十四章 冷酷な銀の雨
小宴会終了後、ウェンディに連れられて御所に国外監視塔の職員が来た。
何か大変なことが起きたらしい。
「神護国の西部から百七キロ先にラーフィアが現れ、朝陽の勇者様率いる剣士部隊が対処を行っていました」
国外監視塔の職員は梨々香を見てそう言った。
「誰が指示を出したか把握していますか?」
梨々香は国外監視塔の職員を見てそう言った。
「執政部です」
「また執政部ですか・・・こんなバッシングの中よくやりましたね」
梨々香は呆れたように言った。
「奴らは利益を失った腹いせに陛下たちを下げ始めたのでしょう。本当にどこまでも醜い奴らですわ」
腕を組んだ黄眼、薄金髪ツインテール。黄色の服を着て黒いミニスカートを穿いた女性、ウェンディ・オブ・ブラウンは梨々香を見てそう言った。
剣士団の行動は七陽の勇者が決めるという仕組みなのだが、改めようとした矢先にこれか。
「結果は?」
梨々香は国外監視塔の職員を見てそう言った。
「全滅です」
国外監視塔の職員は梨々香を見てそう言った。
「執政部は執政部が指示したという事実をもみ消そうとしています!きっと、陛下が命令したと!」
冷や汗をかいた国外監視塔の職員は梨々香を見てそう言った。
「そうですか。少し騒がしくなりそうですね」
梨々香は頭を抱えてそう言った。
-回想-
宿幼決戦から五年経った五月二十三日、午後一時五十分。
私は執政部の副長官、エリー・ヴィニ・ヘリズランドからラーフィア発見の知らせと出撃命令を受けて国外に出た。
師匠は居ないけど、きっとすぐに来てくれる。
それまでラーフィアを足止めしないと。
ラーフィアが居ると言われる場所に向かっていたその時、アウスやレムフィトに居た頃に経験した強烈な寒さに襲われた。
それからすぐに車のエンジンが停止して動かなくなった。
エンジンオイルが原因か、燃料が原因か・・・どっちが原因でも今は対処のしようがない。
ここからは歩いていくしかない。
「・・・」
剣士を引き連れたテレナは冷や汗を垂らしながら白い息を吐く。
空気を吸う度肺が凍りつきそうだ。
ラーフィアはまだ見えない。
果てしない絶望感、アウスで捕虜になった時を思い出す。
どれほど歩いただろうか。
冷たい濃霧の中に赤色の光が見えてきた。
「あれがラーフィアか」
私たちはやっと目的の存在に会えるとわかって喜んだ。
後は時間稼ぎをしながら師匠が来るのを待てば・・・
ラーフィアを初めて見た私は驚かずにはいられなかった。
赤い髪、氷のような銀色の瞳、顔にあるヒビのようなものが銀色に光る人形のような少女。
こんな見た目だとは思ってなかった。
「・・・」
最上大業物朝陽輝霧を握ったテレナはラーフィアを見ながら最上大業物朝陽輝霧を構える。
「・・・」
ラーフィアは冷たい神気風を放ちながら飛び上がり、渦巻く銀色の雲海の中に消えた。
「逃げた・・・」
私はラーフィアが居た場所に立って渦巻く銀色の雲海を見つめる。
渦巻く銀色の雲海を見ながらどうしようかと考えてた時、渦巻く銀色の雲海が点滅を始めた。
その瞬間、銀色の氷塊が雨のように降ってきた。
途轍もなくゆっくり・・・まるで映画のスローモーション演出みたいだ。
私は神護国の外に出た
やはり梨々香に相談するべきだっただろうか、そんなことを考えながら車を走らせる
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