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Chapter1-Section27 俺はやったよ

 展望塔には部隊が陣取れるポジションがふたつある。ひとつは俺達が守っていた展望エリア。ドーナツ状の広い足場に、弾避けとして扱うには心もとないベンチがふたつ。遮蔽物は極端に少ないが、そもそも周りにこれより高い建物が無いため縁に立たない限り他チームからの射線がほぼ通らない。まさに最強のポジションだ。

 もうひとつは展望エリアの真下の地上階。そこは正方形の大部屋の4辺にそれぞれスライド式の大扉が設置されている。入口が多く、窓から射線を通されるため守りが難しく、決して強いと言えるポジションではないだろう。


 地上階にいるチームは真上の展望エリアにいるチームが攻めてくることをあまり想定しない。周りの敵が入ってこないよう警戒するのに忙しいというのもあるが、一番の理由は展望エリアという強いポジションを取っているチームがそれをすることにメリットが無いから。


 物資が枯渇するなんて状況はプロレベルの試合では日常茶飯事なものだが、普通のプレイヤーにとってはイレギュラーに思えるだろう。


 展望エリアと地上階を繋ぐ円錐状の小部屋を飛び降りても、そこを見張っている敵はいなかった。


 やっぱり。誰も警戒していない……! 相手が競技経験者であれば、こうはならないだろう。


 無防備に外ばかり警戒している敵を見つけた。初撃が肝心だ。ここで絶対に一人を落としきる!


「せーの!」


 カケル君とタイミングを合わせて同じ敵を狙い、撃った。


 銃撃一閃。一人をダウンさせる。


「カケル君! 頼んだぞ!」

「任せて……!」


 俺はジップライン(掴むだけで垂直移動が可能なワイヤー)を掴み、展望エリアへ昇っていく。


 さあ、エサは撒いたよ。


「ねえ……! 僕は本当にここにじっといればいいの……⁉」

「うん。ユズ君は絶対に上で隠れてて! 三人とも地上階で戦っていると思わせるんだ!」

「誰に……⁉」

「そんなの決まってるさ……」


 リョータ。あんた言ったよな。


 『俺と同じレベルになれるまでこんな地味なことを頑張れる人間なんて絶対にいないから』


 俺はやったよ……!


 この試合、展望エリアを陣取ることが最もチャンピオンの可能性が高いことに、俺とあんただけが気付いている。


 展望エリアにいるチームが地上階の敵を倒しにいく行為は本来リスクでしかないが、物資が枯渇したからというストーリーに、あんたならば辿り着けるだろ? そしてこの絶好のチャンスを逃すようなあんたじゃないよな?


「来た来た……!」


 ニタリと笑うその顔が浮かんでくるようにユズ君は言った。


 金の腕輪が弧を描いて飛んでくるのが見えた。コツン、とベンチの手前にそれは落ちると、その場で白く発行する。その直後、光に包まれた中から三人が姿を現す。


 ラヴフィンのチームに間違いない。キャラクターの固有戦術を使い、ここまで上がって来た!


「ここを奪いに来ると思ってたぜ!」


 憧れをやめ、あんたを超えることにするよ。


「撃て!」


 ユズ君と二人で一斉に攻撃を仕掛けた。カケル君にはたった独りで地上階の敵を抑えて貰っている。二人だけで彼らを倒すしかない。でも問題ない。2対3の人数不利でもこれほど完璧な不意打ちが決まったなら、こっちが有利だ。


『おまえはどうだ』


 あれ?


『本当に俺達に相応しいのか?』


 どうしてだよ……。


『俺が最強だと分かっているからだ!』


 画面越しなのに。こんなにも存在感が大きく……!


「は……?」


 甘えなど無かった。気付けば俺はラヴフィンに倒されていた。瞬きをした間くらいと言えば大袈裟だが、本当にそう言いたくなるくらいの一瞬だった。


「くそっ……!」


 そしてユズ君もラヴフィンに倒された。


 このファイトで勝った側がこの試合のチャンピオンとなるだろう。そんな重要な一戦で、最後に立っていたのは独り。


「この……化け物が……! ラヴフィン!」


 ラヴフィンだけだった。俺達はあと少し、及ばなかった。


「まだだよ」


 声とともにカケル君が姿を現した。

 地上階で敵を抑えていたはずじゃ……。


「今度は俺の勝ちだね。ラヴフィン」


 カケル君は中央のオブジェクトから壁ジャンとスライディングを駆使しラヴフィンに急接近するとショットガンを放った。戦闘後でダメージを負っていたラヴフィンを一発で倒す。


「これで勝ちはずるか。やっぱノーカンで」


 起こすよ。とカケル君は俺とユズ君の蘇生を始めた。


「カケル君……! 真下の敵は来ない⁉」

「うん来ない」

「どうして分かる⁉ 今攻め上がって来られたらどうしようも――」

「全員倒したから」

「は?」

「だから真下の敵は俺が全滅させたから来ないよ」


 一人目は協力して倒したとはいえ、残りの二人をやりきったのか? カケル君独りで? 相手は競技者でこそ無いとはいえ、ラヴフィンのカスタムに呼ばれるレベルの立派な猛者だ。


 こいつもまた、化け物ということか……。


「ラヴフィンのチームを倒して、物資も回収できた。これで俺達の勝ちだよね?」

「ああ。チャンピオンをとってしまいだ」


 宣言どおり、最後の試合は俺達がチャンピオンを飾った。


おまけ

rabphin(ラヴフィン)のハンドルネームはラヴフィンの好きな動物、rabbitウサギdolphinイルカから取っている。もう一つの候補としてwhaleクジラlionライオンを組み合わせてwhalionウェリオンというのもあったがなんとなく響きが気に入らなくてやめたそうだ。

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