Chapter1-Section26 ありかも
安地の収縮が開始されマップを見ると、第一フェーズの安地のど真ん中に俺らはいた。これだけ安地の中心にいれば、強いポジションを取り放題だ。
この最終試合に来て一番運が向いている。
「ミクモ、どこを目指すの?」カケル君に問われた。
数ある強いポジションの中からどこをとりに行くか、IGLの腕の見せ所だろう。俺はいつか見たリョータの配信を思い出していた。
『どうしていつも最終フェーズまで生き残れるんですか? そんなん俺の試合観てて分からん? 最終の安地まで残るポジションを最初から取ってんだよね。簡単でしょ? …………まあまあ落ち着けって。分かってるから。それをどうやってんだ、て話だよね? 確かに一見無理そうだよね。だってこのゲームの安地収縮ってさ、第一フェーズが始まったらそのフェーズまでの安地の場所が分かります。で第一フェーズのリング収縮が完全に終わったら、第二フェーズが始まって次の安地の場所が分かります。でさらにリング収縮が始まって第二フェーズの収縮が終わったら第三フェーズの安地の安地場所が分かります。そうやってマトリョーシカみたいな感じで徐々に安地が小さくなっていって第五フェーズになってようやく最終フェーズの安地場所が分かる、ていうふうになってるよね。つまりさ、最終フェーズの安地が確定するのは第五フェーズが始まる時になるってわけ。絶対無理っぽいよね? 最初から最終の安地内のポジションをとるなんて。でも俺は高確率でそれが出来るの。なぜかというと……めっちゃくちゃ運がいいから! ……ごねん嘘。運なんかじゃない。狙ってやってる。どうやってやってると思う? みんな知りたいでしょ? しょうがないなー。今日は機嫌がいいから特別に教えちゃうよ。その秘訣とは……なんと……! ものすごく研究しました。はい。それだけです。たくさん研究をしました。そして研究をした結果分かりました。安地の寄り方には傾向があります。みんなさ、安地の決まり方って完全にランダムだと思ってるでしょ? 実はそうじゃないんだよね。4、50回に一回、全フェーズでほぼ同じ安地が来てること知ってる? 第一フェーズの安地場所によって、最終的な安地は特定の場所に偏り易いとかあるの知ってる? 俺は全部知ってるんだよね。だから最終フェーズの安地場所を高精度で予測できるってこと。俺の頭の中には膨大な情報があり、それを分析している。それが俺の強さの秘訣だよ。やばいかなー。言い過ぎたかなー。でも大丈夫だよね。俺と同じレベルになれるまでこんな地味なことを頑張れる人間なんて絶対にいないから』
きっとあの時のリョータの配信を観ていなかったら、今の俺は無かったんだと思う。
最終フェーズの安地場所を予測すると、何個かあった強いポジションの選択肢は一つに絞られた。
「ここの展望塔上をとろう!」
マップ上にピンを刺して、次の移動位置を二人に知らせた。
「でもそこはもし安地はずれたらきついよ? 次のフェーズまでここに居座っても僕はいいと思うけど?」
「いや駄目だ」
ユズ君の提案を俺は突っぱねた。
「ならここは? ここの方が強いと思うけど」
カケル君がマップにピンを刺した場所は廃墟群の上に架けられたアーチ状の橋の上だった。確かに強いポジションで、次の安地がどこになっても移動しやすい。パッと見では最適解のように思える。しかし、高確率で最終フェーズまで安地内に残るポジションの方が魅力的に決まっている。
「駄目だ。絶対に展望塔に行く」
「信じていいの?」
「信じろ……!」
「分かった」
移動をすると、展望塔上のポジションを難なくとることが出来た。最終安地の場所が俺の想定どおりならば、最高の出だしだ。このポジションをキープしていれば高順位は固い。しかも高い位置だから視野も広くキルもかなり狙いやすい。
警戒するべきはラヴフィンのチームのみ。あのリョータがIGLならば、ラヴフィンの火力を頼りに、このポジションを奪いに来たっておかしくない。いや、俺達がこのポジションにいると分かれば絶対にとりにくるに決まっている。
第一フェーズの安地収縮が終わり、第二フェーズの安地場所がマップに表示された。
「わあ……! 本当にこっちに寄ったよ……!」
「ミクモやるね」
「まあね」
試合は俺の想い描いたとおりに進んでいった。第三、第四フェーズになっても展望のポジションは安置内に入っており、安置内のポジションに入ろうと展望周りを移動するプレイヤーを6人もキルした。
懸念すべきは二つ。一つはキルログ(キル発生時に誰が誰をキルしたか。部隊壊滅時にどの部隊が壊滅したかが表示されるもの)を見るにラヴフィンのチームはまだ生存していること。そしてもう一つは……。
「アサルトアモ余ってない? 弾がもう無くなりそう」
「僕は回復が欲しい。Lシールドが今ゼロ」
「ダメージくらいすぎでしょ」
「うるさいなー。最初から少なかったんだよ。君は弾管理くらいちゃんとしなよね」
物質の枯渇だ。現状の弾数と回復アイテムだけで最後まで戦えるか怪しかった。通常、物資はフィールドに落ちているものを拾うか、倒した敵から奪うか出来るが、早い段階からずっと同じ場所をキープしているためフィールド上の物資は多く拾えていない。それに遠くの敵を倒してばかりだから、倒した敵から物資を漁ることも出来ない。
「どっちも分けられるほど持ってないな。どうにかして物資を回収できれば……」
かといって、この展望塔から移動して物資を取りにいくのは一番無しだ。みすみす最強のポジションを手放すわけにはいかない。
「真下にいる敵潰しにいこう!」
「また君は馬鹿なことを言う……! もし別チームにも介入されたら全滅ものだよ。せっかく強いポジションをキープ出来てる僕らが犯すにはリスクが大きすぎる! たとえ物資を回収するためでもね」
「いや、ありかも……!」
「ミクモン!? どうした!? 気が触れた!?」
今の生存部隊数は9部隊。ラヴフィンのチームはまだ全滅していない。やつらのポイントを超えるには……。
「二人とも聞いて。作戦がある」
おまけ
★マップ紹介
・コッツウォルズ跡地
元はイギリス郊外にあった街をバトルロイヤル用に改良している。廃れた街並みを飲み込んだ大自然と近未来の建造物が共存したアンバランスな風景が魅力なマップ。公式大会に採用されている二つのマップのうちの一つ。




