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二十七章 多くの者に刻まれた戦争の爪痕

宿幼決戦から五年経った六月十五日。

私たちは旧サウスドラゴニアに向かうため地下の車両基地に集まった。

車両基地にある車両はバーレカ自動車製P-921。

現存する軍用車両はもうこのP-921シリーズしかない。

「これ、生産始まったのいつだっけ?」

アイリアはP-921対空車両を見てそう言った。

「南龍王朝歴千六百五十八年」

ミッケは車両に荷物を載せながらそう言った。

「そんな年代物が今も生産されてるんだね。神護国じゃ見ないけど」

「神護国じゃ自動車は嫌われ者だからね。まぁ、こいつは色々な戦線に投入されてたから悪い話も多い」

ミッケは車両を見てそう言った。

「その上、そこらの軽戦車より頑丈だったから戦場で出会うと心理的圧力が半端なかったって話も聞く」

ミッケはアイリアを見てそう言った。

神護国の国民は驚くほど自動車を嫌っている。

かつての戦争を経験した人たちは戦場病の発作を起こし、小さな子供たちはそんな人たちを見て育つ。

いつも穏やかで一緒に遊んでくれるおばさん、おかあさん、おねえちゃんたちが叫んで必死になって物陰に隠れる。

人間同士が戦ってたなんて思いもしない小さな子供たちは自動車は怖い物、みんなを苦しめる物だという考えを持って成長していく。

今後しばらくは自動車が神護国内を自由に行き来することはないだろう。


午前十時七分。

あたしたちは車両に乗り込んで国外に向けて出発した。

「地下鉄ベジュランダーラ線に列車が参ります。通過列車です、ご注意ください」

アナウンスが流れると、重厚な列車が時速百二十キロで通過していった。

「この列車、どこの企業が作ってるんですか?」

ダイナはヒルデガルトを見てそう言った。

「製造はラグジェパレスカンパニー、開発はエルピー重工と五彩重工の共同開発さ」

ヒルデガルトは本を読みながらそう言った。

「あたし、五彩重工の技術者になるのが小さい頃の夢だったんですよ」

ダイナは笑みながらそう言った。

「まぁ、勉強がからっきしだからダメだったんですけど・・・」

ダイナは少し恥ずかしそうに言った。

「どうして技術者になりたいと思ったんだい?」

しおりを挟んで本を閉じたヒルデガルトはダイナを見てそう言った。

「昔、ミネバン戦線に迷い込んじゃったんですけど、その時とても綺麗なレムフィト人に助けられたんです」

ダイナはヒルデガルトを見てそう言った。

「綺麗な金髪と青い瞳が印象的でした」

青色の地上配備(ちじょうはいび)(がた)戦姫(せんき)に乗ったレムフィト人。

幼いようで大人びた雰囲気が漂ってて何とも不思議な人だった。

そのレムフィト人は、大きな大砲が六つついた青い戦姫を器用に動かして疑似神姫(ぎじしんき)の群れを全滅させた。

「その戦姫を見て技術者になろうと思ったのか」

ヒルデガルトはダイナを見てそう言った。

「はい」

ダイナはヒルデガルトを見てそう言った。

「感覚の麻痺というのは恐ろしいね」

「そうですね」

「そのレムフィト人、名前はなんて言うんだい?」

「レヴァーガーンって言ってました」

「あぁ~あの子か~」

ヒルデガルトは笑みながらそう言った。

「知ってるんですか?」

「色々と派手で有名な人だった。まぁ、今も派手と言えば派手か」

そう話す師匠は少し楽しそうだった。

あの人は戦争を生き残ったんだろうか。

今もどこかで平穏無事に暮らしてるのだろうか。

またどこかで会えたらいいな。

次回二十八章 死星災害・灼熱エリア

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