十二章 神護国の正常化を目指して
シゼルとの通話を終えた私は内線で白翔たちを呼び出した。
白翔たちは急いで御所本邸にきた。
「メンテナンス中に稼働する通信基地を発見しました」
梨々香は白翔たちを見てそう言った。
「違法通信基地か」
白翔は梨々香を見てそう言った。
「全員を即時逮捕し、通信基地にある記録を一つ残らず全て持ってくるように」
梨々香はそう言うと、立ち上がって神刀赤閃を握った。
「・・・」
警察官たちは驚きながら神刀赤閃が生み出した界を見る。
「了解」
白翔は笑みながらそう言った。
「総員、突撃!!」
白翔はそう言いながら界に向かって走る。
宿幼決戦から五年経った五月十八日。
執政部が運営する違法通信基地の存在とそこに残された検閲記録が御所からの緊急速報として国民に届けられた。
アージヴァイズ・二コルと繋がっている複数の企業が起こした大規模詐欺事件の記録、南煌炎事件の記録、大小合わせて数百件の不正が国民に知らされた。
国民が一連の事件を知ると、アージヴァイズ・二コルに対する世論が大きく傾いた。
執政部は大バッシングを受け、宿幼決戦の英雄とまで呼ばれたアージヴァイズ・二コルの信用は地に堕ちた。
アージヴァイズ・二コルが必要であると説いていた戦時の税金免除制度を問題視する国民が増え、制度の廃止を訴える国民まで出てきた。
中々に嬉しい流れだ。
これで国家予算が増えてくれれば僕たち国家公務員の給料も上がる。
十四リズの安月給とおさらばできるってわけだ。
宿幼決戦から五年経った五月二十日。
居住船の製造と販売、その中に広がる衣食住の事業で覇権を握り、中央大商会のNo.2になった山下が私の不動産屋に来た。
地方の凄まじい物価高、家賃高を利用して儲けようという算段らしい。
「東輝水二百五十一番地の二十七は?」
緑眼、薄緑色髪ショートツインテール。薄緑色のカッターシャツを着て黒いミニスカートを穿いた少女のような見た目の女性、山下 ゆかりはビーを見てそう言った。
「一ヶ月三百八十リズ」
ビーはゆかりを見てそう言った。
「少し高いな・・・」
ゆかりは携帯端末を見て少し考えてそう言った。
「じゃあ、東輝水七百八番地の八十一」
ゆかりはビーを見てそう言った。
「一ヶ月三百五十リズ」
「かなり地方なのに・・・」
ゆかりは携帯端末を見てそう言った。
「神護国総人口二十億の時代だ。土地はどこも高いんだよ」
「よし、わかった。東輝水で一番良い土地を貸して」
ゆかりは覚悟を決めてそう言った。
「東輝水一番地の三が一番良い土地だよ」
「よし、そこにする」
ゆかりはビーを見て笑みながらそう言った。
「地方に進出するの、山下だけじゃないだろう?」
ビーはタブレット端末を操作しながらそう言った。
「もちろん」
「はぁ・・・忙しくなりそうだ」
ビーはため息交じりにそう言った。
「はい、各情報を記入して」
ビーはタブレット端末を差し出してそう言った。
宿幼決戦から五年経った五月二十二日。
生活保障法と一部税金に関する法律が変わることが国民に通達された。
改正法が公布されるのは同年六月一日。
その日から物価に上限がかけられ、家賃を独断であげることが禁止され、御所と国営の教会を除く全ての土地に税金がかかるようになる。
次回十三章 国民大審判、そして、お疲れさまでしたの会