二十八章 死星災害・灼熱エリア
宿幼決戦から五年経った六月十六日。
列車が特殊昇降機に到着した。
列車の側面がゆっくりと開いて外の景色が見える。
私は携帯端末を差し込んで音楽をかける。
そして、アコースティックギターとピアノで奏でられた爽やかな曲を聴きながらハンドルを握った。
「師匠って意外と優しい曲を聴くんですね」
レパルドは運転するカスミを見て笑みながらそう言った。
「意外?」
カスミは前を見たままそう言った。
「ミッケさんとは全く違いますから」
確かに、ミッケは耳が痛くなるような激しい音楽を好む。
リリー・グローニア・ハッゼウとして橘花国に居た陛下がすごく好んでいたらしく、その影響なのだとか。
「死星災害・灼熱エリアに到着します。冷却装置を作動させ、銃座に冷却弾を装填してください」
通信端末から梨々香の声が聞こえた。
「了解」
カスミがそう言うと、レパルドが弾薬ベルトを持って銃座に移動し始めた。
国の外はとっても眩しくて、とっても綺麗。
爽やかでもっと寒かったら文句なしだったのに。
私はそう考えながら這って銃座に移動する。
十三ミリ連装機銃の銃座を掴んで銃座に座り、冷却弾が装填された弾薬ベルトを機銃に取り付ける。
私は運が良い。
なんとなく金持ちを憎んでいたらアウスがレムフィトに負けた。
なんとなくレムフィトを嫌ってたらレムフィトが富の再分配を行って私はお金持ちになった。
土地も、水も、食べ物も、綺麗な服や金銀宝石まで・・・欲しいものは全て手に入った。
でも、大きな物を得た私は失うことを恐れるようになった。
恐怖心から苦楽を共にした友達も綺麗な明日を共に夢見た家族をも遠ざけて全て独り占めした。
でも、東和連合が第二次アウス戦線で敗北したことでアウスは統一されて月浜の傀儡国家になった。
あれだけ守った財産は全て取り上げられ、私は明確に金持ちを憎むようになった。
「・・・」
レパルドは機銃のレバーを二回引いて装填を終えた。
「エリア到着まで十分。総員、射撃開始」
陛下の声が通信端末から聞こえると共に私は引き金を引いて赫色の空に向かって射撃を開始した。
私は運が良い。
謎の襲撃者に襲われて殺されそうになった時、七陽の勇者に助けられた。
私は神軍に保護され、とんとん拍子で烏輪の勇者候補になってまたお金持ちになった。
そして、烏輪の勇者が戦死した後、すぐ烏輪の勇者になれた。
この戦いも必ず生き残れる。
そして、その後もずっと烏輪の勇者として尊敬されながら財を得られる。
私は運が良い。
「はぁ!こわ!」
レパルドは助手席に座りながらそう言った。
車両はとても濃い水蒸気を抜けていく。
死星の所に辿り着くまであといくつこんな場所を抜けなきゃいけないんだろう。
次回二十九章 この世界はあまりに脆く・・・




