Chapter4-Section67 ひとりじゃ無理だぞ?
「やめい。おまえら……!」
突然にゲームに割って入って来たのはRyotaだった。
リョータはインパーフェクトの元プロ選手で、今は公式大会の解説の仕事をしている。過去には、俺が主催したカスタム大会にプレイヤーとして呼んだこともある。
「もう夜中回りきって朝の8時になってんだぞ。ふたりで何時間タイマンしてると思ってんだ。15時間だぞ? 15時間! 休憩もとらず、飯も食わず、ぶっ続けで……! まじでどっちか倒れちまうよ」
いきなりやってきて、興ざめることを言う。
「それをするって言ってんだよ。止めんな」
「それをやめろって言ってんだよ。寝ろ」
なにを言ってんだよこいつは。敗けっぱなしで終われるわけないだろ。
「おいおい。おまえは俺のお母さんか? いつからお守りしてくれって頼んだよ」
「俺が言ってやらねーとおまえら止まらないからだろーが。俺だけじゃない。視聴者までドン引いてんの! おまえらに! 俺の配信にやってきて止めてくれって泣きついてきてんの!」
「なんでこの時間に配信やってんだよ! じじいかよ!」
「うるせえ! いま関係ないだろ!」
「とにかくじじいは口出してくんな」
「どうしてもやめないんだな?」
「やめないって言ったらどうするよ?」
「やめないんだったら……」
少しの間を空けてからリョータは言った。
「今からおまえの住所にUber Eatsで死ぬほど牛丼を送りつける」
「は?」
「全部ふつうの牛丼だ。紅ショウガは不要。味変なんかさせねーぜ?」
「おいやめろ! なんだその陰湿すぎる嫌がらせは! 下手したら配達員に住所ばれるだろーが!」
「知ったことか! ぶっ倒れるより全然ましだろ!」
「どっちもどっちだぞ!?」
「あのさ」リンクスが口を挟んだ。
「それでいいから早く次の試合やろうよ」
「だまってろ戦闘狂が!」
俺としたことが、つい面白くもないツッコミを入れてしまった。たしかに疲れが溜まっているらしい。
「あー分かったよ。興がそがれた。今日はこのへんにしておこうか……」
「えー……」
リンクスは不服そうだ。
「牛丼嫌いなの?」
「そういう問題じゃねえ!」
「そっかー。残念だな」
ぶつぶつと不満を言うが、案外あっさりとリンクスはゲームから抜けた。
リンクスが去ったあと、俺は配信を切った。
「何敗した?」
リョータが尋ねる。
「知らね。いちいち数えてねえよ」
「じゃあ、何勝した?」
「13……」
「かぞえられる数ってことか」
陰湿な聞き方をしやがる。
「どうだ? 自分が井の中の蛙だと気づいた気分は」
「うるせえよ。それでも俺が最強だ。いずれ外のもんも全部、俺が食らいつくすからな」
「野蛮なやつだな」
リョータは呆れたと言わんばかりにため息をついた。
「井の中から這い出る術も知らないやつが、どうやって大海の怪物どもを食らうんだ?」
「力づくで這い出てやるさ」
「ふーん。力づくねえ」
「なんだよ」
「ひとりじゃ無理だぞ?」
「あ?」
今は気分がわるい。ゲームを切断してやろうと思ったが、強くなるためならと踏みとどまった。俺の憧れも、きっとそうする。
「どういう意味だ?」
「おまえ達はまだチームになってないってことだ」
「どうしてチームの話が出てくる? それとこれと関係あんのかよ?」
「あると思ったから言ってんの。これでも俺はおまえらの先輩なんだぜ?」
リョータは世界大会にも出場した過去もある元プロ選手だ。インパーフェクトの競技シーンにおいて、少なくとも俺よりは理解が深いだろう。
「おしえろ」
「うん?」
「ゼロから百億まで具体的に教えろ。俺に、俺たちに何が足りないのか」
***三雲進***
プロリーグ開幕のちょうど二週間前。今日からは、スクリムと呼ばれる、本番と同等環境の練習試合が行われる。
このスクリム期間中に、本番に向けた戦略の構築やチームの調子や連携の練度を確認するというのが、大会の通例となっている。
結局このスクリムの日まで、三人でゲームをすることは無かった。チームの練度もくそもない。今の俺たちに何が足りていないかも分からない。
それでも月日は待ってくれない。スクリムは始まった。
「やっほー。元気してた? 話すのは久しぶりだね」
「久しぶりってほどじゃないでしょ。一週間くらい」
翔琉はいつもどおりのようだ。
「よっしゃあ! 今日も楽しもうぜー!」
ラヴィが叫ぶ。
「うわ」翔琉はどんよりとして言った。「このやかましさ懐かしい」
「はい。懐かしいって言ったー」
俺はその綻びを逃さない。
「久しぶりってほどだったねー!」
「うるさいなー」
そのやり取りに、ラヴィは、がははと笑った。
「あー、もう。二人ともほんとにうるさい」
雰囲気は思っていたより良好だった。このまえの負けを引きずっていない。
まだ俺たちは自分達に何が足りていないかなんて分かっていない。それでもできることは、ただ目の前のことをひとつずつこなしていくことだけだ。このスクリムを出来る限り質の良いものにしよう。
そうやって、不安に駆られる脳みそを切り替えた。
「昨日のチャットでも伝えたけど、今日練習したいことをざっくりと予習しようか。まず初動の降りる場所は『デザートステーション』。で、そこからの動きは――」
「ねえ。そこなんだけど」
翔琉が話を遮った。
「初動の降りる場所変えない?」
「は? どこに?」
「オービタル・シティ」
背中から冷たい汗をかいた。敗北の歴史が語っている。その場所はいけない。俺たちは痛いほどに学んだはずだ。
「翔琉さ、おまえ、言っている意味分かってんの?」
俺はなにを悠長なことを考えていたのだろう。知っていたはずだ。こいつはそういう男だと。
「もっかい、やり合おうよ。『RAVEN'S CROWNと……!』
こいつは、それが破滅への道だろうと、構わず進むようなやつだった。
中途半端な形となってしまいますが、この話は一時的に、ここで打ち切りとさせてください。再会の目途はありません。
理由としましては、今後も人気が伸びるように思えず、モチベーションが低下してしまったためです。
こんな話にブックマークを付けて頂いた方々には期待を裏切る形となってしまい、大変申し訳ありません。




