二十二章 神護国改革
宿幼決戦から五年経った五月三十一日。
私は御所財政局を通して資金削減のために採用条件の緩和と退役金を受け取れる条件の改正を発表した。
採用条件が緩和されたことにより、解雇処分を受けた者でも他の剣士団に入れるようになった。
それと同時に、戦闘で負傷した場合にのみ退役金を受け取れるということになった。
剣士たちは剣士団法改正法公布前に退役しようと必死になっているらしい。
「受け取った退職金はどこへ行くんだ?たった五十年ぽっちで使い切れる額じゃないだろう?」
水晶板を光らせる白翔は梨々香を見てそう言った。
「物価も地価も五年前より上がっていますからね。毎日良い酒を飲み、毎日良い物を食べていたら数十年で消えます。安くてお買い得と言われる土地を買ってしまったらもう良い生活は出来ないでしょう」
梨々香は書類を確認しながらそう言った。
「土地の値段は税金にビビった商人たちがガッツリ下げただろう?まだそんなにも高いのか?」
「適正価格になっただけで一般人がスッと買える額ではないんですよ」
「まぁ、こんな場所に二十億人もいればそうなるか・・・」
「計画時の倍ですからね・・・国民の生活が豊かであるとも解釈できます。しかし、政府としてはそんな楽観視は許されません。人口増加によって国内の需要が圧迫されれば、国全体が貧困化してしまうからね」
「そのうち農地とかも商人たちが買収してしまいそうだなー」
水晶板についている丸い水晶石を市松模様のように光らせる白翔は悩ましそうに言った。
「随分と上手くなりましたね」
梨々香は光る丸い水晶石を見て笑みながらそう言った。
「え?まぁね」
白翔は梨々香を見て嬉しそうに笑みながらそう言った。
宿幼決戦から五年経った六月一日。
御所を出た白梅が北方剣士団に到着したようだ。
剣士団法が改正・公布されたことを伝えてすぐに帰るとメールが来た。
「剣士団法の改正が済んだから。よろしく」
白梅はアイリアを見てそう言った。
「はい、わかりました」
アイリアは白梅を見て笑みながら言った。
一方、法律の改正に反発していた執政部にはグラディスと警察隊が向かってくれた。
「久しいな」
杖を持ったグラディスは受付を見て笑みながらそう言った。
「グ、グラディス様・・・」
受付職員はグラディスを見て笑みながらそう言った。
別の受付職員は受話器を握って内線で通話を始めた。
すると、奥の部屋から執政部の官僚が出てきた。
「本日は何用で?」
執政部の官僚1がグラディスを見てめんどくさそうに言った瞬間、グラディスが杖で床を突いた。
顔を青くした執政部の官僚1は腰を抜かして倒れた。
「執政部の幹部連中をここに呼んでくれ。大切な話がある」
杖を摩るグラディスは執政部官僚1を見てそう言った。
グラディスの様子を見て焦った執政部の官僚たちは急いで上司を呼びに行った。
「グラディス様、部下が申し訳ありません!」
急いで駆け寄って来たエリー・V・ヘリズランドはそう言いながら慌てて頭を下げた。
「私がここへ来たということは、お前たちがどういう状況に立たされているかわかるだろう?」
グラディスはエリーを見てそう言った。
六柱の魔神、煌金岩グラディス。
俗世の大権の一つ、栄冨の権を獲得した幻獣。
全ての富はこの神から生まれ、この神に集約する。
「な、何のことですか・・・?」
冷や汗をかいたエリーはグラディスを見てそう言った。
「自首するなら今の内だ。白翔が動けばお前たちは確実に抹消刑が課せられる」
グラディスはエリーたちを見てそう言った。
「私たちは何もしてないですよ?」
「最後までとぼけるのか・・・同じ組織に居た元同胞として助け舟を出したんだがな・・・」
「非常に残念だよ」
グラディスがそう言うと、白い風が壁ごと窓を破壊した。
そして、そこから大量の警察官が入って来た。
「・・・」
ヴェルベサたちは白翔率いる警察隊を見て冷や汗を垂らした。
「横領、職権濫用、国家反逆・・・これらの罪で君たちを連行する」
着地した白翔はヴェルベサたちを見てそう言った。
次回二十三章 驚異の人口分散




