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Chapter2-Section43 だから

 4試合目が終わっていた。試合結果は見逃してしまったが、全試合の総合順位は画面に映し出された。


 私と三雲進はモニターの画面を覗いた。

 総合順位は9位に落ちていた。プロリーグの昇格は上位8位のまでのため、ボーダーラインから退いたことになる。これから、一人欠けた状況で順位をキープするどころか、ひとつ、ふたつ上げなければいけないのはかなり困難だということは私にだってわかる。

 ひとチーム11人のサッカーでさえ、一人欠けることが重いペナルティになるのだから、ひとチーム3人のこのゲームで一人欠けるなんて、その比ではないだろう。


 それでも伝えないといけない。そう決めたのだから。

 三雲進はミュートを解除すると、いつものおちゃらけた調子で喋り出した。


「ここで大事なお知らせがあります」


 出し抜けに言う。


「お?」

「ミクモかあ!?」


 ラヴフィンの声はいつも以上に大きくスピーカーから響いた。


「なにがあったんだよ! 大丈夫なのか?」

「このとおり大丈夫……。と言いたいところなんだけどさ。実は体調めっちゃ悪いみたいで。さっきも一瞬意識飛んじゃったし……。だから……」


 そこで、彼の言葉が詰まった。彼自身もそのことに戸惑っているようだった。まるで理性で抑えられない自分を初めて見つけてしまったときのような、そんな驚き方だった。


「だから……」


 唇が震えていた。拳が強く握られていた。短く息を吐き出す度に、肩が上下していた。

 そんな姿は見ていられないと思った。


「もしよかったら、私から言いましょうか?」


 彼は片手を上げてNoを伝えた。


「だから、あとは任せた」


 その表情は悲しくもあるようで、悔しくもあるようで、晴れ晴れしくもあるようで、どれでもなかった。


「俺達にはちょうどいいハンデだなあ!」


 ラヴフィンは言う。


「先に言ってよ。そういうの」


 的井翔琉は相変わらずだ。


「しつこくミスを責めた俺が悪いやつみたいじゃん」


 意外だった。彼がそういうことを気にするなんて。三雲進もそう思ったのだろう。「カケル……」と言葉を詰まらせていた。


「ミーティングと練習のおかげで大まかな動きは頭の中に入ってる! IGLがいなくたって、まあなんとかなるだろ!」


 こういうとき、ラヴフィンの朗らかな声で発せられる『なんとかなる』はとても頼もしく聞こえる。


「あのさ……」


 的井翔琉の静かな声が空気に緩急をつけるようにすっと入りこんだ。


「俺がIGLやっていい?」


「いいぜ!」即答するラヴフィンを尻目に、三雲進は困惑した顔を見せた。


「できるの?」

「できそう。だと思った。やってみないと分かんないけど。ミクモの見よう見まねだし、まだミクモほどじゃないと思うけど」


 三雲進はちらりとディスプレイの時計を見る。もう少しで試合が始まる。悩んでいる時間はなかった。


「分かった。それでやってみよう」


 それじゃ、頼んだよ。そう言い残して、三雲進はマイクを切った。


「あとは託すのみ……か」


 モニターに向かってつぶやいてから、振り返った。


「これで良かったんだよね……?」

「少なくとも間違えではない。そう思います」

「そっか……」


 こういうとき、なにか気の利いた言葉を言えればいいのだけれど、どんな言葉が適切なのか、私は知らない。


「ところで玲ちゃん」


 そもそも、この男はそんな言葉を求めているのだろうか。


「もうなにもしなくていいと思ったら急激な倦怠感が……!」


 彼は体中から異常な量の発汗をみせた。


「さっさと横になってください!」

おまけ

レイ「近くにコンビニありますか? なにか飲み物買ってきますよ」

三雲「玲ちゃんやさしい!」

レイ「さすがに病人をほっといて帰れないので」

三雲「ずっとここにいてもいいんだぞ?」

レイ「…………」

三雲「ごめんなさい」

レイ「コンビニの場所は?」

三雲「すごそこの交差点にあります」

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