Chapter1-Section24 思っちゃった
「カケル君! それ以上前に出るなよ? カバー出来なくなる!」
「分かった」
「ユズ君はもっとカケル君のそばによって! 南側から来る敵を一緒に弾いて欲しい!」
「了解」
三試合目は順調だった。敵を倒しながら道を切り開き、守りの固い家を占領することが出来た。しかも、この場所ならば最終局面まで絡むことが出来るだろう。
あとは無茶をせず、どれだけキルを拾えるか。
「南側、全員やった!」
「次はどこ撃てばいい?」
全くこの二人は……! フィジカル最強かよ! 敵を近寄らせなければ十分だったのに。まさかあの距離の敵を全員倒しきるなんて……!
「左にいる水車裏の敵を弾こう! たぶん俺達の家の真横に張り付こうとするよ!」
「俺の爆撃使っていい?」
「まだだ!」
「どうして⁉ あいつらも絶対倒せるのに!」
「使わなくても倒せる! チャンピオン取るなら……絶対残しだ!」
「……分かった」
残り5部隊。試合が最終フェーズに入ると、リングと呼ばれる円柱状のエリアは少しずつ収縮を始めた。エリアの外に出ると大きなダメージを受けるので、プレイヤー達は収縮していくエリアの中で戦うことを強制される。これはバトルロイヤルという形式において試合を円滑に運ぶための重要なシステムだ。
最終フェーズの収縮が始まってしまえば、リングは最終的にエリアが無くなるまで収縮していく。そうなる前に敵を全てなぎ倒し、最後に立っていたチームが勝者だ。
徹頭徹尾、単純明快。それがバトルロイヤル。
なのに、このゲームは奥が深い!
「水車裏のやつらグレネードで全部やった!」
「ナイス!」
これで残り4部隊。部隊の位置は全部把握できている。エリアの北側に2チーム。南側に俺達含めて2チーム。
この中で最初に攻勢に出るのは北側の塹壕に潜む部隊だろう。なぜなら収縮するリングの一番縁にいるチームだからだ。リングに飲み込まれる前に、よりエリアの中の敵を倒してポジションを確保する必要がある。そうなれば必然的に、目の前にいる岩裏の部隊に当たるだろう。
エリアの北側でファイトが起こった後に、次にぶつかるのは南側の2チーム。収縮するリングに飲み込まれる前に家から出ないといけない俺達と、傍の塀裏に身を縮め、俺達を待ち構えている敵チーム。
今、俺達が取るべき最善手は……。
「カケル君! 真横の塀にいる敵に爆撃使って」
「今?」
窪みの部隊が岩裏の敵に攻撃を仕掛けたのが見えた。
「今だ! 今! 直ぐにそいつらを倒さないとだめだ!」
カケル君の使用するキャラクターが固有戦術として扱える爆撃は広範囲に空爆を降らせる超攻撃的な戦術。被弾した敵は大きなダメージを受ける。
「めっちゃくらってる!」
「一気に詰めるぞ!」
爆撃を合図に塀の裏の敵に3人で攻め上がった。爆撃のダメージもあり、ほとんど体力を削られずに敵を倒しきった。
「すぐ反転しろ! 岩裏のファイトも俺達がとる!」
すぐさま三人で大岩まで駆けた。まだ戦闘の最中のようで、2部隊とも互いにボロボロだった。一人と二人が残っていた。その残っていた全員を倒す。
俺達はCHAMPIONとなった。
***
「チャンピオン……! 16キル……! 二試合目までとはまるで別チームだよ! いったい何があったの……⁉」
夏海は拳を固く握り、鼻息を荒くした。
「何よりミクモンのIGLが凄い! チャンピオンまでの道筋が完璧に見えていた!」
「そうだったんだ?」
私は最後の餃子を一口かじった。もうすっかり冷めていた。
「決め手だったのは最後の4部隊になった時、傍の塀裏にいた敵を積極的に倒しにいったところだね。北側の2チームが大岩の裏でファイトを始めたあのタイミングを狙ってね。もしファイトを仕掛けるタイミングが少しでも遅かったら、もしファイトを仕掛けてすらいなかったら、大きく不利になっていた……!」
「どうして?」
「南側の2チームが残った状態で、北側のファイトが先に終わってしまうからだよ!」
「それは駄目なの?」
「ダメだよ! ものすっごいダメだよ! だってエリアの収縮が続けば、次にぶつかるのは南側にいた2チーム。ミクモンチームと塀裏にいたチームなんだから! 北側のファイトがとっくに終わって、残り3部隊の状況でそんなことが起こったらどうなると思う? 北側のファイトで勝ち残ったチームに体勢を整える時間を与えちゃうんだ。そして南側のファイトになんとか勝ちきったとしても、その後にやってくるのは万全な状態となった北側のチームだ。敗北は濃厚……!」
「でもなのだ!」と二本目の缶チューハイを逆立ててグビグビと飲み切るとテーブルに叩きつけた。
「逆にあのタイミングで自ら攻撃を仕掛け、不意をついた電光石火で塀裏の敵を見事に仕留めたことによって立場を逆転させた。北側でファイトをしている敵達を狩る側にね!」
夏海の言葉は早口で、全部を理解できたかというと正直そうでも無い。でも少なくとも、三雲進の判断がチームをチャンピオンに導いたのだと分かった。
「ラヴフィンのチームは3位だったみたい。どうやら岩裏でファイトをしていたチームがそうだったみたいね」
「これで少しは差が縮まったかな?」
「そうだね。でもまだまだ、もう一回チャンピオンは必須だと思うよ」
「そっか……」
モニターに目を移すと、気付けば四試合目は始まっていた。
「このチーム。本当に突然見違えたよ。何よりフラッガーを担う一番手と二番手の二人がしっかり連携を取れるようになってる」
夏海は感心したようにモニターを見つめながら、当たり前のように三本目の缶チューハイを開けた。
「さっきから気になってたんだけど、フラッガーとかアンカーとかってなに?」
「そうだねえ。雑に言うとフラッガーは攻撃役でアンカーは防御役かな。たとえばフラッガーの人は前線に出てキルをばんばん狙ったりするよ。対してアンカーの人は広い視野を確保して周りの敵を警戒したりするかなあ」
「へえ。サッカーやバスケでいうポジション的なものがあるんだね。私がゲームをやった時は少しも意識してなかったな」
「まあ普通にゲームを楽しむだけなら必要ないもんね。ここまでやるのはプロとかプロを目指すような人達だけだよ。やっぱり、勝ちに拘り始めたらチームの連携力を強固にする必要があるし、連携力を強固にするためには役割を決めることが最適解ということなんだと思うよ」
「なるほど」
ゲームのことを語る夏海はいつも目が生き生きとしている。昔から変わらない。きっと、これからもずっとそうなのだろう。
「ねえ。玲。私思っちゃったよ」
そんな彼女だから、ゲームのことに関して言った言葉には、そうなのだろうと思わせる力がある。
「このメンバーで大会に出ても、プロリーグまで駆け上がれちゃうんじゃない?」
四試合目が終わった。彼らは2試合連続となるチャンピオンを勝ち取った。
おまけ
★『Imperfect braves』用語解説
・ポジション・・・エリアの中でそのチームが陣取っている場所。
・弾く(はじく)・・・自分達のポジションを守るために敵を近づかせないこと。けん制的な意味合いが強い。
・ファイト・・・戦うこと。チーム同士の衝突。
・グレネード・・・手榴弾のこと。
他にも専門用語が飛び交っているかと思いますが、本文中で解説されていない用語はいまいまは重要ではないので深く考えず雰囲気で読んでくれるとありがたいです。




