔は考えながらそう言った。
僕は何かに引き寄せられるように四柱結界の東柱に立って神護国の外を見た
そこで目撃したのは、神護国に接近するラーフィアだった
僕は旭日の勇者として一早く迎撃に出た
次回 四章 死星に起きる異常




