十八章 北方剣士団に迫る危機
南方剣士団はほとんどの剣士が外に出る。
剣士団に残るのは緊急事態に対応するために残る精鋭揃いの待機班と日替わりの事務係だけだ。
ほとんどの剣士が剣士団の外に出て住民の困りごとを解決したり奔走する。
新米剣士と共に町に出た私は書類の不備を指摘されて困り果てていた商人から話を聞いている。
「北方剣士団の剣士が書類に不備があるから受け付けないって・・・」
困った商人は今にも泣きだしそうで本当に可哀想だ。
「特に不備はないんですけどね・・・」
私は書類を何とも確認した。
記入ミス、印鑑の押し間違え、コピーの貼り忘れ、神護国正法を思い出しながら何度も何度も確認した。
まさかと思って印鑑が本物か確認させてもらったが本物だった。
私は全て確認を終えると、「受付させますんで」と言って商人を安心させた。
商人は何度も頭を下げて感謝の言葉を述べていた。
証明証は発行でき次第郵送してくれればいいとのことだったので新米兵士たちと他の悩みを聞いて回ることにした。
しかし、妙なことに困っているのは商人ばかりだった。
公的機関の業務が滞っていると信じたいが、北方剣士団は四方剣士団の中で最も信頼がない。
ほんのりと期待するだけにしよう。
昼になると私たちは一度剣士団に戻って来た。
南方剣士団の他の剣士たちも戻って来たのだが・・・私の期待は裏切られたようだ。
南方剣士団の剣士たちはたくさんの書類を預かっている。
「ウッ・・・」
この反応、この表情、ただ面倒でサボってきただけだな。
北方剣士団はこれから変わっていくんだろうけど、今すぐに変わらないと北燦雪の民が可哀想だ。
「確認したけど不備なかったよ」
私は北方剣士団の事務係を見て問い詰めるように言った。
ここで謝ればちょっとの説教で済ませようと思ったけど、こいつから帰って来た言葉は呆れるようなものだった。
「あ、いや・・・北方には北方のルールがあるんで・・・」
北方剣士団の事務係はミッケを見て苦笑いしながらそう言った。
こうなったらもう許さない。
何が何でも仕事をさせる。
「へぇ~四方のルールは神護国正法より上なんだ」
「いやぁ~・・・まぁ、その・・・」
「いいかい?楽をするために難癖をつけてこういう書類を拒んで困るのは君たちが所属する北方剣士団だ。お前さん方も私と同じように税金から給与を貰ってなにも困らない生活をしているのだろう?やるべきことはやらなくちゃダメだ」
「・・・受理します・・・」
北方剣士団の事務係はめんどくさそうに書類を受け取った。
北方の剣士たちに書類を渡すと、私たちは南方剣士団用の部屋に戻って剣士たちとご飯を食べることにした。
今日はほぐしたホタテとチキンのピタサンド。
陛下に教えてもらった疲れがとれてたんぱく質も摂取できる超美味い最高フードだ。
最近、六十万トンっていう途轍もない量のホタテが神護国に入って来てホタテの価格が大暴落したんだ。
どうして急にそんな量が入ってきたかって言われると理由は簡単で、この俗世の外にある居住船で育てていたホタテが採れる時期になったからってだけ。
消費者としてこんなに嬉しいことはないね。
私たちがご飯を食べていると、アイリアが話しかけてきた。
「あの仕事量は可哀想じゃない・・・?」
まぁ、通常であれば当然の質問だ。
他の剣士団から来た仕事で残業するなんてたまったもんじゃない。
でも、私たちが受け取ったのは、本来北方剣士団がやらなければならない仕事だ。
期限内にできなければ残業する。そうしないと大量の商人たちが経営者証明証を失って北燦雪の経済が停滞することになる。
そろそろアイリアにも理解してもらわないとね。
「できなければ明日、明日できなければ明後日やればいい。別に無理してやらなくても良いんだよ」
ミッケはホタテとチキンのピタサンドを食べながらそう言った。
「間に合わなければ評判が下がって、商人たちが商売できなくなって、問題になって、御所の神様たちが動くだけだから」
ミッケはアイリアを見てそう言った。
「・・・ごめん、もっと危機感持って頑張るよ」
アイリアはミッケを見て申し訳なさそうに言った。
「よし。仕事に集中するためにちょっと菓子持っていきな」
ミッケはそう言いながらピタサンドを包み紙の上に置いた。
「チョコの菓子あったよね?」
ミッケは南方剣士団の副総長を見てそう言った。
「はい」
食べかけのチキンのピタサンドを持った南方剣士団の副総長はミッケを見てそう言った。
「いくつかアイリアに渡してあげて」
「わかりました」
南方剣士団の副総長はそう言いながら立ち上がり、お菓子箱を持った。
「はい、好きなだけ持ってって」
南方剣士団の副総長はアイリアにお菓子箱を差し出してそう言った。
「頑張ってくださいね!」
南方剣士団の副総長はお菓子を手に取るアイリアを見て笑みながらそう言った。
「うん、ありがとう」
お菓子を手に取ったアイリアは南方剣士団の副総長を見て笑みながらそう言った。
次回十九章 南北合同訓練