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十六章 曙陽の勇者が来る

宿幼決戦から五年経った五月二十四日。

私はタブレット端末を操作しながらため息をついた。

執政部の報道班は華千﨑一族が命令した結果、一人の勇者が死んでしまったと報道している。

しかし、報道に対する国民の反応は冷たい。

テレナに触れる者は極少数で、残りは執政部に対するバッシングしかない。

北燦雪で次期勇者候補が話題になると、テレナの話題は一切出なくなった。

(全く育てられなかった・・・私のせいで・・・私が甘かったせいでテレナは死んだ・・・)

私はそう考えながら木刀を振り続ける。

「カルティナーレ総長・・・ミッケ・カーリン南方剣士団総長と南方剣士団の剣士たちが来ております」

北方剣士団の剣士1は木刀を振るアイリアを見て恐る恐るそう言った。

「・・・そうか、今日からか」

南煌炎事件で全損した南方剣士団が建て直されるまでミッケたちは北方で活動する。

しかし、ミッケとしっかり話すのは何だかんだ久しぶりだ。

総長になってからはお互い毎日が忙しく、中々話せなかった。

「こうやって話すのは一年ぶりくらいだね」

アイリアはミッケを見て笑みながらそう言った。

「そうだね」

湯飲みを持ったミッケはアイリアを見て笑みながらそう言うと、お茶を飲んだ。

「・・・」

アイリアはミッケを見ると、黙ってうつむいた。

「執政部が絡んでなかったら、今頃テレナの追悼祭でうるさくなってただろうね。強い子だったから惜しいよ」

ミッケはそう言うと静かに気付かれないように黙祷した。

きっと、いつものミッケならたらればなんて語らないだろう。

確証なんて何もないのに語り出したらキリがない無駄な時間が嫌いらしいから。

「失うのは辛い。得た時の嬉しさはすぐに薄れていく癖に・・・」

ミッケは心の傷を隠すように笑んだ。

きっと、今も師匠だったミューテ先生のことを思っているのだろう。

私も今の今まで忘れたことは一度もない。

「カルティナーレ総長、本日の予定です」

私たちが話していたその時、うちの剣士団の剣士が予定表を持ってきた。

「え?北方は剣士たちが予定を決めているんですか?」

これに南方剣士団の剣士が驚く。

心底驚いているようだ。

「うん、そうだけど?」

私がそう答えると、「サボり放題じゃん・・・うらやましッ!!」と南方剣士団の剣士が心底羨ましそうに言った。

そう言った二人の剣士の腹をミッケが軽く小突いた。

とても仲がよさそうで、剣士団と思えないほど和気藹々としていて羨ましく思った。

私も剣士団をこんな感じの組織にしたい。

「・・・」

北方剣士団の剣士1はミッケたちを見ると、ハッとしてアイリアを見た。

「良し!!今日から北方剣士団の予定は私が決める!」

目を輝かせたアイリアが笑みながらそう言うと、休憩している北方剣士団の剣士たちが急いでアイリアを見て冷や汗をかいた。

「か、カルティナーレ総長・・・」

北方剣士団の剣士1はアイリアを見て冷や汗を垂らしながら言った。

「良いじゃないか。アイリアも自分で予定が組めて剣士たちも負担が減ってウィンウィンってやつだ」

ミッケはアイリアたちを見て笑みながら言った。

「・・・」

冷や汗をかいた北方剣士団の剣士たちは黙り込んだ。


宿幼決戦から五年経った五月二十五日。

一部の北方剣士団の剣士たちが私を排除しようと動き始めたこの日、四方の剣士団に次期契約を知らせる書類が届いた。

成績が悪い者は解雇、成績こそ悪くないが問題を起こした変わり者は剣士から予備剣士に降格、それ以外は契約継続となる。

「レヴァン・クリス・スーザン、レイト・ロイド・スミス、エリザベス・オブ・ロード、クレア・ド・ミラージュ」

アイリアは四名の剣士を見てそう言った。

「はい」

四名の剣士はアイリアを見てそう言った。

「御所の法務局から次期契約を知らせる書類が届いた。残念ながら、君たちは成績不振により解雇だ。荷物を纏めて出ていけ」

アイリアがそう言うと、北方剣士団の剣士たちと四人の剣士が慌て始めた。

「解雇なんて!正当な理由がないとできないはずだ!!」

焦る北方剣士団の剣士1はアイリアを見て怒鳴った。

「そうだ!!」

焦る北方剣士団の剣士2はアイリアを見て怒鳴った。

「成績不振により解雇。聞こえなかった?」

アイリアはそう言うと、叩くように机の上に資料を置いた。

「・・・」

四人の剣士は成績業を見て冷や汗をかいた。

「た、退役金は・・・?」

冷や汗を垂らす北方剣士団の剣士3はアイリアを見てそう言った。

「その紙を見れば嫌でもわかる」

アイリアは北方剣士団の剣士3を見てそう言った。

「せ、せめて!せめて退役に!!」

冷や汗をかいた北方剣士団の剣士4はアイリアを見て必死にそう言った。

「文句があるなら中央都市まで行って白梅陛下に言ってくれ。それができないなら荷物を纏めてさっさと出ていけ」

剣士たちは落胆しながら去った。

次回十七章 南方の剣士は働き者


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