十五章 声
午後五時七分。
テレナ出撃の知らせをエリーから聞いた私はアージヴァイズ・二コルカンパニーとの協議を途中でやめて神護国の外に出た。
やはり梨々香に相談するべきだっただろうか、そんなことを考えながら車を走らせる。
しばらく走り回って不自然に寒冷地化したエリアと闇化生物を発見した。
ラーフィアはここに居た。神気濃度計測機が示す数字がそう語っている。
「・・・」
最上大業物日炎を握ったは私は一匹の闇化生物を見た。
そいつは首が太いダチョウのようなのような姿で腕に特別な傷があった。
「・・・」
闇化生物・鳥たちはアイリアに向かって走った。
「天道!灼華炎冠!!」
最上大業物日炎を握ったアイリアはそう言うと、勢いよく縦に一回転した。
最上大業物日炎から炎が放たれ、炎が円形に広がる。
広がった炎は闇化生物・鳥を焼き、聖陽水晶に変えた。
「・・・」
最上大業物日炎を握り直したアイリアは残った闇化生物・鳥を見ると、闇化生物・鳥に最上大業物日炎を振る。
「師匠」
特別な傷がある闇化生物は確かにそう言葉を発した。
私は・・・闇化生物に振った最上大業物日炎を寸前のところで止めてしまった。
手は震え、膝が今にも崩れそうだ。
私はただ、逃げていく闇化生物を見るしかなかった。
様々な思考が頭の中を巡る。
ただの真似事か、逃げるための真似事か。
私は遠ざかっていく鳥型の闇化生物を見ながら崩れるように座った。
その時、一台の車両が近くで止まった。
「ラーフィアは?」
窓を開けて外に顔を出したミッケはアイリアを見てそう言った。
「・・・」
アイリアはうつむいたまま黙り込む。
ミッケは私がラーフィアと戦ってるって思ってわざわざ南煌炎からここまで来てくれたんだ。
感謝を伝えなきゃいけない。
でも、言葉が出ない。
苦しくて、今にも潰れそうだった。
私が黙っているとミッケが車両の重厚なドアをノックするようにコツコツと叩いた。
「気持ちはわかる。だが、国外に出たなら状況を説明しろ。七陽の勇者なら責務を果たせ」
ミッケはアイリアを見てそう言った。
「・・・私が着いた時には・・・もうラーフィアは・・・いなかった・・・出撃したテレナは居なくて・・・闇化生物だけが居た・・・」
アイリアは泣きながらそう言った。
「闇化生物の種類」
「鳥型・・・」
「色」
「紫ベース・・・」
「何か特徴は?」
「テレナにあった・・・傷があった・・・師匠と・・・・・・声を発した」
「やはり、紫ベースは知能があるのか」
ミッケはタブレット端末の画面を見ながらそう言った。
「帰って少し休め。私は御所に記録を送ってくる」
ミッケはそう言うと、ハンドルを切ってアクセルを踏んだ。
南方剣士団の車両は神護国に向かって走り去った。
私はふらつく足で車に乗り込んだ。
少し車の中で休もう。今は運転すらできない。
-回想終了-
「カルティナーレ総長・・・ミッケ・カーリン南方剣士団総長と南方剣士団の剣士たちが来ております」
北方剣士団の剣士は木刀を振るアイリアを見て恐る恐るそう言った
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