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Chapter1-Section7 『IMPERFECT BRAVES』

 そこは空っぽなトラックの荷台のような場所だった。円形の小さな窓があった。外を覗くと果てしない海原が見え、海の遥か上にいることが分かった。

 なにかしらの航空機の機内にいるらしい。


 突然、浅黒い肌の女が目の前に現れた。まっ黄色の派手なゴーグルを首にぶら下げている。


「新入り。あまりキョロキョロするのはお勧めしないわね。戦場じゃ落ち着きのない奴から倒れていく。分かる? あなたのことよ」

「おいエミリアーノ。そんなに言ってやるなよ。今回はこいつのデビュー戦だぜ? 緊張するのも無理はない。俺達が頼もしく引っ張ってやらないと。優しく、カッコよくな。あとおまえ、また酒臭いぞ」

「カウボーイ野郎は黙ってなさい」

「おっとそこまでだ! よくも俺のいかしたハットを馬鹿にしたな……!」


 カウボーイハットを被った男が歩み寄ってきて、女を睨みつけた。


「そのセンスの欠片もない脳みそに銃弾をぶち込んでやりたいところだが、そういえば俺は優しくカッコいい男だった。良かったな。今回は許してやる。でも一回だけだ。次はないぞ?」

「黙れ。カウボーイ野郎……!」


 男はやれやれと首を振り、お手上げだと後ろに下がった。


『スタジアムに到着しました。プレイヤーの皆様は、扉が開きましたら速やかに降下してください』


 機内にアナウンスが流れた。すると奥からぞろぞろと人が現れた。背格好から服装まで、何もかもが特徴的な人達が扉の前に列をなした。

 彼らはなにやら会話をしている。


「なあ。ジャスティスの野郎をぶちのめしてやろうぜ? 前回はコテンパンにやられたからな」

「復讐とは最も非合理的な手段だ。勝利の為の最善を尽くせ」

「は! そう言うと思ったぜ! のりが悪いなあマジで。リベンジは気持ち良いぜえ? なあハンゾウ。おまえもそう思うだろ? ずっと黙ってねえでなんか言えよ!」

「興味ない。目の前の敵を倒す。それだけだ」

「あーあ。やだやだ。陰気な野郎どもだこと。チーム選びを間違えたかなー」

「無駄口はそこまでだ。もう一度言う。勝利の為の最善を尽くせ。行くぞ!」


 すると扉が開き、轟々と吹き荒れる風が機内に入った。彼らはなんの躊躇いもなく、列の先頭から順番に機外へと飛び降りていった。


「私達も行こう」

「そうだな。空の旅も悪くないが、このまま帰還したらお偉いさん方にどやされちまう」

「新入り。あなたは私達の背中を追いかけてくればいい。最初のうちはね」

「お気持ちは察する。デビュー戦は恐いだろう? 俺も最初の試合は三回もちびりそうになったもんだ。ここだけの話……実際ちょっとちびった。おっと言い忘れていたが、ちゃんとオムツはしてきたか?」

「私のあとに続いて」


 GO! という掛け声と共に女は飛び降りた。続いて男も楽しそうに声を張り上げながら飛び降りていく。


 出口のすぐ前に立ち、下を見やると、荒廃した市街地が見えた。

 飛び降りるのを躊躇っていると、誰かに背中を押され外に放り出された。風の抵抗を受けながら後ろを振り返り見上げると、機内から人型の機械が顔を出して、片手を大きく振っていた。


 地上に落下する直前、なにか特殊な力によって衝撃を和らげたようだった。しかし全ての衝撃を抑えることが出来ず、地面を何回転も転がり建物の壁に激突した。

 呻きながら顔を上げると、心配そうに覗き込む二人の姿があった。


「グラビティの扱いがまだまだね」

「気にするな。最初はみんなこんなもんだ。けど、ここでリタイアはいい笑い者だぞ? もちろん俺は笑わないけどな。いや、やっぱ笑うかも」

「立てるわよね?」


 差し出された手を掴むと引っ張り上げられた。


「行きましょう。ゲームは始まっている」


 そこで映像が切り替わった。

 様々な地形で多様なキャラクター達が戦闘をするシーンが次々に流れていく。銃を撃ち、グレネードを投げ、なにか特殊な能力のようなものを使っていた。


 そして最初のキャラクター達に映像は戻った。


「最後の敵ね」

「敵は二人しか残ってないみたいだ。楽勝だな」


 倉庫の屋根から三人を見下ろす二つの影があった。


「油断禁物って言葉、あなた知ってる?」

「もちろん知ってるぜ? なんかその……悪くない言葉だよな?」


 足元に何かが転がって来る。


「おいおい……! グレネードだ! 避けろ!」


 三人は一斉に駆け出した。グレネードは後方で爆破し、爆風が背中を押した。上から雨のように浴びせられる銃声をなんとか躱しながら倉庫の中に滑り込んだ。


「お返しよ!」と女は真上にグレネードを放り投げ天井を破壊した。足場を無くした二人が落ちて来る。


 そこからは倉庫の中で撃ち合いになった。その撃ち合いに勝利し、倒れた敵の前に三人は立った。


「ほら言ったろ? 楽勝だって」

「今回はね」


 一発の銃声が倉庫に鳴り響き、女は地面に倒れた。


「おい! エミリアーノ!」

「くそ! やられたわ。敵がまだ近くに隠れてる!」


 女は苦しそうに胸を押さえている。


「嘘だろ……! そこか? あそこか? ここか!」


 男はこっちに銃を向けて来た。


「悪い。新入りか……! 足音がしたからつい――」


 また銃声が鳴ってカウボーイハットの男も倒れた。


「馬鹿ね……」

「面目ねえ……。でも、あそこだ……!」


 男が指差す方向を見ると、倉庫の外から銃を向ける人影を見つけた。


「任せたわよ! 新入り……!」

「ああ。そうだやっちまえ。美味しいところは全部くれてやる!」


 銃を構えた。相手の銃身もこちらを向いている。

 相手の姿と自分の姿が交互に画面に映し出される。何度も。


 そして、引き金を引いた。


 けたたましい銃声と共に『IMPERFECT BRAVES』のゲームロゴがモニターに大きく映し出され、ムービーは終わった。




「映画みたい……」


 私はつぶやくと、30秒ほどその動画の余韻に浸っていた。

 オープニングムービーと言えばいいのだろうか。ゲームを起動してすぐに流れた3分ばかしのその動画は、さながらアクション映画を観た後のような満足感があった。

 ようやく余韻から解放されると、タイトル画面でクリックを押して次の画面に進んだ。


おまけ

『IMPERFECT BRAVES』ストーリー


気の遠くなるような遥か未来の話。

惑星ゼオンに住んでいた人類は突如襲来した未知の力を持つ種族に星を追い出された。人類は地球に戻るが、そこはもう彼らが生存できる環境ではなくなっていた。コロニーを造り、ようやく生き残れる環境を整えた時には人類の数は100分の1まで激減していた。そんな中でコロニーの外の環境に適応した特別変異の人類が現れ始める。彼らは特殊な能力を持ち、惑星ゼオンに襲来した未知の種族にも対抗しうる可能性を秘めていた。力に目覚めた選ばれしもの達は来るべき大戦の時に備えバトルロイヤルトーナメントで己を鍛え上げる。

まだ不完全な勇者達は真の勇者となるために今日も戦う。

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