Chapter3-Section52 世界最強の男達
日本チームの入場が終わると、次は韓国チームの入場になった。司会者がチーム名を呼ぶ度に、続々と奥から選手達が現れる。
『RAVEN'S CROWN!』
韓国最後の入場チームの一員としてPicoが現れた。クマのぬいぐるみを、まだ抱えている。
歓声がまた一段と大きくなった。どうやらここも人気のチームのようだ。
「『RAVEN'S CROWN』。ここは韓国のトップチームだよ」
となりで夏海は言う。
「前回の世界大会、日韓地域から出場したチームで決勝に残ったのはここだけ。そして結果は世界5位。その実力を世界に知らしめたんだ」
強いなんて、あたりまえだよ。
クマのぬいぐるみを大事そうに抱えたまま、そう言っていた彼女の言葉を思い出す。世界5位という実績が乗っかると、その言葉には確かな重みがある。
「元々チート級の連携力で韓国最強と謳われていた双子の選手二人に、Picoという超新星が加わることで、世界でも指折りのチームになったんだ」
メンバーの他の二人は双子なのか。たしかに髪型は違うが、顔立ちはよく似ていた。
韓国チームの入場も終わり、次はその他のアジアチームの面々が壇上に姿を現した。
夏海の解説を聞くに、どのチームも世界大会で名を残すような実力あるチームだった。
その中で、ひと際わたしの注目をさらったのは『Well Well Well』と紹介されたチーム。白髪の青年がチームメンバーにおんぶされながら現れたからだ。青年は目にはアイマスクを、耳にはイヤーマフを付け、外界の情報を完全に遮断していた。注がれる拍手と声援にピクリとも反応していない様子は、寝てるのでは? と思ってしまうくらいだった。
「あの人寝てない?」
「彼はNoalaだよ」
夏海は即座にこたえる。
「あれでもチームのIGLなんだ。脳の無駄な疲労を防ぐために、試合が始まるギリギリまで、ああやって寝ているんだって」
「本当に寝てるんだ!?」
「あの感じに騙されない方がいいよ。『Well Well Well』はオーストラリアのトップチーム。前回世界大会で7位だからね。超が付くほどの名門チームなんだ」
『スペシャルゲストに入場してもらいましょう!』司会者の男は興奮した声色で言った。
『まずはヨーロッパからやってきたこのチーム…! 我々はいつだって、その美貌に見惚れ、その強さに畏怖してきた! 美しく、猛きフランスの英雄たち……! Laurier!』
これまでで一番の歓声があがる。
壇上に現れたのは、朝に駅前で会った女性。まるでモデルのような、思わず息を呑む絶世の美女。そのすぐうしろに続く男のルックスも中々のものだった。こちらもモデルをやっていると言われても疑わないだろう。そして3人目の男も別の意味で目を引いた。
肩まで伸びるドレッドヘアに、黒い肌を際立たせるホワイトカラーのリングのピアス。左肩から肘にかけて掘られた月桂樹柄のタトゥー。おそらくハイブランドのサンダル。ひょろりと背が高いのに猫背で歩く姿。男のどこを見ても特徴的で、大物ラッパーのような風格がある。
「相変わらずの人気ですなあ……!」
夏海は満足げに首を縦に振った。
「このチームは、インパーフェクトで一番ファンが多いチームだと言われているんだ」
三者三葉に、人の視線を釘付けにさせる容姿を持っている。さらには世界大会で6位という、実力も折り紙つきだ。ファンが多いのは納得でしかない。
歓声が止むのに、時間がかかった。
ようやく歓声が静まると、司会者はゆっくりと語り出した。
『最後の入場チームです。彼らはひとつの時代を築き上げ、世界に証明した……! 俺達が最強であると! 世界大会を三度制したのは、歴史上にただ一チーム! この男達だけ! 最強国アメリカが生んだ皇帝! IMPERIAL PURPLE!』
今日一番だった歓声を、さらに塗り替える歓声が会場を揺らした。
夏海までもが、隣で悲鳴をあげている。
現れたのは、深く濃い、紫色のユニフォームを身に纏った三人の男達。
自信、誇り、情熱。彼らからはその全てをありありと感じとれた、
自信はその肩に、誇りはそのユニフォームに、情熱はその目に宿っている。三人ともに王者の風格があった。
悲鳴をひとしきりあげて、ぜいぜいと疲れている夏海に訊いた。
「もしかして……、彼らが前回の世界大会の優勝チーム?」
「なのだ!!」夏海はぶんぶんと首を縦に振る。
「彼らは前回の世界大会の優勝チームであり、三度の世界王者になったチームだよ! 当たり前だけど、そんなチームは他にいない。誰もが認めているよ……! 彼らこそが世界最強だと!」
こうして全チームの入場が終わった。彼らはそれぞれに用意された席に座り、モニターの前で試合の開始を粛々と待っている。
「お祭りなのに、まるで世界大会のような顔ぶれだねえ……!」
夏海は感嘆の息を漏らした。
「世界大会に出場歴のあるチームがほとんど。そんな中で『CONTRAIL』がどんな結果を出すのか……」
前の席に座った男性がバックについた水滴をタオルで拭いていた。どうやら外では、雨が降り始めたらしい。
「見ものですなあ」
空調のせいか、会場内は少し寒い。
ようやく試合が、始まる。
『IMPERIAL PURPLE』紹介
過去に7回行われた世界大会では全て北アメリカ地域から優勝チームが出ている。
そんな最強地域の中で最強と言われているチーム。それが『IMPERIAL PURPLE』。
世界大会で三度の優勝はもちろん最多であり、二度優勝したチームも他にない。




