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Chapter2-Section35 最高のエンターテインメントを

「2試合連続で初動落ちかあ……。最悪のスタートになったねえ」


 『CONTRAILコントレイル』は1試合目20位0キル。2試合目18位5キル。とポイントをほとんど稼げていなかった。


「それにしても、陰湿な戦い方してくるねえ」

「『ご主人様』のこと?」

「そ」


 夏海は持っていた缶を左右に振った。もう二本目も飲みきったらしい。気づけば頬は少し赤らんでいた。


「初動ファイトは最初に強い武器を拾えるかどうかが肝心だって、さっき言ったと思うんだけど。『ご主人様』は強い武器を拾ったか弱い武器を拾ったかで戦い方を変えてるみたいだね」

「確かに……! 2試合目の戦い方は少し変だった。ずっと逃げ腰だったというか。そもそも勝つ気が無かったみたいな……」

「お! いいとこ見てるねえ。玲」


 夏海は私に指を向けると、空中でツンツンと指さした。

 酔いが回ってきたのか、ようやくいつもの調子を取り戻してくれたらしい。


「強い武器を引けた時の戦い方はシンプルだったよね。強気に勝負をしかけて倒す。それだけだった。でも弱い武器を引いたときはがらりと戦い方を変えてきた。勝つ気が無かったと玲は表現したけど、本当にそのとおりだよ。彼らの目的は勝つことではなく、ただ戦闘を長引かせようとしていたんだ」

「なんのためにそんなことを……」

「忘れちゃった? 戦闘中、もしくは戦闘直後のチームを狙うのはこのゲームの常套手段。近くで戦闘している敵達がいれば、その漁夫の利を狙いたくなっちゃうのはどのチームでも一緒なんだ」

「つまり戦闘を長引かせていたのは近くの別チームを呼んでいたってこと? でもそんなことしたら自分達まで……」


 あ。そうか。勝つ気がないということは負けを受け入れているともいえる。


「気づいたみたいだねえ。ただ負けるくらいだったら、おまえ達も道連れにしてやるよ。そういう潔くも狡猾な戦い方をされたのだ」

「こんな試合を続けられたらどっちも……」

「うん。今日の敗退は濃厚だよ。この泥沼の初動ファイトをどうにかして抜けない限りね」


 『ご主人様』このチームの厄介さをようやく理解した。自分達が勝つことよりも、気に食わない相手を陥れることを優先させる。三雲進が警戒チームに上げていたのは、そういう理由もあったのだろう。

 ラヴフィンがXで非難しなければ、狙われることなんてなかったのに。


「ラヴフィンてさ、昔からなんでもエンタメにしちゃう人なんだ。アンチコメントとの舌戦配信を突然始めたり、過去に炎上した配信者を集めてカスタムを開いてみたり、利き腕を骨折した時には逆手でゲームチャレンジをやったりしてたよ。だからこそ彼はあそこまで人気の配信者になったんだけど……」


 あの陽気な風貌と恐いもの知らずの瞳を知っているからこそ、喜々としてそれらをやってのけることは容易に想像がついた。

 『ご主人様』に喧嘩を売ったことも、エンタメのためだとあの男は言うのだろうか。この場は公式大会だ。ラヴフィンのいつもの配信じゃない。


「今回ばかりは、そのエンタメ至上主義が裏目に出たみたいだね」と夏海はつぶやく。


 彼は競技者といよりも、やはりストリーマーなのだろうか。


 ***


  予想通り、コメント欄は大荒れ模様だった。この瞬間こそ、配信者冥利に尽きると思うのは俺だけだろうか。このお祭り騒ぎのような盛り上がりが俺は好きだ。

 日本全国の熱が俺に集まってきている気がする。だからその熱をパワーに、俺はもっと最高の配信をする。もしかしてこれってリアル元気玉じゃね? と何度も思う。


「なるほどねー。あれ以上時間かけると別チ来るんだね」

「ああいうときは歩幅合わせ過ぎずにスピード優先でよくない?」

「そうだね。固まって動くのは弱い武器ひいたときだけにしようか」


 ミクモとカケルの二人はよく落ち着いていた。燃えに燃えている俺のコメント欄とは大違いだ。


「漁る場所は? さっきと同じでいいよな?」

「狙われるとしたらラヴィのところだから、俺がもっとラヴィの方によって漁ってもいいけど」

「ありだね。そうしよう。それとカケルは漁りのときに加速スキル使ってるみたいだけど、戦闘の時ように残したほうがよさそうだね」

「確かに。残してればもっと早く倒せてたかも」

「よっしゃ! 次は絶対勝とうぜ!」

「あとラヴィは感情的になったときに叫んでばっかりで報告の量が少なくなるから気をつけてね」


「うい」と俺は返事をする。なんとも建設的な話し合いだ。これが出来ているのだから慌てる必要もない。それが分かっていない視聴者が多いようだ。


 だが、それでいい! そうでないと!


 esportsとは熱くなればなるほど面白い。エンタメとは揺れ動く感情のことだ。

 チームに迷惑をかけている? そんなコメントは全くのお門違いだ。俺はストリーマーとして最高のエンタメを提供し、競技者として勝利をもぎとる。それが出来るのが、ラヴフィンという偉大な男だ!

 もっとたぎれよ。視聴者ども。昂れ! 怒れ! 熱くなれ! 俺を燃え上がらせろ!


 そうしたら、最高のエンターテインメントを届けてやるから!

おまけ

三雲「あとラヴィそっち側に敵降りてきたら教えて」

ラヴ「うい」

三雲「あとラヴィ次も敵たおして」

ラヴ「うい」

三雲「敵全員たおして」

ラヴ「うい」

翔琉「あとラヴィ声量おさえて」

ラヴ「却下」

翔琉「だめか」

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