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Chapter3-Section58 忍者

 

 初動のファイトがないおかげで、3試合目の始まりは穏やかだった。

 今回の戦場の舞台となるマップ『スカイ・トーキョー』は高い建物が多い。今回、俺達『CONTRAILコントレイル』が最初の降下場所として選んだランドマーク『JOYスタジオ』は三階建ての建物だが、これより高い建物なんて、マップのそこかしこにある。


 日本をモチーフにしただけあってか『JOYスタジオ』の壁には美少女や美青年のアニメイラストが描かれている。さらに、三階の中央に仰々しく設置されたタッチパネルを押すと、屋上の煙突のようなオブジェクトから桜の花火が打ち上がる。


「ぶち上げてこうぜ!!」


 ラヴィがタッチパネルを押したのだろう。

 空に赤い花火が上がった。パチパチと火花が地上に降りる。

 これをしても、特にメリットはない。本当に花火が上がるだけだ。


 物資を拾い集めると、三雲の先導でマップを移動する。

 三雲は、ここから真っ直ぐ南の場所を最終安地(最終の安全地帯エリア)だと予測したが、やけに西側に大回りして移動をしているように感じる。


 最終安地を予測した後は、素早い移動が大事になる。なぜなら他のチームに最終安地内の強いポジションを取られてしまう可能性があるからだ。三雲自身が、いつもミーティングで言っていることなのに。


「もっと最短で移動しないと、いい場所とられない?」

「そうかもね」


 三雲は飄々とこたえる。


「だったら――」

「最悪を想定したんだ」

「最悪?」

「そうだ」


 周りを警戒しながら、移動を続ける。

 キルログ(キル発生時に誰が誰をキルしたか。部隊壊滅時にどの部隊が壊滅したかが表示されるもの)には『Obsidianオブシディアン』の部隊壊滅が流れていた。

 ここまでの結果を見るに、あのチームもまだ調子が振るわないらしい。


「最初に、俺達が降りたランドマークあるよね?」

「『JOYスタジオ』……」

「そう。じゃあ、その隣のランドマークに降りたチームがどこだか分かる?」

「知らない」


「やっぱりね」三雲は言う。


「『IMPERIALインペリアル PURPLEパープル』だよ」


「そういうことかあ!?」ラヴィが突然、声を荒げた。


「三雲! つまりおまえ、移動中に世界一のチームと鉢合わせたくなくて、わざと遠回りしてるんだな!」

「そういうこと。彼らも同じ場所を最終安地に予測していたら、最短ルートでの接敵は避けられないからね」

「ずいぶんと弱気じゃねえか! 当たれば負けの前提で、戦略を練るなんて!」


「同感」俺は強く賛同した。


「弱気か強気かは関係ないよ」三雲は反論する。「大事なのは可能性と合理的な選択だ」


「合理的ね。とてもつまらん……! 嫌いな言葉だ」

「でも従ってもらうよ。IGLは俺なんだから」

「分かってるさ」


 あるチームと接敵しないためにルートを変えれば、他の別チームと接敵する可能性を高めることになる。

 ビルとビルの間の狭い通路を抜けたとき、建物の出口から飛び出した敵チームが見えた。


「左に敵!」


 同じタイミングで、相手もこちらに気づき、突発的にファイトが起こった。


 敵チームのひとりに『ハンゾウ』というキャラクターを使用しているプレイヤーがいた。ハンゾウは忍者をモチーフにした人気のあるキャラクターだ。忍び装束を纏う見た目の格好よさと、性別すら不明というミステリアスな設定が人気の理由になっている。


「『SHINOBIFYシノビファイ』だ!」


 三雲が言う。

 ハンゾウをプロの試合で使うチームは珍しい。ハンゾウは自身の生き残りだけに特化したスキルを持つので、キャラクター同士の相性や連携を重要視するチームには軽視されるキャラクターだからだ。

 それでも、絶対といっていいほどハンゾウを常に採用するチームがいる。

 『SHINOBIFYシノビファイ』のCadoカドー。やつはハンゾウを誰よりも使いこなし、日本のトッププレイヤーにまで登り詰めたプレイヤーだ。


「くっそ! どんな動きしてんだ!? スパイダーマンかよ!」


 『SHINOBIFYシノビファイ』は全員が高度なキャラクターコントールを駆使することで有名なチームで、まさしく忍びのように戦場を飛び回る。さすがのラヴィでも、弾を当てるのに苦労しているようだ。


「たいしたことないでしょ。あんなの」


 あれくらい、俺でも出来る。キャラコンで勝負しようっていうなら、それは俺の土俵だ。

 俺達と撃ち合いながらも、相手は巧に位置を変え、縦長の建物の中へ入っていく。建物の中で迎え撃つつもりのようだ。

 俺もキャラコンを駆使しながら、最速で敵を追いかける。


「背後取れるよ!」

「いっちゃだめだ! カケル! おまえを誘ってるんだ!」


 三雲の掛け声で冷静になり、建物の入口の前で止まった。後ろを振り向くと、三雲とラヴィは思っていた以上に離れていた。

 なるほど。このまま建物に入れば、俺が単騎で突っ込むことになる。


「チャンスだったのに」

「黙っとけ!」ラヴィは言う。「俺はおまえみたいにキャラコン厨じゃねーわけよ!」

「外階段から攻めよう!」


 三雲の指示があり、三人揃って外階段を上がり、二階に入った。


「二階はいねーな!」

「上で足音……! 三階かも」

「一緒に階段上がるよ! 着いて来て……!」


 三雲を先頭にして、三階に上がったが、そこにも敵はいなかった。


「じれったいやつらだなあ!」

「四階か、それとも屋上……」

「また階段上がるよ?」


 四階へと上がる階段の先で、ふたりの敵が見えた。待っていましたと言わんばかりに、銃を構えて見下ろしている。


「見つけた……!」

「隠れんぼは終わりだなあ!」


 俺とラヴィは、目の前の敵を蹴散らすために前進する


「もうひとりは……?」


 三雲が言った。直後だった。背後から攻撃される。

 ハンゾウが持つ固有スキルは『忍び足』。足音を消し、気づかれることなく、敵の背後に忍び寄る。まさしく忍者のように。

 後ろにはハンゾウがいた。


 ハンゾウを操るその男はCadoカドー

『赤獅子』の異名を持つ、日本屈指のプレイヤーだ。


おまけ

チーム紹介『SHINOBIFYシノビファイ

日本の強豪チーム。チームカラーは黒と赤。チームロゴは手裏剣。

メンバーのCadoカドーはバスケ漫画「スラムダンク」の桜木花道に憧れがあるため、髪を赤く染めている。三人兄弟の長男であり、末っ子の弟は病気で入院している。

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