006
「彼女を連れてきてくれて、ありがとうございました。いつもその辺を散歩して、すぐ帰って来るのに帰ってこなくて心配してたんです。周辺を探したけど見つからなくて。今日探すつもりだったんです。」
「俺と蓮くんが、たまたま彼女がいた公園のそばにいたから。でも、なぜあそこにいたんですかね」
「あそこは、彼女の思い出の場所なんです。何かあるといつもあそこに行くんです。」
「彼女は、なぜここに?」
立ち入ったことを聴いてることは分かっていたけど、どうしても知りたかった。
彼女は、彼らの真剣な眼を見て、信頼してくれたのか話してくれた。
人づてに聞いたと前置きがあった。
「彼女は、幼い頃親に虐待されてここに来たんです。」
「えっ?」
「手をだされたとかそういうことではないんです。むしろ逆なんですよ。」
「逆ですか?」
「あることがきっかけで、親から愛情も何もかけてもらえなくなってしまったんです。その時から、彼女の時間は止まってるんです。」
「そんな」
俺達はそんな言葉しか出なかった。
「あの・・・立ち入ったことっていうのは分かってます。でも、もう少し詳しく教えてもらってもいいですか?」
「俺からもお願いします。公園にいたのに、何故家にいたっていったのかも分からないですし。」
しばらくの間、沈黙があった。
「分かりました。助けていただいたのも何かの縁です。」
そう言って、話してくれた。
しかし、衝撃的すぎて言葉にならなかった。
でも、知りたかったのは事実。
二人は、受け止めた。
「あの子には、二人いるんです。」
「二人??」
「分からないですよね。人格が2人いるんです。」
「襲われそうになった娘と家にいたって言った娘?ってことですか」
「はい。表現の仕方が難しいんですが。先ほど言った虐待を受けた娘が、はるです。もう一人が、ちいです。そして・・・」
「そして?」
「二人は、姉妹なんです。」
「えっ?」
「聞いた話によると、虐待が始まりそれに耐え切れなくなってしまったはるに、別の人格が出てしまった。それがちいです。」
「だから、そんなことがあったんだ」
「きっと、あなた方には信じられないことだと思います。それが普通の反応ですから(苦笑)」
少し間があき
「もし、信じられないということであれば、お話した私達の責任もありますが、もうこれ以上あの娘達には関わらないでいただきたい。」
「それは、出来ません。」
響は、速攻言葉を返した。
「えっ?」
「確かに、信じられないことだけど。このままじゃダメだと思う。俺が、俺達が良く出来るかどうかは分からないです。でも、愛情をもって接することは出来ます。」
蓮も続いた。
「彼女の家族になりますよ。喜んで。」
「そんなこと言ってくださった方は初めてです。ありがとうございます。」
「うちのリーダー呼んでもいいですか?さすがに、俺の一存では決めれないですから。」
「そうですね。」
そうして、郁をその施設に呼び出し再度話をした。
響と蓮が、提案したことはすぐさま実行された。
「郁さん。勝手に話進めちゃって、すみませんでした。」
「いや(笑)誰が聞いても、そうすると思うから気にするな。蓮もな」
「はい。ありがとうございます」
★★
話がすんだあと、はるが呼ばれ
「はるちゃん。今日からは、この人達が家族だよ。」
『かぞく?』
「これからはるとオレらは家族。いつも一緒だよ。」
『・・・』
「一緒に行こう?」
3人を変わるがわる見るはる。
そうして、はるは
『うんっ』
そう言ってくれたんだ。
そうして、俺達ははる達と一緒に帰ったんだ。
俺らは、事務所に戻った。
しばらくして、メンバーにはそれぞれ説明された。
しかし、不思議なことが起こったんだ。
ERSTEメンバーには、はる自身は問題なく接することが出来た。
でも、ちいが駄目だった。
原因は何か分からなかった。
だけど、異常な拒絶反応が出てしまって、会わせることは出来なかった。
そして、ZWEITEのメンバーは逆だった。
はるに拒絶反応が出てしまい、ちいは平気だった。
★★
はるもちいも、お互いのことはちゃんと分かっている。
それは、ちゃんと説明してあるんだそうだ。
しかし、はるはいまいち理解出来てないようだ。
あの時から、時間が止まっているからだろう。
ちいは、さすが姉。
自分の状況はちゃんと分かってた。
俺と蓮くんは、はるもちいも話が出来た。
きっと、これは一番最初に出会ったからかな?
それとも、神様がERSTEとZWEITEから一人ずつ選んでくれたってこと?
だとしたら、神様あなたは残酷な人です。