二十三章 驚異の人口分散
宿幼決戦から五年経った六月五日。
私は御所からの緊急速報を利用してラーフィア戦の間、六柱の魔神に執政を任せる意思を国民に知らせた。
この知らせを受けて案の定、居住船への引っ越しが増えた。
一日で二億人近くが一気に大移動をしてくれた。
「これが狙い?」
白梅は梨々香を見て笑みながらそう言った。
「知らせは事実ですよ。ラーフィア戦は私、白梅、白翔、七陽の勇者を投入するので六柱の魔神に執政を任せるしかありません。人口分散は副産物に過ぎませんよ」
梨々香は白梅を見て笑みながらそう言った。
「このまま十億人まで戻ればいいね」
「そうですね」
ヴァンゼナとフィトミア博士が算出したラーフィアの再活性化予想日時は六月二十日。
手続きなどの都合上、六日間で十億人まで減少することはないだろう。
それに、人口が減って地価が下がれば居住船から神護国に戻りやすくなる。
何か行き来を制限する法律ができない限り、この問題は解決しない。
宿幼決戦から五年経った六月六日。
ここ西照雷は燦水天狐族が二番目に多い土地である。
そんな土地だからか、梨々香陛下がいない間は六柱の魔神が執政を行うと知らされた途端に居住船への移住者が増えた。
辺りが少し寂しくなると同時にこのヤバい閉塞感から解放されると思ってウキウキしてしまう。
「このまま土地とか安くなるんですかね~」
レパルドは地価を見て嬉しそうに笑みながらそう言った。
「その前にあの高層マンション共をぶち壊す手続きだよ。出撃する前に終わらせないと」
カスミはタブレット端末を操作しながらそう言った。
西照雷の土地は借地が多い。これは本当に救いだった。
不動産業者のモア氏が土地を頑として手放さなくて頭を抱えていたけど、今となってはありがたく思うばかりだ。
昼休憩の事件になると、私は弁当を買うため外に出た。
全室空き部屋となり、大家が手放した高層マンションに国土交通局から依頼を受けた建設業の解体専用航空機と飛行翼を装備した百万人近い数の作業者が集合していてもう解体作業が始まっていた。
解体が始まった高層マンションの棟数は二十三棟。
これだけの数がなくなれば一気にさっぱりするだろう。
もしかすると、また雪化粧をしたヘイビオス山が見えるかもしれない。
そんなことを考えながら地元のスーパーマーケットに着いた。
元は燦水大商会所属の商人が経営していたが、中央大商会に所属する大企業に負けて買収された店だ。
以前は派手な装飾をしていて温かみがある店舗だったが、今は倉庫みたいな店舗になった。
極めてシンプルにしたからなのか、商品の価格はビックリするほど安い。
以前とは桁が一つ違うレベルで安い。
そして、中央都市の有名レストランが売り出す弁当をこの西照雷でも売り出してくれている。
味屋ファルム、レストラン・アディ、レストラン・クック、五色料理屋石中、どこも中央都市で有名な料理屋だ。
この中で私が好きなのはレストラン・アディの特製ピタサンド。
南煌炎から来た幼い観光客の要望から生まれたピタサンドは神護国一美味しいピタサンドだと思っている。
「あれ?価格下がってる」
カスミは特製ピタサンドを見てそう言った。
「国内の人口が予想以上に減って余裕ができたらしいですよ」
店員は商品を並べながら嬉しそうに言った。
「電波・電子産業局のお役人さんと国交局のお役人さんが本気を出して移住希望者を移住させたんですって」
店員はカスミを見て笑みながらそう言うと、スタッフルームに戻っていった。
この価格が基本になると思うと嬉しい気持ちで体が満たされそうだ。
これなら昔みたいに祭りに参加してみんなと一緒に騒げそうだ。
次回二十四章 驚異の人口分散がもたらした影響




